カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「日本の食卓からコメがなくなる」〜口中調味と偏食の話(追補)

 このブログの記事を私は前日の夜8時半くらいまでに書き終え、予約投稿で午前零時過ぎに公開できるようセットしてから別宅の方に移動します。別宅と言っても愛人宅ではなく、91歳の母の住む家です。それが日常です。
 先週の木曜日も「口内調味」に関する2回目の記事を投稿して、そこから自家用車で移動し始めたのですが、そのとき車内で聞いていたNHKテレビの「所さん!大変ですよ」に興味深い話が合ったので、思わず車を止めて画面に見入りました(きちんと停止しないと画面が見られない設定です)。私にとってはタイムリーな番組だったからです。 「口中調味」についてはもう切り上げるつもりでしたが、面白い話があったので一度だけ追補します。

【食卓からコメがなくなる】

 先週木曜日(10月4日)放送分の「所さん!大変ですよ!!」のサブタイトルは「なぜか大人気!?超高級マヨネーズの謎」なのですがその後半、食卓からコメが消えているという衝撃的な話題を扱っていました。 
 NHKのサイトの紹介によると、
『一方子育て世帯の食卓からはコメが姿を消している!?ピザやパスタなど味のついた主食を好む子どもたち「好き嫌いをなくすより楽しい食卓が優先」という保護者…激変する現代日本の食卓、その衝撃の実態をリポート』
ということになります。

 番組では忙しさの中で“せめて食事くらいはゆっくと楽しく”ということで子どもの好まない米飯を排除し、パスタやピザを中心にしている家庭の夕食風景を紹介したあと、千葉県のある中学校のパンと米を選択できる給食を紹介しました。
 そこでパンの給食を選択している生徒たちに理由を聞くと、
「なんかねちょってしている感じがあんまり好きじゃない」
とか、
「味がついていればいいけど(ご飯は)味がついていないので(食べにくい)」
答えます。
 VTRが終わって所さんは「見なけりゃよかった」と嘆き、アシスタントの木村佳乃さんも「びっくりしました」と驚いていました。

 番組では子どもたちの咀嚼回数が減ってきてそのために米のうまみを理解できる子が少なくなったとか、他に柔らかくておいしいものがたくさんあるからとかいった方向で説明しようとしていましたが、私は知っています(なんか「チコちゃんは知っている」みたいですが)。
 あの子たちはきっと口中調味をやってないのです。

【文化的外国人としての日本の子ども】

 “ご飯がねちょっとしている”というのは私が「口中調味」をやめて初めて知った感覚です。白米を単独で食べるようになって米とはこんなに気持ちの悪いものなのかと、ようやく米飯嫌いの子どもたちの気持ちが理解できました。

 そう言えば私はもともとお粥が嫌いですが、それはお粥が最初から“ねちょっ”としているからで、あの感覚が嫌いな人は白米だけで食べるのも苦手なはずです。口の中でお粥を作っているようなものですから。
 さらに「味がついていればいいけど(ご飯は)味がついていないので」に至っては間違いなく口中調味の経験がない。私は生きてきた60数年間、お粥以外で米に味がないと感じたことは一度もありません。いつでも一緒におかずを入れて口の中でクチャクチャやっていましたから。

 2007年に福井大学の研究チームが行った「食事時における白飯、おかずの食べ方と偏食の関連性」という調査では、地域の小中学生782人中、「口中調味」の経験が「あまりない」「まったくない」子は合わせて26.2%もいました。小中学生の4人にひとりはご飯を食べる時に「味のない」「ねちょとした」米をクチャクチャしているわけです。これではご飯嫌いが増えるわけです。

 家庭では十分に教えられないこと、十分にできるようにならないことを教育するのが学校です。だとしたら米飯をおいしく食べられる教育も行うべきだと思うのですが、今どき「下品」とされる「口中調味」を教えてもよいものか――。
 一昔前の私なら迷わず行ったと思いますが、今は違います。他人のお子様のためにそこまでやって体罰だのパワハラだの言われても困りますから、たぶんやらないと思うのですが、それだと米嫌いは増える一方で、家庭における和食文化も衰える一方ということになりかねません。

【食文化の変更、または衰退】

 先々週の話ですが「踊る!さんま御殿!!」で現代の若者がポテトチップスを箸で食べると知ったさんまさんが、全身を踊らせて嘆き呆れていました。しかしこれには納得できる理由があって、かつてはカウチポテト(ソファー《カウチ》に寝っ転がってポテトチップスを食べながらだらだらとテレビを見て長時間過ごす人たち)だった若者が、テレビをスマホに替えたらポテトチップスが手で食べられなくなった(ベタベタするから)ということらしいのです。

 今はコンビニでポテトチップスを買おうとすると「お箸をお付けしますか?」と聞かれるそうです。また実際ポテトチップス専用トングというもがあって爆発的に売れているとも聞きました効きました。
 ちなみにネット検索したら「名古屋の東急ハンズで5カ月に2千個売った」という記事がありましたが、見たら日付けが2010年8月でした。
 

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 ポテトチップスと同じ理由で、昭和の名菓「森永チョコフレーク」は売り上げ不振に陥っていよいよ生産中止だそうです。
 昭和はさらに遠くなりました。
 時代は変わります。
 口にものを入れたまま再び口を開けない洋風の食事マナーが「口中調味」という日本の習慣を殺し米を瀕死に追い込み、スマホという文化がポテチやチョコフレークを死なせる。
 このぶんだと音を立てる食事とかすすり上げる食べ方というのも、下品なものとして廃されていくのかもしれません。

 かつて大学の同窓生にフランス生まれフランス育ちで、麺をすすったことがないという娘がいました。彼女は音を立てるのがいやでラーメンを食べる時も箸に巻き付けたくなると嘆いていましたが、欧米の人たちが日本に来て箸を使い麺をすする練習をしている今日、日本の子どもたちはラーメンや日本そばをフォークに巻き付けて食べる日を夢見ているのかもしれません。