カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

言葉

「日本語の創造者たち」④〜和製漢語の話

私は何もいっさい外国語を使うなと言っているわけではありません。 戦時中おこなった、野球のセーフを「よし」、アウトを「ひけ」と言うような愚かさはもちろん避けなくてはなりませんし、母国語にこだわるあまり極端に英語を排斥したフランスは、ITの世界で…

「日本語の創造者たち」③〜和製漢語の話

「レガシー」「ダイバーシティ」「ワイズスペンディング」「ホイッスルブロワー」 最近、ニュースの中をやたらと飛び回っている言葉ですが、それは最初たった一人の女性の口から発せられたものでした。小池百合子東京都知事です。 めったにないことですが、…

「日本語の創造者たち」②〜標準語の制覇

私は、明治期における日本語の統一ということには無頓着でした。 もちろん日本語表記の方の問題性については承知していました。 木版印刷の時代には問題とならなかった異体字(例えばひらがなの「な」も、元となった漢字の「奈」から「な」に至る中間的な文…

「さ、どうだ?(茶道だ?)」~楽なはずなのに読み方の難しい漢字たち

土曜日の朝、NHKニュースを見ていたら中国で茶道を学ぶ学生たちの話題を扱っていました。その際、非常に耳障りだったのは「茶道」を指して言う「ちゃどう」という言い方です。ただし天下のNHKのことです。言葉の使い方、特に経年による日本語の変化について…

「深刻な場面での言葉が気になる」~震災に関わる個人的な違和感

その1「元気を与えたい」 東日本大震災のとき、ギターを抱えて避難所を訪れた若者が二人、路上ライブの態勢をつくってひと言。「今ぁ、ボクたちにできることは歌うことだけです」 その瞬間、ギターを奪い取る者がいて代わりにスコップが渡された・・・。 最…

「プロとの違い」~講演会の講師をしてうまくいかなかった話②

研修会の講師をやったのだけれど、結局うまく行かなかったというお話を書いています。 私もこれまで何十回となく様々な講演会を聞いてきましたが、眠くなる話のいくつかは明らかに情報過多が原因です。重要な話がいくつも出てくるのですが、多すぎて聴衆がつ…

「枝葉と花が多すぎて」~講演会の講師をしたがうまくいかなかった話①

ひょんなことから児童館で1時間半の研修会の講師をやる羽目になりました。話すことは嫌いではないのでいいのですが、1時間半という長時間は経験がなく、どの程度の分量の原稿を用意したらよいのかも想像つきません。 校長講話をやっていた頃は「15分でお…

「男の子に『実家』はあるのか」~若きママたちの義兄弟②

若いママさんたちがブログなどで使う用語――「義実家」「義両親」などに違和感がある、というお話をしました。「だったら義実家のことは普通はなんて言うの」という娘の問い合わせに対して、「夫の実家」と返事をしておいて、しばらく後にこれにも違和感を持…

「義実家・義兄弟という新語」~若きママたちの義兄弟①

若いママさんのブログばかりを集中的に読んでいくと、そこにはそこの独特な用語や表現のあることに気づきます。その世界でしか通用しないものですから、これはもう隠語とか符丁とか言ってもいいようなものなのかも知れません。 たとえば「完母(かんぼ)」。…

「目の前に広がる扇形の人生」~寄り添う①

若い頃は、自分ができるかどうかは別として、世の中、努力さえすればなんでも可能だと思っていました。ところが年齢を重ねるにしたがって、次第にそうではないことが分かってきました。 どんなに努力をしたところで私が100mを9秒9で走ることはないし、…

「英語を日本の準公用語にできるか」~日本の公用語について②

標準語と方言とのせめぎ合いの末、日本は国内のどこへ行っても現地の人と普通に話せる公用語を獲得しました。方言の味深さが失われるのはいかがなものかという議論はありますが、統一言語を持っているということは大いなる幸せです。言語表現はすべて一つの…

「二つ以上あった日本の公用語」~日本の公用語について①

先週の金曜日、カーラジオで参議院予算員会のやり取りを聞くともなく聞いていたら、中西健治(無所属クラブ)という議員がとんでもない質問をしていました。「これからのグローバル社会を考える上で、英語を準公用語にしたらよいと思うがどうか」と言うので…

「男性にもまれまれながら」~なぎなた読みと男性の乳がん

妻が「リセット・ポール」という健康用具を購入しました。直径20㎝、長さ1m20㎝ほどの円筒で、この上に横たわって背骨を伸ばしながら軽く運動をするというものです。なかなか気持ちのよいもので、気分よく運動しながらあちこちの筋肉を揉みほぐしていた…

「あれ?」~“おひけえなすって”、三つ指をつく、土俵入り、礼砲・・・あれ? 何の話だっけ?

今は時代劇も廃れてしまい、清水次郎長だの森石松だの言っても何のことかわからないひとが多いのかもしれませんが、私の子どものころは浪曲ブームの名残もあり、また現代ヤクザが主人公の映画「仁義なき戦いシリーズ」の影響もあって男の子は少なからず“その…

「オー・マイ・ゴッド!」~ひとを罵るのに「神」を持ち出す理由

何か失敗を犯したとき、不運に見舞われたとき、誰かに嫌な思いをさせられたとき、普通の人は何と言って呪ったり罵ったりするでしょう?「チェッ」「クソ」「クソったれ」「クソが」「クソめ」「クソ喰らえ」「コンチクショー」「畜生め「あの野郎」「この野…

「号泣!! オレの生きざまで感動を与えたい!」~私の好きになれない言葉

言葉は時代とともに変化していくものですし、不適切な語は自然に消えてしまいますからあまり苦にしなくてもいいようなものですが、どうにもこうにも我慢ならない語や語の用法がいくつかあります。 「感動を与えたい」 3・11以来繰り返し出てくる「感動を…

「メメント・モリ」〜死を忘るるな

二週間ほど前から91歳になる義母の具合が悪く、心配されました。横になったままものが口を通らなくなり、息も荒かったのです。それがここにきて、数日前からまた少しずつ食べられるようになってきています。うまくいけばもう一度、家に戻れます。老人とい…

「巨人引力」~子どもに引力を教えるコツ(くだらない話が記憶に残る)

使わない知識は消失する、それが鉄則です。中高6年間も勉強しながら結局私たちが英語をしゃべれないのは“必要ない”からです。それは数学の微分・積分を忘れてしまったのと同じです。 同様に江戸幕府が1860年(万延元年)に発令した貿易統制法令「五品江…

「ガセネタ列伝」~私がまんまと騙された話

人から聞いて「ああそうだったのか!」と膝を打ち、感動のあまり他にも吹聴して回ったらそれは全くのガセだった、というような経験がいくつかあります。今日はそれについて。 【アジサイの花の色はリトマス紙のように土壌の酸性・アルカリ性によって決まる】…

「台風一家」~子どもの頃の我が家の話

台風4号が通り過ぎて行きました。日本ではあまり使用しませんが、4号には「グチョル」という名前がついていて、日本以外ではけっこう使われているみたいです。「グチョル」はミクロネシアの言葉で「うこん」のことです(注意! 読み方、間違えないように)…

「『古いお札入れ』には何を入れたらいいのか」~仁和寺にて

私はときどき娘から、「臆病者」とからかわれることがあります。それはレストランや食堂に行っていつも同じものしか頼まず、新たな冒険をしないからです。 ただし私にも私なりの言い分があります。外食はめったにしませんから、自分の食べたいものを逃したく…

「配合禁忌(はいごうきんき)」~トリカブト殺人事件と沢田研二夫妻

薬剤師の友人から聞いた話ですが、二種類の薬を服用したとき、その一方または両方がまったく効能を失ってしまうことがあるそうです。失うだけならいいのですが、二種類の薬が反応して有毒物を発生することもあります。こうしたケースを「配合禁忌(はいごう…

「オバタリアンと宰相不幸社会」~なんか似ているなと思えてきた

かつて「オバタリアン」という言葉が一世を風靡したことがあります。元は堀田かつひこが連載していた4コマ漫画(1988―1998)なのですが、言葉は原作を越えて広がりました。 オバタリアンは相手次第で知ったかぶりと知らんぷりを交互に連発する‥。オバタリア…

「雨ニモ負ケズ」~ワシントン大聖堂に流れた英文の宮沢賢治

14日の朝日新聞に「雨ニモマケズ」ワシントン大聖堂に響く 宗派超え祈り という記事がありました。 世界の主要宗教の代表者が集まり、東日本大震災の被災者のために祈りを捧げる「日本のための祈り」が11日夜、米首都のワシントン大聖堂であった。 同聖…

「文体とは何か」~文体①

あるレストランで、一人の女優が友人にからかわれる。「結局キミが一流の女優だっていったって、脚本がいいから観衆を泣かせられるのであって、良い脚本なしに何もできないものさ」 それを聞いた女優はすっと立ち上がり、手元にあったメニューを持ち上げると…

「火中の栗」~言葉の使い方

昨夜のトップニュースはどの局も民主党幹事長に岡田外務大臣の起用が決まったという内容でした。そしてほとんどの局が「岡田外相は『火中の栗を拾った』」というような言い方をしていました。NHKもそう言います。 言葉というのは最初に覚えた印象をなかな…

「語のグローバル化」~言葉は文化の低い方へ流入する

日本は中国の漢字によってたいへんな恩恵を受けています。漢字がなければひらがなもカタカナもなかったわけで、日本で何らかの文字が発明されるまでに、相当な量の文化が失われてしまったはずです。中国には感謝しなければならないところです。 ところで、中…

「言葉の難しさ」~語の誤用の昨今

職員室で、学力の「ほしょう」はなぜ「保障」なのかという話がありました。「必ず学力をつけます」という意味では「保証」の方がよさそうな気もしたのですが、現実問題として保証しかねる子もいるわけで、ちょっと言葉が強すぎる感じがします。もちろん「補…

「兆の世界」~つかみどころのない数

先週の授業研究会の最中に「動物は体重1kgにつき、1兆個の細胞でできている」とういう話が出てきました。66kgの私は66兆個の細胞からできていることになります。しかしこの「兆」という単位、これがなかなか曲者で、どうにもこうにも感覚的につか…

「野球と数学」~一流の野球選手は計算ができないのか?

今朝の毎日新聞にこんな記事が載っていました。 日本シリーズ 精神力の差、勝敗左右 「ベースボールの90%は精神力。あとの半分は体力」。大リーグ、ヤンキースの名捕手で1950年代の黄金期を支え、監督も務めたヨギ・ベラ氏の言葉だ。多くの含蓄ある名…