カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「『古いお札入れ』には何を入れたらいいのか」~仁和寺にて

 私はときどき娘から、「臆病者」とからかわれることがあります。それはレストランや食堂に行っていつも同じものしか頼まず、新たな冒険をしないからです。
 ただし私にも私なりの言い分があります。外食はめったにしませんから、自分の食べたいものを逃したくないのです。
 一か月に一回しか行かないようなラーメン屋で、大好きな海苔ラーメンと焼肉丼セットを食べられないのは嫌なのです。二か月に一回しか行かない寿司屋では、マグロとウニ、エビと甘エビとネギトロとイカ、それといくつかの定番を食べると新規開拓の余地はほとんどなくなります(ですからつい一昨日の「お試しかっ!全部当てるまでは帰れま10」は私の究極のあこがれの番組です《知らない方のために:「帰れま10」はその店の人気メニューベスト10を当てるまで、果てしなく食べなければいけないという番組で、今回はラーメンの幸楽苑でした》)。

 そんな性質なので奈良や京都に行っても見学先はいつも定番です。

 奈良なら東大寺興福寺、新薬師寺法隆寺唐招提寺薬師寺、これが外せない。京都なら金閣銀閣・蓮華王院(三十三間堂)、東寺、清水寺、これが定番です。しかし見方を変えればつまらない旅です。

 今回の修学旅行は二日目がタクシー見学で、その間、付き添いは暇です。宿舎も追い出されるので「一朝何かあれば駆けつける体制」ができていれば、あとはなんとか時間をつぶすのが仕事でした。

 そこで定番の金閣にと・・・行きかけてふと考えました。修学旅行の付き添いももういくらもできません。だったら全く知らないところに行ってみるのも悪くはない。そこで急遽予定を変え、金閣から回れる有名寺院を次々と回って見ることにしました。

 金閣の横を抜けて30年ぶりの竜安寺仁和寺から妙心寺北野天満宮からグンと離れて平安神宮から青蓮院、そして知恩院と回って帰ってきました(ハァ〜疲れた)。

 その途中の仁和寺での出来事です。

 仁和寺の金堂は旧皇居の正殿・紫宸殿、国宝です。その賽銭箱の隅に、「古いお札入れ」と書いたボール紙の菓子箱が置いてあります。何か非常に違和感のある箱でした。
 私が賽銭箱に55円を投げ入れ、お祈りをしようとしたら、ちょうど私と同じ年ごろの夫婦がやってきました。その奥さんの方が言います。
「あら、『古いお札(さつ)入れ』だって。今でも持っている人、いるのね」
 それに答えて夫の方が、
「そりゃいるだろ」・・・・・・・

 連れ合いの錯誤にまっすぐに巻き込まれていく感じがすてきでした。賽銭箱の隣に「お札」ですから「おさつ」と間違えても仕方のないことかもしれませんが、これは「おふだ」です。

 仁和寺が勘違いで有名なお寺(徒然草第52段「仁和寺にある法師年寄るまで石清水を拝まざりければ・・・」)であることを思えば、本当にいい話でしょ?