カイト・カフェ

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「どう考えても学校はやっていけない。部活から捨てるしかない」~国の政策をどのように変えさせるか、本気で考えてみた⑤

 考えてみたらそもそも日本は世界で最も公務員の少ない国なのだ。
 そのくせ自助共助の仕組みはどんどん潰してしまう。
 教員がますます苦しくなるのは目に見えている。
 もうこうなったら、大切なものでもどんどん捨ててしまおう。
 という話。(写真:フォトAC)

【世界で最も公務員の少ない国】

 日本は世界で最も公務員の少ない国のひとつです(日本はOECD諸国内で一番公務員比率が低い…公務員数が多いか少ないかの実情)。
 日本の公務員が優秀で効率的という面もあるでしょうし、日本人全体の被統治能力(ガバナビリティ=合理的に権力に従う力)が高いからとも考えられます。しかし諸外国ならとうぜん国や地方自治体にやってもらえることが、この国ではやってもらえないという面もあるのかもしれません。
 
 例えば行政の末端を担う町内会とか隣組とかはどうでしょう? あれは行政の至らない部分を補うための組織ではありませんか? 学校の不十分な部分を補うPTAという名の保護者会とか、消防署の不足を補完しようとする消防団だとか、そういうボランティア組織はどこの国にもあるものなのでしょうか? 日本人はボランティア精神に欠けるという指摘もありますが、私にはそうは思えないのです。
 
 もっともこの国のマスコミは政府がボランティアに頼ることには否定的で、町内会もPTAも最低限の範囲にとどめ、あとは行政が行うべきだと主張して止みません。もちろんだからと言って政府の肥大化と増税に賛成する様子もありませんから、公務員の仕事は増える一方です。

【仕事を放棄した先駆者たち】

 この点で警察はある程度うまくやりました。すでに平成の始まりの段階(1989)で、事実上「もう自転車盗や傘泥棒には対処しません。行方不明も届けは受理しますが犯罪の匂いのしない限り探しません」と宣言して検挙率を大いに下げ、しかし代わりに殺人だの強盗だのといった重大犯罪には人数や時間をかけるようにしたのです。
 昔のお巡りさんのように意味のもなくパトロールをして顔を売ったり、夫婦喧嘩の仲裁に入ったり、といったこともなくなりましたが、それで非難されるわけはありません。
 
 国家公務員も、数を増やさないと国の規模や役割に合わせた大きな事業はできないのですが、敢えてそこは民間企業を使うことで凌ぐようにしてきました。オリンピックだのマイナンバー事業だのといったイベントではやたら「電通」が出てきて私たちを苛立たせますが、官民癒着がいやなら電通に匹敵する数の公務員を用意しておけばいいだけのこと、しかしいまさらそんなわけにはいかないでしょう。
 
 警察や中央省庁はそこまでやってもなお人手不足ですが、教員は逆にこの数十年間、仕事を増やしに増やし続けました。いま棄てるべきものを棄てないと全体がつぶれてしまいます。

【東京都大田区の深謀遠慮】

 私は「部活の地域移行はうまく行かない、結局は学校に戻ってきてしまう」と思っていました。しかし善意ではなく悪意をもって考え直すと「地域移行はうまく行かない」にしても「学校にも戻らない」ということも可能ではないかと思うようになっています。

 例えば先日、東京都大田区は平成5年度任用の部活指導員(会計年度任用職員)の募集を始めました。
大田区ホームページ:令和4年度 部活動指導員(会計年度任用職員)を募集します。

 条件は、
・ 週5日、1日4時間勤務(休憩時間なし)但し、週休日は平日で1日、土日で1日の計2日。
・ 報酬 月額 200,923円
・ 期末手当、通勤手当相当額、超過勤務手当あり。各種福利厚生あり。
・ 種目はバドミントン、サッカー、卓球、チアリーディング、バスケットボール、ソフトテニス、剣道、吹奏楽
募集人数は9名ほどです。

 現職の教員が休日に部活動を行っても4000円(しかも4時間以上やった場合のみ)にしかならないというのに週給二日1日4時間勤務で20万円も出すとは何事だとか、東京都の指導員は時給1416円で月に4~5回しかないぞとか、20万円でもたった9人でどうするとか、あるいはどうせ会計年度職員(1年契約)でしょとか、いろいろ意見はありますが、現在「時給1416円で月に4~5回」の人も含めて、応募者はけっこういるはずです。相当に優秀な人材が集まってくる可能性もあります。
 そうした人材が1日4時間、週に5日も指導してくれるわけですから、チームとして強くならないはずがありません。ならなかったら翌年ひとを代えればいいだけのことです。すると次に起こるのが部員の移動です。

【部活動撲滅は可能である】

 部活動の地域移行は学校と1対1の関係ではありません。A中学のサッカー部が地域に移行すれば、サッカー部のないB中学校はもちろん、弱小のC中からも、十分な練習場所のないD中学校からも生徒が参加することができます。その結果C中・D中のサッカー部がつぶれても仕方ありません、というよりも望むところです。
 やがて元A中の地域部活は肥大化します。人気チームですからとうぜんそうなります。内部での選抜が厳しくなり、本気でレギュラーを争う気のある子はまだしも、もともとそこまで熱心ではなかった子や力不足を自覚した子は、やがて地域部活を辞めていきます。学校の別の部に戻る子もいるでしょうが、他の部では出遅れになりますからそのまま帰宅部になる子も少なくありません。私はそこがポイントだと思っています。
 
 現在、中学校の部活加入率は1・2年生で90%前後もあります。残りの10%もただふらふらしているわけではなく、何らかの目的があって学習塾に行ったりピアノだとかバレエだとか特別な習い事に専心している子たちです。それが上記のような事情で帰宅部が増え、その割合が1割~2割となると、部活の加入率は一気に下がってきます。
 真正帰宅部が0%みたいな時代は家に帰っても遊んでくれる子がいませんでしたが、辞める部員の数が1割~2割となれば、帰宅部が半分近くまで落ちるのはあっという間かもしれません。もともとスポーツや芸術に向いていない子なんていくらでもいたのです。中高生も小学生のように、家に帰ってから再び集まって一緒にゲームをしたり、街に出たり、けっこう楽しく有意義に遊んでくれるかもしれません。こうして部活はどんどん減っていきます。
 (この稿、続く)