カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「父親が娘に伝える性教育」⑤〜最終

(10) 結婚適齢期はあるよ

結婚適齢期なんてない」いう人もいるけど、便利という意味では適齢期はあるよ。
 例えば父なんて、結婚が遅くて親になるのも遅かったから、定年退職と(弟の)アキュラの成人式が一緒だ。幸いお母さんが正規で働いてくれていて、しかもアキュラが普通の子だったからいいものの、これが専業主婦で下の子が医学部なんてことになっていたら大変だ。どんなに頭が良くても経済的に医学部には進学させられないということもある。

 大昔の考え方では、女性は23〜24歳、男性は27〜28歳(適齢期)までに結婚しておきたいというのが結婚適齢期だ。その通りにすると4年おきに3人の子を儲けても定年退職のころには全員が社会人になっている。定年間際の、一番給料の多い数年の収入は全部自分のものだ。老後の蓄えとして残しておくことができる。
 そもそも60歳定年制というのも、そうした昔のライフスタイルを前提としたものかもしれないね。しかし現代、4年制大学を卒業して社会にでるとそれだけでもう22〜23歳。短大や専門学校を卒業して20歳で社会人になっても昔の“適齢期”に結婚するのはたやすいことではない。

(11) この人と思ったら迷わず結婚しなさい。

 チャンスは頭の後ろが禿げているという。通り過ぎたあとで後ろから手を伸ばしても掴めないという意味だ。だから「この人だ!」と思ったら迷わず結婚しなさい。ほかのことはあとからでも何とでもなる。学生結婚だっていい。
 え? 結婚したあとでもっと素敵な人が出てきたら困るって?
――そんなことはない。
「くじ引きの確率」って勉強したろう? 「アタリ」に出会う確率は早くても遅くても同じだ。
 しかも商店街のくじ引きと違って、出た(出会った)アタリくじはもう他人のものということもある。基本的に後ろに行けば行くほど、“アタリ”の出る確率は同じでも“他人のモノ”である可能性は高くなる。だからその頃になると、多くの女性はこんなふうに嘆くのだ。
「素敵な男性はみんな結婚している――」
 しかしそれも違う。
 そのほとんどは結婚してから素敵になったんだ。すばらしい女性たちが良い素材を得て、それを育てたってことだな。
 きっとシーナにもそれができる、いい素材さえ逃さなければ。

(12) バツイチはモテるだろう?

 早く結婚することの有利さは他にもある。
「この人だ!」と思って結婚してもそれがダメでどうにもこうにも合わない、そういうことだってある。今の時代だから離婚のハードルも低い。
 そうなったら仕方がない、24歳で結婚して3年で破局して、さらに3年かかって傷心を癒やし、再び結婚戦線に戻る――するとホラ、お前はまだ30歳だ。
 ライバルの中には、まだスタートラインにさえついていない人もたくさんいる。十分に勝負ができる。それにバツイチはむしろモテるくらいだ。
 

(13) 同棲は許さない。同棲するくらいなら結婚しなさい。

 そりゃあ同棲すれば経済的に楽だなんて、父は百も承知だ。テレビだって冷蔵庫だって洗濯機だってひとつで済む。家賃も半額だ。
 しかしそうやって生活が充足してしまうと、それでいつ結婚するんだ? だらしなくなるのは目に見えているだろ。
 便利に生きるための結婚適齢期というものがある、そして女性には出産適齢期というのもある、そう考えると無駄に時を過ごす意味はない。
 同棲は許さない。同棲するくらいなら、むしろ結婚しなさい。

(14) お前は母親に向いている。

 結婚をするというのは生まれ変わることだ。生きなおすことだと言ってもいい。
 そして親になり、親であり続けるということは、子の成長に合わせて、繰り返し繰り返し何度でも生まれ変わることだ。それは人生の中でもっとも素晴らしくてダイナミックなできごとで、簡単に捨てていいものではない。
 もちろんお前が偉大な芸術家だったり政治家だったりすれば親になるよりも先にやらなければならないことがある。それに人類や世界のためにやるべきことがあれば、個人の幸せなど犠牲にしなくてはならない。けれど、たぶん、お前はそこまでの子ではない。それに、
 おそらく、お前は母親に向いているよ。

(この稿、終了)