カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「一晩に132回、最長5分39秒に渡って、私は呼吸をしていない」~高齢者の日常とは身体に耳をそばだてること②

 夜中に何度も目を覚ます。
 もしかしたら睡眠時無呼吸症候群のためかもしれない。
 そう思って検査を受けたら、一晩に132回、最長5分39秒に渡って、
 私は呼吸をしていないことが分かった――。
 という話。
(写真:フォトAC)

睡眠時無呼吸症候群SAS)】

 睡眠時無呼吸症候群SAS)というのは睡眠中に何度も呼吸が止まる病気です。昔は泊を伴う宴会などで、先に眠ってしまった人が迷惑なほど大きないびきをかいていたと思ったら突然とまり、「あれ? このひと息してないんじゃない? 死んだのか?」と不安が一気に高まったところで、異常に大きなため息とともに息を吐き出したり、音を立てて吸い込んだりした“あれ”です。
 妻は私の無呼吸を1~2分と表現しましたが、2分も止まっていたら周囲はうろたえて声をかけるはずですから、主観的な時間が1~2分だったというだけで、実際には十数秒といったところでしょう(この件については後でもう一度触れます)。
 
 実は健康な人でもこうした無呼吸や呼吸量の極端に減る低呼吸は頻繁にみられるみたいで、たびたび止まっても1時間当たり5回未満だと「正常」と判断されるようです。それが5回以上15回未満だと軽度、15回以上30回未満で中等症、30回以上が重症で、ここまで至ると積極的な治療が必要になるみたいです。
 
 重症と言っても寝ている最中に呼吸が止まって、そのまま「朝起きたら隣りに死体が転がっている」といった、昨日書いたような事態はめったに起こらないようです。しかし血液中の酸素が欠乏することによって心臓や脳・血管に負担がかかり、脳卒中狭心症心筋梗塞などのリスクが高まるそうですから侮れません。
 前回私がこの検査をしたのは、心拍数の異常に多いことをSASで説明できるのではないかと考えたかららしいのですが、その他、高血圧症や糖尿病などさまざまな持病への悪影響も考えられるので慎重に扱いところです。
 
 SASの原因としては、呼吸に関わるさまざま部位(鼻孔や喉)が形質的な問題を抱えて息が通りにくくなっている場合と、呼吸をつかさどる中枢神経の異常によるものがあるらしく、前者を閉塞性SAS、後者を中枢性SASと分けるみたいです。
 前者の原因としては肥満や小さすぎる顎、舌の根元が喉に落ち込む舌根沈下、飲酒や睡眠薬の使用などがあげられ、鼻炎などによる鼻づまりやそもそも鼻孔が小さすぎるという場合もあるようです。後者はまだ原因がよく分かっていません。

【持続陽圧呼吸療法(CPAP:シーパップ)】

 治療法としては飲酒や睡眠薬の問題なら使用を制限したり、形質の問題なら手術をしたりマウスピースをつかって気道を広げるといったことをしますが、重症の場合は持続陽圧呼吸療法(CPAP)を行うことが多くなります。

 右の写真が治療の様子ですが、このとき使用する人工呼吸器のような装置を一般にシーパップと呼ぶことが多いみたいです。呼吸が止まっても強制的に肺に空気を送り、低酸素とならないようにする治療法で、これによって寝覚めもすっきりし、交通事故や会議中に寝てしまう危険も避けられます。

 私の弟もやっていますし、義兄もやっています。爆笑問題太田光・光代夫妻が夫婦でシーパップを行っていることも知られていて、意外と多くの人たちが行っているのかもしれません。
 
 使用に際してはポリソムノグラフィー(PSG)という検査を行って重症と判断されない限り、保険の適用対象となりません。通常は一泊ないしは二泊の入院が必要だそうです。
 私の場合は2年前と同様、まずは「簡易型アプノモニター」と呼ばれる装置で検査を行うことになりました。これは鼻に酸素を送るときの透明パイプのようなものとパルスオキシメーターに似た指先につける装置を組み合わせたもので、眠っている最中の呼吸の様子と血中酸素濃度を同時に記録するものです。
 病院で貸し出され、自宅で寝る前に体につけてスイッチを入れ、翌朝外します。同じことを二晩行って、病院に届けました。そのあと1週間ほどで分析が終わると言われました。

【さて私の場合は】

 返ってきた結果がこれです。

 1時間当たりの無呼吸・低呼吸回数は20・5回、中等症ということになります。単純な判断ではシーパップが保険適用にならない範囲です。さらに1泊でPSG検査を受ければ適用条件に当てはまる可能性もあるかもしれませんが、2年前とほぼ同じ結果ですのでそこまでやる気持ちはありません。もともと睡眠時間の少ないショートスリーパーですから、昼間眠くて困るということもありません。
 
 ただし、検査結果を細かく見ると、およそ6時間の睡眠時間中に無呼吸・低呼吸が132回(無呼吸98回、低呼吸34回)、最長は339秒、つまり5分39秒に渡って呼吸を止めているわけです。私は先に「2分も止まっていたら周囲はうろたえて声をかけるはず」と書きましたが、大いびきをかいて寝ていた酔っぱらいの息が突然とまって2分も経てば周囲は驚きますが、静かに寝息を立てていた人の息が5分に渡って途絶えても、あまり気づかれないのかもしれません。したがって潜在的な患者はもっとたくさんいるのかもしれません。

 さらに血中酸素濃度95%以下の時間帯が全体の82・5%にも及ぶことが、大きな問題でしょう。通常は血中酸素濃度が93%を切れば酸素吸入の必要を考え、90%を切ると命の危険があると言われていますから穏やかではありません。
 告白ついでに言うと上の画像は1日目の検査結果であって、2日目の無呼吸・低呼吸は回数こそ133回とほぼ同じながら、睡眠時間が30分ほど短かったので1時間当たりは23・1回。最長はなんと9分24秒にも渡って息をしていなかったのです。
 それでも中等症でこれといった治療はしない――まさにこれからも、「高齢者の日常とは身体に耳をそばだてること」なのです。
(この稿、続く)