カイト・カフェ

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「魔女と魔王の品性」~本物の美女・金持ちは誇示したりしない

「魔女たちの22時」という番組があります(日本テレビ系列、火曜日10時より)。日本テレビのサイトによると、
「30代にしか見えないのに50代・・・
超モデル体型なのに3カ月前は超おデブちゃんだった・・・
見た目はアゲハだけど、天才実業家・・・
などなど、驚きのギャップを持った人々が毎週ぞくぞく登場 (中略)お金?美容?つきあう人?なぜこんな魔女、魔王が生まれたのか!?
恋愛、美容、ファッション、お金、子育て、アンチエイジング、メイク、健康、料理、ダイエット、趣味・・・など、あらゆるテーマを
『現代を生きる魔女、魔王』という具体例をもとに実際に見せていきます」
ということですが、実際のコンセプトは「人生、結局は金と若さとダイエットよ」といったミもフタもないものです。

 ちなみに、先週(11月9日)の出演者は、
「あだ名は『残飯処理係』 体重113キロの超おデブちゃんだったのにあの野菜のおかげで マイナス61キロのダイエットに成功した魔女」
「魔女のタレコミ情報!わずか6歳で親と離れ離れに 親戚をたらい回しにされた“家なき子”だったのに 国内外に3つの別荘そして今まさに軽井沢の一等地に超豪華な4つ目の別荘を建てた有名人魔女がいる」
「夫が病死 自分も原因不明の病気になり 全身をガラスの破片でえぐられ続けるような激痛に苦しんだのに それでも20代の息子とカップルに間違えられる51歳の魔女」
の3人が出演したようで、要するにダイエットと金持ちとアンチエイジングの三つだけです。
(上に引用した「◯◯だったのに(◯◯のおかげで)◯◯になった魔女(魔王)」という、時には気の遠くなるほど長いフレーズは一人の出演者が登場するまで4〜5回も繰り返され、その鬱陶しさがこの番組のひとつの“ウリ”になっているようです。私にはただウンザリ・イライラさせられるものでしかありませんが)

 平均視聴率12%だそうですから単純計算で毎週1500万人も見ているオバケ番組で、おかげでもう1年半以上も続いています。どういう人が見ているのでしょう(私みたいな人?)

 言うまでもなく「人生、結局は金と若さとダイエット」ではありません。世の中の成功はその三つによって保障されるものではありませんし、「幸福」はこれらの関数ではないからです。そんなことは誰でもが知っています。しかしそれにもかかわらず、「人生、結局は金と若さとダイエットよ」と信じて疑わない人たちもいます。少なくともこの番組の“出演者”たち(ごく一部を除いて*)はそうでしょう。

 “出演者”たちは自分が人生の成功者であって、賞賛を受けるに値するものだと信じ切っています。だからこそこの番組に出て来られます。しかし番組の中で彼らを成功者だなんて思っているのは本人だけです。

 たとえば司会者も(数人いる)コメンテーターも“出演者”を部分的成功者としか見ていません。自分たちの方がはるかに成功者だと思っているはずです。ディレクターはこうしたヒット番組をつくった自分こそ成功者だと思っていますし、スタッフはそうした番組の制作に携われるからこそ成功者だと思っています。“出演者”を羨んだりすることもないでしょう。

 “出演者”たちは右手に「金・若さ・ダイエット」(=成功者)といった看板を持ちながら、しかし左手に「浅薄」「下品」「愚か者」という看板を持たされていることに気づきません。
 視聴者の中に、左手しか見ていない人がいるという可能性も知りません。左手の看板ばかりが気になる人たちは、こうした番組に出演することは「みっともない」ことだと感じていますし、どんなに金があって美しくとも、出演を決めた段階でその人はアウトだと思っています。
 だって本物の美人や金持ちは、そんな場所に出てきて美や金を誇示したりしないことを、よく知っているからです。そんなことのできるのは二三流の美人と二三流の金持ちだけです。

 その「浅さ・下品さ・愚かさ」に私はそうとうイライラします。そしてそれ以上に、この番組が垂れ流す「人生、結局は金と若さとダイエットよ」という誤ったメッセージは危険だと感じています。少なくとも子どもに見せていい番組ではないでしょう。
 テレビは、視聴率のためなら何でもやるところです。つくづくそう思わされます。
*ごく一部を除いて・・・芸能界に再デビューするための足がかりとしてこの番組に出てくる“出演者”がいます。そしておそらくごく稀でしょうが、「金のため」に出てくる“出演者”もいるかもしれません。なにしろサイトを見ると「スタジオに出演が決定した方には、最高で賞金10万円、出演した魔女を推薦された方には賞金2万円」とあるからです。・・・しかしどこまでも下品な番組ではあります。