カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

「いのちのこと」10〜翌日から

出産の翌日、エージュは休みを取って一日シーナの病室で過ごしました。 カーテンで囲い込んだあんな狭い空間で何をしていたのかは謎ですが、何をするというでもない時間を、いくらでも過ごせる夫婦のようです。 赤ん坊には「ハーヴ」という名がつけられした…

「いのちのこと」9〜その日の夜

その日の夜、シーナの夫のエージュも駆け付けます。仕事の終わったその足で電車に乗ったようです。 エージュには出産前後から何通かのメールを送っています。「シーナ、今、分娩室にはいりました」「2時25分。今、生まれたよ」「ご実家に電話しましたが誰…

「いのちのこと」8〜その日の午後b

病院についたとき、妻もすでに学校に戻り、シーナは一人でベッドに体を横たえていました。「大変だったね。でも赤ちゃん元気で良かったね」 そう言うと、「見たの?」「ああ、保育器に入れられてからシーナが分娩室を出て来るまで、たぶん15分か20分くら…

「いのちのこと」7〜その日の午後a

赤ん坊は生まれてすぐに保育器に入れられ、シーナは病室に戻ります。私はさらにいくつかの場所に連絡したあとシーナに声をかけていったん職場に戻り、やり残した仕事を終えてからこんどは家に帰って必要なことを行います。それからまた病院です。 必要なこと…

「いのちのこと」6〜その直後

世の中にどうしようもなく間の悪い人がいます。本人の性格や人間性と関係なく、とにかく間が悪くてしばしば憎まれる人です。 出産直後、車いすで病室に運ばれるシーナのうしろを歩く私に、ピンポイントで電話をよこした人など、まさにそうです。どうせろくな…

「いのちのこと」5〜その瞬間

病院の駐車場で場所を探していると、遠くで妻が盛んにスペースを指し示しています。一歩早く到着していたのです。私は大きく手を振って了解を示すと妻に“急げ”と手で合図します。妻は1〜2分早く到着しましたがシーナに声をかけることがでなかったようです…

「いのちのこと」4〜その直前

ぼろぼろに疲れ果てた娘を見舞って家に戻ると、いくらもしないうちに本人から電話が入ります。「今、診察が終わって陣痛促進剤を進められた。怖いけどやってみようと思う。家族の承諾が必要なので10時までに印鑑をもって来て」 あわただしい話でした。10…

「いのちのこと」3〜長い長い日々

翌朝は驚くほど早い時刻にシーナから電話が来ます。――朝の診察を終えたがまだまだらしい。病室が暑いのと赤ん坊の泣き声で一晩中眠れなかった、帰ってもいいというので家で休みたい、そういう話でした。半日足らずで戻ってくるわけです。 家に戻ってトロトロ…

「いのちのこと」2〜その始まり

土曜日の朝、目を覚まして居間に下りると、シーナがパジャマ姿のまま椅子に腰掛けています。妻ならまだしもシーナがこんなに早く起きることはないので聞くと、昨夜10時過ぎからおなかが痛くなり、朝まで一睡もできなかったといいます。いよいよなのかもし…

「いのちのこと」1〜シーナは幸福とともにある

娘のシーナが子を産みました。私にとっては初孫にあたる男の子です。とは言っても昨日今日のことではなく、3ヶ月前のことです。少し落ち着くまでということで、今日まで書かずにきました。 シーナは昨年2月に入籍し、姓も変えて夫のエージュと都会でマンシ…

「日本が汚れる」⑥〜詐欺師たちの宴

ホリエモンこと堀江貴文が私たち素人の目の前に登場したのは、2004年の大阪近鉄バッファローズ買収問題の時でした。 恐ろしく若い企業家が、美女を引き連れ、ジーパン姿で球場を闊歩するという姿は、新鮮というよりは不快なものでした。傲慢な語り口調も…

「日本が汚れる」⑤〜詐欺師たちの宴

2022年東京オリンピックのエンブレムが白紙撤回されました。国立競技場の建設計画白紙化とともに国家的事業にケチがついたようで本当に残念です。 あのデザインについて、個人的にはベルギーの劇場のエンブレムの盗用というのは無理があると思います。全…

「日本が汚れる」④〜テレビ、洗濯機、高級時計

セイコー社(セイコー・ホールディング傘下の企業)は日本の企業にふさわしくかなりまじめな営業をしています。腕時計のマニアでなければあまり知られていないところかと思いますが、アルバ・ブランドからクレドール・ブランドまで、実に幅広い時計作りをし…

「日本が汚れる」③〜テレビ、洗濯機、高級時計

イタリアに旅行した初日、ホテルを案内してくれた現地日本人スタッフが部屋の使い方を一通り説明した後で「テレビはこのリモコンで・・・」とスイッチを押して見せたのですがなかなか画面が立ち上がらない。その間10秒とはかからなかったと思うのですが日…

「日本が汚れる」②〜インドネシア高速鉄道と国立競技場

結果的に両者痛み分けみたいになってしまったインドネシア高速鉄道入札ですが、私が恐れたのは単に日本が中国に負けるということだけではありません。売り込みの過程の中で、日本もまた汚いことをしていくのではないかという恐れです。 インドネシア高速鉄道…

「日本が汚れる」①〜インドネシア高速鉄道と国立競技場

私がここ数日間、心悩ませ緊張していたのは、インドネシアの高速鉄道が日本に決まるか中国かという問題です(マ、私事平和ということだな)。 昨夜も遅くまで起きていて、結局ニュースにならないので「結果は明日かな」と思って眠ったのですが、今朝はテレビ…

「愚かな理性主義者たち」④〜諸外国の教師は偉いのか

私の弟は定年間近の地方公務員ですが、10年ほど以前、こんなことを言ったことがあります。「オレ、今の30歳前後の連中に出世競争で上に立たれても一向にかまわない。アイツらメチャクチャ優秀だ」 よくわかる話です。学校社会も同様で、平成不況の中で2…

「愚かな理性主義者たち」③〜昔の教師は偉かったか

「今の日本の教師のレベルで教えてもなあ・・・」 これに対する基本的な反論は、「だったらいつの日本、あるいはどこの国・地域に『今の日本』を越える教師がいるのか、具体的に示せ」です。 少なくとも私が教育を受けてきた昭和の教員たちは「今」に比べた…

「愚かな理性主義者たち」②

「修身」の復活という話題に対して、「どんな教師が教えても有効な教科書というものが必要になる」と反応する“識者”たち――この人たちは教育についてまったくわかっていません。 昨日も示したように道徳的な逸話・物語など世の中にいくらでもあるのです。私た…