カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「火中の栗」~言葉の使い方

 昨夜のトップニュースはどの局も民主党幹事長に岡田外務大臣の起用が決まったという内容でした。そしてほとんどの局が「岡田外相は『火中の栗を拾った』」というような言い方をしていました。NHKもそう言います。

 言葉というのは最初に覚えた印象をなかなか払拭できないものです。私は「火中の栗を拾う」を、(ラ=フォンテーヌの寓話から) 「他人の利益のために危険をおかして、ばかなめにあうこと」広辞苑)と覚えましたので、「岡田外相は『火中の栗を拾った』」という言い方がピンと来ないのです。(寓話の内容は一番下)

 しかし私が(言葉遣いについては)最も信頼するNHKですらこういう使い方をするとなると、「他人のためにあえて危険を冒す、勇気ある行動」という意味ですっかり市民権を得ているのかもしれません。岡田もバカをやったもンだ、ではトップニュースにはなりません。

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 ところで幹事長というのは実質的な党の副党首で、最大の仕事は選挙の采配だということになっています。誰を立候補させ資金をどう配分するかを決める党の要で、人事と資金の双方を握る最大権力者ということになります。この「幹事長」について、ひとつ思い出があります。それは三木武夫さんという人が総理総裁をやっていたときのことです。

 三木武夫という人はナルコパシー(睡眠障害)で、国会でも閣議でもしょっちゅう居眠りをすることで有名でした。ある日、党の重要会議の最中にまたしても居眠りが始まったので、当時幹事長だった中曽根康弘氏がそれとなく横からつついたそうなのです。すると三木総裁は薄目を開けて「ウフフ」と笑い、半分寝ぼけて、
「ウフフ・・・カンジチョ〜ウ」(*)
  もちろん当時の、単なるお笑いです。
*分からない人は少し甘えた声で何回か発音してみてください。

【火中の栗を拾う】

 ある家に、ベルトランという名前の猿とラトンという名前の猫がいて、ある日、火のそばで栗が焼かれているのを見ていました。猿のベルトランは猫をおだてて「今こそお前の腕の見せどころだ、あの栗を引き出してくれ、もし神様が火の中の栗をとれるように、この俺を作ってくださっていたら片っぱしからとってしまうのだがなあ」と言ったので、ラトンはすっかり気を良くし、炉の灰を少しずつかきのけ、苦心して栗を1個、2個、3個…と拾いました。そしてその間に、猿のベルトランはカリカリと栗をぜんぶ食べていまったのです。そこへ女中がやってきて、「ふたりともあっちへお行き」といったので、ラトンは栗をひとつも食べることなく、火のそばをあとにしなくてはなりませんでした。