カイト・カフェ

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「卑しい系の人々」~自分の高給与・高待遇を棚に上げて、公務員を羨ましがるメディアの不思議な人たち

 こんなことでメゲていてどうする、と思うのですが先週からずっと続いている舛添東京都知事の問題、こんな人が大学教授をやって参議院議員をやって、東京都知事になって、いっぱしのオピニオンリーダーみたいな顔をしてマスメディアを闊歩していたかと思うと、怒りがこみ上げる前に膝が萎えます(ヤッテ ラレネェ)。
 先週のメディアの取り上げ方はどれも「セコイ」「やりすぎ」「上から目線」。これですれすれながら法律に抵触せず、東京都の規模から考えるとリコールもできないとなると本当に切ない、情けない。正月の家族旅行の部屋だが、人を集めて話をしていたから会議だといった説明も、それもまた卑しい。

 そりゃあ身分も立場も違うとはいえ、教員などは生徒の万引き指導で土日全部を潰したって一銭も出ない。校長が気の毒がって「交通費は請求していいんだから、生徒の自宅や店を行き来した分くらいは事務に出しなさい」とか言ってくれるものの、二日走り回って手元に渡されるのが交通費540円だけだったりするとかえって惨めになる。
 ここで請求しないと「だから教師はバカなんだ」と言われ、うっかりすると「バカ高い給与もらっているからそれぽっち苦にならないんだよな」とか根拠のない中傷をされたりすることは分かっていても、腹が立つので請求しない。
 そうした生活をしてきた私から見ると、2000万円以上の年収があってその他副収入も山ほどあるこの男が、そんなセコイことをして地道に(というのも変ですが)金を稼いでいたかと思うと本当に情けない、気が挫けます。同じ公務員でもこうも違うのか・・・。

 そう思ってひとりでだらけていたら昨日の朝刊に「週刊現代」の広告が載っていて、
「役人だけが幸せな国」
 
就職するなら公務員。高い給与と退職金・年金、休み放題、充実の福利厚生、そして仕事の責任は問われません。
・民間はヒーヒー言っているのに血税ラクちん人生を満喫する公務員たち ・「財政赤字だから増税」と国民を脅す一方で、役人はいつの間にか自分たちの給料だけ上げていました。
・「年金」充実で公務員の老後だけは安泰です 掛け金が少なくて、支給額が多い。
・休日は民間の倍 ああ幸せ!こんなに休んでこんなに福利厚生 ・リストラなし、役職定年もなし、痴漢で捕まってもクビになりません
・アロハにビーチサンダルでもOK クールビズに産休・育休取り放題 「最高だよ、公務員は」
 まだまだあるのですが写すだけで気分が悪くなるのでこれくらいにしておきます。

 もちろん見出しを読んだだけであれこれ言うのはフェアではないのですが、買って読んでさらにイライラするのも健康に良くないし、その代金が「週刊現代」に行くのも面白くない――何かひどいジレンマです。

 年休の2割も消化できなかった私からすると、これで休み放題の誹りを受けるなら民間はどうなってるんだと首を傾げざるをえない。
 高い給与と退職金・年金、掛け金が少なくて、支給額が多い、仕事の責任は問われません、痴漢で捕まってもクビになりません てほんとうか?
 酒気帯び運転の基準値に達しない値でも懲戒免職、痴漢はもちろん無条件で懲戒免職、万引きを含めた刑事事件で懲戒免職、というのは私の周辺だけのことなのだろうか。
 役職定年なしというのはどのレベルからなのか、何%の公務員がその恩恵に与っているのか――。
 そのいちいちに反論していたらきりがないので給与と退職金についてだけ調べます。
 対照するのは地方公務員としてもっとも給与の高い東京都と、民間からは「週刊現代」の発行元の講談社です。

 東京都の職員の平均年収は710万2564円(ちなみに全国最低の沖縄県は583万9668円)
 全職種の退職金(60歳定年退職者)2388.6万円
 それに対して、講談社の平均年収は1085万円退職金は6000万円超と言われています。
 これで民間はヒーヒー言っていると主張する講談社の社員は、いったいどれだけ金を使いたいんだ?

 もっとも東京都職員の給与は公表されているのに対し、講談社の平均給与や退職金は開示されたものではないのでウソがあるかもしれません。本当は東京都職員の半分以下でヒーヒー言っている、そんな可能性もあります。そこで講談社自身が公開している新規採用者の募集要項で比較します。

 ちなみに東京都職員の新卒募集要項によると4年制大学新卒職員の初任給は217400円、その他の労働条件は以下のとおりです。
 この初任給のほか、扶養手当、住居手当、通勤手当及び実績に応じ超過勤務手当や休日給、仕事の性質により特殊勤務手当が支給されます。また、職員の在職期間に応じて期末手当、勤務成績に応じて勤勉手当が年間おおむね4.30月分(4月採用の場合はおおむね 3.18月分)支給されます。
 休暇には、1年間に20日(4月1日採用の場合は15日)付与される年次有給休暇をはじめとして、妊娠・出産を支援する休暇(妊娠出産休暇、出産支援休暇、ほか)、仕事と育児・介護の両立を支援する休暇(育児参加休暇、介護休暇、短期の介護休暇、ほか)、慶弔休暇、夏季休暇などがあります。

 一方、講談社の新規採用者(4年生大学新卒者)はリクナビによると、  月給:258260円(本給月額)です。
 諸手当 時間外勤務手当、通勤手当、扶養親族手当、社保手当 など
 昇給 年1回   賞与 年2回
 休日休暇 土曜日・日曜日、祝日、年末年始7日、年次有給休暇、産前産後休暇、妊娠休暇、夏休み、育児休暇、介護休暇、報奨休暇など
 保険 健康保険・厚生年金保険・雇用保険労災保険  福利厚生 住宅資金貸与、家賃補助、教育資金貸与、介護資金貸与など

 講談社の賞与はいくらか分からないのですが、入社3年目で6.7か月分だそうですから、それに準じて想像するしかないでしょう。
 ついでですが、勤務時間は平日9:30〜17:30だそうで、8時30分始まりの普通の職種に比べるととりあえず1時間少ない。にもかかわらず残業手当もきちんとつきます(みなし残業で40時間分のみ)。
 部門によりフレックスタイム制裁量労働制もありとも書いてありましたからかなり自由のきく部門もあるわけです。

 さてここまで確認して、もう一度「週刊現代」今週号の見出しを読み直します。

 他人の給与や待遇を調べて妬んだり羨んだりするのは卑しい人間のすることです。もちろんここまで調べてきた私も卑しい系です。
 しかし同じ卑しい系でも講談社の人たち、自分の高収入好条件を棚に上げて公務員を羨ましがる――何を考えているのだろう。今度は本格的に心配になってきたりするから不思議です。