「若きママたちの義兄弟」②

 若いママさんたちがブログなどで使う用語――「義実家」「義両親」などに違和感がある、というお話をしました。
「だったら義実家のことは普通はなんて言うの」
という娘の問い合わせに対して、
「夫の実家」
と返事をしておいて、しばらく後にこれにも違和感を持ちます。その言い方、昔はあったのか? ということです。

 そういえば大学生のころ、故郷に帰省しようとしたら「実家に帰るの?」と聞かれて面食らった記憶があります。つまり少なくとも40年位前、私の意識の中では男の子に「実家」はなかったのです。
 そうです。「実家」というのは女性の出自を言うので、男性には使わないのが基本でした。「実家」の「家」は家屋や場所のことではなく“家族関係”のことを言いますから、基本的に姓を変えない男の子は家(同じ姓を持つ家族関係)を出ることはありません。「家」を出ない以上は「実の家」もないのです。
(養子縁組という制度はあったので、その場合、新しく入った家は「養家(ようか)」、もとの家は「実家」ということになります。ですから男性にもまったく「実家」がないわけではありませんが江戸時代ならともかく、現代の日本ではあまり一般的とは言えないでしょう)

「実家」の対語は「養家」と「婚家」です。
 昔、女性は家を離れて婚家に入るのが一般的ですから、「婚家」と「実家」の双方を持っていました。しかし迎え入れる立場の男性には「婚家」はなく、したがって「実家」もないことになります。つまり私の言った、「義実家という言い方はないよ。普通は『夫の実家』だよ」も間違っているのです。

 都会の大学へ進学するために家を離れて一人暮らしをするというのも明治以降の出来事ですから、昔は“遠く離れた本来の家”を表現する単語もありません。しかし都会の一人暮らしも核家族も一般化してくると、どうしても“遠く離れた本来の家”を表現する言葉が必要になってきます。そこで「実家」が男性にも未婚の女性にも使われるようになったのです。

 辞書で調べると、
【実家】
  1 自分の生まれた家。生家。
  2 婚姻または養子縁組によって他家にはいった者からみて、その実父母の家。
 となっていますから、「ボクの実家」も「夫の実家」も完全に市民権を得ているのでしょう。私自身も、別の場所で母が住む家のことを「実家」と呼んではばかりません。言葉は生き物ですからそれでいいのです。

 しかしそれにしても「義実家」や「義両親」が市民権を得るにはまだまだ時間がかかりそうですし、「義兄弟」(*)に至っては先行する概念(契約によって兄弟のように結ばれた関係)が邪魔をしますからもっと時間がかかるはずです。

 言葉ってやはり面白いですね。

(*)婚姻や養子縁組によって新しく兄弟となった関係を、法律では「義兄弟姉妹」というそうです。しかしこの場合も読みは「ぎけいていしまい」ですし、「義兄弟」「義姉妹」と分けて使うことはないみたいです。