カイト・カフェ

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「標準的生活の話」〜いつの時代も親が勧める平均的人生 2

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グスタフ・クリムト「人生の三段階」)

結婚適齢期の話】

結婚適齢期なんてない。自分が結婚したいと感じた時が適齢期だ」
という気分の良いコピーがあって一時はやったりしました。しかしその後「卵子の老化」が問題となって、“子どもを持つことを計画するなら適齢期(臨界期)はある”というように一部書き換えられたふうがあります。

 さらに私はこれに加えて、 “楽に生きようとするなら(結婚)適齢期はある”というふうに言っておきたいと思います。90歳になる私の母が、独身のころ言われたような、
「女性は25歳、男性は30歳までに結婚しておくといいよ」
という話です。

 ただし現代、こういうことを言うこと自体がセクハラですから、気分の悪い方はこれ以上読まないようにお願いします。
「女とクリスマスケーキは25(日)を過ぎると売れない」
などと言った昔の言葉が平気で出てくるかもしれません。
 この先も読もうという親切な方には、“今日の記事は基本的に中高生に向けての話だ”というふうに前もって申し上げておきます。

【女性は25歳、男性は30歳までに結婚しておくといいよ】

 さて、なぜそんなことを言うのかというと、生物学的な出産適齢期が20歳代後半と言われていますので、その間に2〜3人に子どもを儲けようと考えると、どうしてもそのくらいになってしまうのです。妊娠しやすいという意味でもとても都合の良い時期です。

 女性が30歳、男性が35歳くらいまでの時期に最後の子どもが生まれたとすると、一番下の子が成人するとき、女性は50歳、男性は55歳です。人生で一番年収の高い時期の収入がすべて夫婦のものとなります。仮に夫婦合わせて1000万円の年収があるとして、生活費の300万円を差し引いて毎年700万円ずつの貯金ができます。おまけに退職金には一切手を付けずに済みます。

 生活費が年300万円というのはあまりにも少ないように思われるかもしれませんが、夫婦二人だとそんなものです。何しろ子どもたちが家にいた最後の数年というのは、学費だの遊興費だので子どもが一番金を使う時期す。家計の半分以上が子どもに使われていますから、夫婦二人だけの支出を考えると案外つつましかったりするのです。
 一世を風靡したDINKs(Double Income No Kids《2収入、子供なし》)だと生活水準がものすごく高いので退職後はかなり厳しいことになりますが、年中“金がない”とブー垂れていたような普通の5人家族だと、子どもが抜けただけでグンと楽になったりするわけです。

 ただしこの時期、別の負担ものしかかってきます。平均的な家庭の場合、夫婦が60歳の定年を迎えるころになると、その親たちが80歳を越え、場合によっては介護も必要になったりします。
 しかし大丈夫。先ほどから話している「昔の結婚適齢期」に乗ってきた人たちはその時期手持ち資金が潤沢ですから、それと親たちの年金を組合わせるとかなりの対応ができます。「金がないから早く死んでくれ」といった親不孝な妄想に捉われなくて済みます。

 さらに年月が進んであなたたちが80歳になったころ(夫80歳、妻75歳)、そろそろ自分の終活を考えなくてはならないのですが、そのとき息子や娘たちは45歳〜50歳。多少迷惑をかけるようなことがあってもびくともしない年齢です。
 うまくできてるでしょ?

【“世の中”のでき方】

 なぜそんなふうにうまくできているかというと、長い時間経過の中で私たちが社会をそのように設計したからなのです。
「人は何歳になったら働いて稼げるようになるのか」とか、「いつまで働いて家族を養わなくてはいけないのか」とか、「定年後はどれくらいお金があったら生きて行けるのか」とか、「年金はどれほど必要なのか」「財政的に払い続けられるのか」とか、さまざまな条件をゴチャゴチャいじって調整した結果が今の社会制度なわけです。
 そこでもとに戻るわけですが、だから、
「女性は25歳、男性は30歳までに結婚しておくといいよ」
となるのです。

 ただしそれはあくまでも「楽をしたければ」という条件付きの話です。それが正しい生き方だというわけでもありませんし、そうすべきとも思いません。
 また4年生大学を出た上で25歳までに結婚するというのはかなり忙しい話になりますし、やっと自分で稼いで心置きなく遊べるという時期に、家庭をもって子どもを養うというのもなんだかもったいないような気もします。

 人生の後ろの方を考えると、65歳定年制の話が出てきているように、現在の60代はかなり元気ですし働かなければならない事情のある人も多くいます。また政府の年金財政も苦しくなって、できれば支給時期を可能な限り遅らせたいとなると、平均的な人生設計というものにもかなりのずれが出てきています。

 ですから「楽をしたければ」の条件付き結婚適齢期も微妙にずれてきてはいるのですが、基本的には、周りに合わせて手順を踏んでいくのが楽なのには変わりありません。ん。

  (この稿、続く)