若いママさんのブログばかりを集中的に読んでいくと、そこにはそこの独特な用語や表現のあることに気づきます。その世界でしか通用しないものですから、これはもう隠語とか符丁とか言ってもいいようなものなのかも知れません。
たとえば「完母(かんぼ)」。これはミルクを使わず母乳だけで養育をする「完全母乳育児(でいいのかな?)」のことを言います。するとミルクだけで育てるのは当然「完ミ」、双方で補完するように使うのは「混ミ」ということになります。これなどは分かりやすいところです。
「卒乳」――時期を定めて母乳を断つ「断乳」に対して、乳幼児自身がやめてしまうことを言います。逆に言えば本人がやめるまで月例をいくつ重ねても飲ませ続けるやり方で、今はそうした選択をするお母さんもいるようです。
その他「差し乳」だの「溜まり乳」だの哺乳関係だけでもこれだけ(私にとって)新しい言葉が出て来るので面白い世界です(別に私はその方面のマニアではありません)。
それ以外だと「ネントレ」だの「飛行機ブーン」だの、どれもこれも若い両親や赤ちゃんの様子が目に浮かんで、何とも微笑ましいものです(*)。
ここまではいいのです。
なぜなら以上の言葉は別の言葉で置き換えが利かないものであり、コミュニケーション上どうしても必要なものだからです。しかし次はどうでしょう?
「義実家」
歴史が好きな元社会科教師としては、これはどうしても「よしざね け」としか読めません(源氏か?)。しかし実は「ぎじっか」と読むのです。配偶者の両親の家という意味です。
配偶者というのは婚姻関係の双方ですから義実家も互いにありそうですが、そちらの世界ではもっぱら夫の「実家」だけです。妻の実家を夫が「義実家」と呼ぶことはありません。
そして夫の両親は「義両親」となり、夫の兄弟は「義兄弟」です。いかがでしょう?
私どもの世代だと「義兄弟」はヤクザの世界で杯をかわし、契りを結んだ特殊な関係のことをいいます(Wikipediaにも「固い契りにより、血縁のない男性が、兄弟に等しい盟友関係となること」とあります)。
若い、しかも母親になりたての女性に義兄弟がいるというのは、何かすごい感じです。若いころの岩下志麻さんや富司純子さん(いずれも任侠映画のスター)だったらいいのですが。
あるとき娘のシーナに
「義実家というのはいつまでたっても違和感があるなあ」
と書き送ったら逆に、
「じゃあ、夫の実家のことはなんて言うの?」
と聞き返されました。そこで、
「夫の実家」
と書き送ったらあきれ果てたのか、それに対する返事はありませんでした。
しばらく忘れてそのまま放置していたのです。ところがあるとき、突然思い出して不思議な感じにとらわれました。「夫の実家」という言い方に違和感を持ったのです。その言い方、昔はあったのか?
(この稿、続く)
(*)「ネントレ」――「ねんねトレーニング」。乳幼児の睡眠コントロールのこと。
「飛行機ブーン」――腹ばいで両手両足を床から離すこと。子どもの成長のひとつの目安のようです。