カイト・カフェ

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「大腸の イボひとつ採り 夏の果て」~高齢者の日常とは身体に耳をそばだてること③

 大腸のポリープをひとつ採ってきた。
 2年前の取り残しだという。
 何かすっきりしないが、そういうものだろう。
 同じ時期、友人のひとりは大腸がんを摘出した。
 という話。(写真:フォトAC)

【大腸のポリープをひとつ取ってきた】

 一昨日、睡眠時無呼吸症候群SAS)に関する二日目のブログ記事を書きながら、ちょっと気の重いことがありました。それは翌日(つまり昨日)に迫っていた大腸ポリープの手術のためです。大腸ポリープの除去手術は2年前にもやっており怖いとかはなかったのですが、前日からの食事制限や、当日、ゲップが出るほどの下剤を飲んでそのあとトイレに何度も行かなければならないことが――健康ならしなくて済むだけに面倒くさかったのです。

 1月の末の人間ドックで引っ掛かかり、その翌週、専門医を受診しお話はしました。2年前に手術をしてくれた同じ医師です。

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 3年たったらまたおいでと言われたのに、1年半で来ることになったというと、多少面倒くさそうな感じで、
「出ちゃいましたか。もう少しもつと思ったんですけどねぇ」
と言い、
「どうせ診たところで1ミリ~2ミリだと思うんですけどね」
――この「どうせ1ミリ~2ミリ」には、“検査したところで手術という話にはならず、1~2年様子を見て再検査にしましょうという話になるに違いない(面倒ですね)”と言った含みがあります、と以前のブログではそんなふうにも書きました。
「どうします? 5月くらいに検査します?」
 1月末の異常を5月まで待って検査という悠長を、不慣れな人は理解できないかもしれません。しかし相手は専門医、こちらは四半世紀以上の経験を持つセミプロ級の元がん患者、
「はい、お願いします」
の一言は阿吽の呼吸で返されます。ところが「どうせ1ミリ~2ミリ」はそれですまなかったのです。

【大きなヤツが見つかる】

 5月末の大腸検査では直径1センチ近い、かなり大きなポリープが見つかります。形状はまさにイボで、首が座らずにペタッと倒れて水で洗うとくねくねと揺れるさまはけっこう“可愛い”ものです。
 ここでいつも思うのは、
《大した作業じゃないのだから、なぜ今、ここで採らないんだ?》
です。一度やったことがあるので分かるのですが、内視鏡の先端からそれこそ絞首ロープそっくりなワイヤを出し、それをイボにひっかけて首を絞めるように絞って電気を流すと、簡単に切除できてしまうのです。
 胃検診のときは、「検査の過程で異状が発見された場合、組織を採取してもかまいません」といった書類にサインして、実際に今年は組織採取があったのに、なぜ大腸ポリープはダメなのか――うんざりするほどの下剤を二度ものんで、水様便と戦うことを考えるとかなり不思議に思います。
 しかも医師は、
「あ、これ大きいね、ここまで大きいと新しいものではなく、2年前の取り残しですね。すみません」

 取り残したのに「すみません」と軽く言う潔さに負けて引き下がりましたが、2年前の手術の、さらに遡ること2年前、最初にポリープを発見してしかし除去を先延ばしすることに決めた当時の女医は、ポリープの数を「3個」と言ったのです。その2年後、手術をやってくれた現在の主治医は「2個」と言って実際に2個しか採りませんでした。しかも2個のうちの1個は、
「彼女すごいな、よくこれを見つけたな」
と感心するほど、2年たってもかなり小さなものだったようで、そうなると今回見つかったポリープは2年前でもさらに小さかったのかもしれません。

【多少不安になった】

 いずれにしろ軽々と「すみません」というのは、よくあることだからなのでしょう。文句を言っても通らない範囲のことのように感じました。その上で――、
「これだけ大きいと取った方がいいでしょう。4年~5年と経つうちにがんになるということもありますから」
 ほー、このサイズのポリープの危険度はその程度のものなのか。
「8月か9月、そのあたりに何か予定はありますか?」
「8月の末に息子の結婚式があります」
「それはおめでとうございます。では9月の中頃ということで――」
「それで大丈夫ですか」
「大丈夫です。これががんにならないことは、私が100%保証します」

 やたらと医者が訴えられる昨今、それにもかかわらず「100%保証する」と言われたら従うしかありません。それで昨日の手術となったわけです。

 手術は、大腸の襞が柔らかすぎてなかなか先へ進まない内視鏡と医師が格闘し、襞の持ち主の私が苦しみ、看護師が外部から腹を手で押して誘導するという悪戦苦闘の上で何とか無事に終わりました。
 そのあと医師の説明を受けたのですが、
「今、見ていただいた通り、無事、採ることができました。採ったポリープですが――」
 そう言って取り出した小さな試験管の先の、ピンクの肉片を見ながら、
「顕微鏡を使って一カ月ほどかけてがんかどうかを調べ、お知らせします」
 私は内心、
《あれ?”100%保証します”と、なにかニュアンス違っていない?》
 そう思いましたが、敢えて疑念を口にしませんでした。何かすっきりしませんが、これまでもそうした生き方をしてきて、うまくいってきたのですからこれでいいでしょう。それに突然死は困りますが、がんで死ぬのはむしろ本望です。

 ところで私が検査を受けた同じ5月末、一か月おきに飲み会を開いている仲間の一人が同じように大腸の検査を受け、そのわずか2週間後にS字状結腸のがんの摘出手術を受けました。内視鏡で見たらすぐにがんと分かったのでしょう。それはそれですごいことだと思いました。