カイト・カフェ

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「巨人引力」~子どもに引力を教えるコツ(くだらない話が記憶に残る)

 使わない知識は消失する、それが鉄則です。中高6年間も勉強しながら結局私たちが英語をしゃべれないのは“必要ない”からです。それは数学の微分積分を忘れてしまったのと同じです。
 同様に江戸幕府が1860年(万延元年)に発令した貿易統制法令「五品江戸廻送令」の五品がなんだったのか、それも全く思い出せません。必要ないから。
 古文も漢文も読めません。あれ以来読んでないから。

――という訳ですべて使わなかった知識は失われるはずなのに、妙なことで頭に定着したままになっている知識もあります。
 例えば、

パスカルの原理」

 これは友人が豊かな話をしてくれたからです。
「ある日小学生のパスカル君は授業中にオシッコがしたくてたまらなくなりました。我慢して我慢して、やっと休み時間になってトイレに行こうとしたら後ろから友だちが、『やあ、パスカル君』とか言って肩を叩く。その瞬間、長時間の苦労も水の泡となり、パスカル君はオシッコを漏らしてしまったのです。しかしそれと同時に素晴らしい発見をします。『閉じ込められた液体の一点にかかった圧力は、同じ圧力で他に伝わる』(パスカルの原理)です」
 あるいは、

ドップラー効果

 これは「来て走り去る救急車」と「電車内から聞く踏切の警報器」という二つの音声模写(と彼は言っていました)を得意とする友人がいたからです。何の意味もなく「パーフー、パフー」といつもうるさくやっていました。
 最後が、

「フレミングの法則」

 ポイントは立って左手の三本の指を三方向に向けて指し、片足を後ろに跳ねて言うのです。「フラミンゴの法則」。
 まったくくだらないので、そのくだらなさのために記憶に残っています。しかし何の役にも立ちません。

 これとは異なりますが、夏目漱石の「吾輩は猫である」の中に、アメリカの子ども向けの本(?)がすごいとかいった話が出てきます。科学の話としていつか使おうと思っていたもので「巨人引力」と言います。正確に思い出せないので調べたらこんな話でした。

「巨人引力」

 ケートは子どもたちが外でボール遊びをしているのを見ていた。
 子どもたちはボールを空高く投げる。ボールは上へ上へとのぼる。しばらくすると落ちてくる。彼らはまたボールを高く投げ上げる。二度、三度、投げるたびにボールは落ちてくる。なぜ落ちるのか。

「なぜ上がったままにならず落ちてくるの」。ケートが聞くと母親が答える。

「地中に巨人が住んでいるからよ」
「それは“巨人引力”というの。すごく強いの。“巨人引力”はすべてのものを自分に引き寄せる。家でも地面に引っ張りつける。巨人が引かなければ吹っ飛んでしまう。子どもも飛んでしまう。葉っぱが落ちるのを見たことがあるでしょ。あれは“巨人引力”が呼び寄せているの。本を落す事があるでしょ。“巨人引力”が来いというから行ってしまうの。ボールが空にあがる、“巨人引力”は呼ぶ、呼ぶと落ちてくる、そういうことよ」

 子どもに「引力」を説明するのは容易ではありません。ですから子どもに「地球は丸いのになぜ人間やものは落っこちないの」と聞かれたらいつかこの話をしてやろうと待ち構えているのですが、今日まで一度も聞かれたことはありません。