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「部活を学校に残す、給特法も悪くない」~少子高齢化が教員の働き方改革を阻害する⑤

 部活の地域完全移行を宣言する自治体が次々と出てきた。
 しかし都会はまだしも、人もなく金もない田舎町で何ができるのか――。
 部活は時間をかけて小出しに校外に出し、
 貰えぬ残業代よりも確実な調整額。特典もあるしね。
という話。(写真:フォトAC)

【部活の地域移行:拍車はかかるが馬は走るか?】

 一昨日(6月19日)の朝日新聞デジタル
「神戸市、平日の中学部活動も地域移行へ 方針公表、2026年度から」という記事が出ていました。ただし私は、部活の地域移行について過去20年にわたる失敗の現場にいましたので、生徒・保護者・学校、そして地域および各種団体がいちおう満足して納得できるような組織ができるかどうか、非常に懐疑的です。
 もっとも神戸市は私の住む地方都市とは比べ物にならないほどの巨大でしかも面積はこじんまりしていますから、地域のクラブチームも多種・大量にあって対応可能なのかもしれません。何となくお金持ちが多そうですから、費用の面でも問題はないのかもしれません。

 ただし神戸市に先んじて2022年に、静岡県掛川市とともに全国にさきがけて平日を含めた部活動の地域移行を決めた山口県周南市は、2月末に始まった市議会でも、
各会派は保護者が理解していない、中山間地域への対応、指導者の報酬、保護者の負担増、土日のみ移行する市が多い中なぜ平日もするのか、などをただしたが、答弁は「専門部会で検討中」が目立ち、大半は有意義な回答を得られなかった。2024.03.01日刊新周南電子版
といった具合で、決定から2年近く経った今でも細部が詰められて行かない様子がうかがえます。保護者も、
ある保護者からは「学校から活動場所までの送迎が必要になった場合、仕事を抜けての送り迎えが現実的に難しい」、「現状でも希望の部活がない場合、地域のクラブチームで活動できるのに、なぜ必要なのか」と疑問の声もあがっている。(同上)
とそんな調子で、まだ漠然と疑問を述べるだけで賛成も反対もできない段階。これが具体的な計画となった時どういう反応が現れるのか――私はかなり意地悪な気持ちで楽しみにしています。
 大阪市給食費を無償にしたらおかずが激減してしまったみたいに、あるいは小学校から英語を教えられた子どもたちが中学生で英語の成績を下げてしまったみたいに、思い切った改革が子どもや保護者・教員の不幸を生み出す例も少なくないのです。

【一気に外に出すのではなく、現実的なのは学校に留め置くこと】

 学校の大きな変革には時間がかかるのです。
 学校五日制も、月一回の土曜休みから月二回の時期を経て、完全な形になるまで3年もかかりました。放課後児童クラブの事業が軌道に乗って土曜日に親が家にいない家庭の子どもを全員預かる体制ができ、社会の週休二日制が行き届いて土曜日の児童クラブの重要性少なくなるまでに、長い時間がかかったのです。
 五日制でさえこの有様ですから、部活動の地域移行など20年~30年かかってもできるかどうかわからない大仕事です(実際に20年前から始めていまだにとば口)。

 現実的な話としては中学校も小学校の部活動を参考にして、顧問をやってくれる先生には校務分掌も極端に減らし、できれば学級担任もさせず、部活手当を厚くして「これなら顧問をやってもいな」と思えるほどの条件を揃える、そうしている間に各校の少子化が進み、野球部やサッカー部のような人数の必要な部活が成り立たなくなれば1校ごとの部活数は自然減。必要な顧問の数も減って行きます。
 スポーツ庁の考えた部活動の地域移行は教員の負担軽減よりも、少子化によって部活動が成り立たなくなった競技にも生徒を参加させたい(優秀な子に続けさせたい)というのが主目的ですから、地域に参加しやすいクラブチームができれば学校も自校の部活を潰しやすくなります。すると学校単位の部活動はさらに数が減るはずです。ただしゼロにはならない。

 中学に進んだら野球部に入ろうと思っていたのに野球部がなくなった――その場合、その子と家族はどういうするかというと、よほど家族で少年野球(小学生の野球クラブ)に打ち込んでいない限り、学校の友だちから離れ、しかも親が送り迎えするという犠牲を払ってまでも野球にこだわりはしないでしょう。ほとんどが放課後、学校に引き続き留まってできる部活に参加するはずです。その意味でも校内に残った部活は簡単にはなくなりません。それも仕方がない。
 クラブチームは民間をあてにしないで教委がつくり、時間をかけて移行するとともに、校内の部活は自然減に任せる、それが今考えられる、最も穏やかで現実的な地域移行だと私は思います。

【残業代はダメだが調整額は退職金に反映するよ】

 先週から今週にかけて部活動の地域移行や残業代の問題を考えてきたのですがそれに関連して、今週火曜日(18日)の東京新聞「教員給与上乗せ10%以上明記へ 骨太方針、教科担任拡大も」という記事が出ていました。財務省は「そんなもの出せるか!」という態度でしたが、やはり水面下では了承済みの話だったようです。
 
 私はこれで良かったと思っています。残業代にこだわっても財務省は絶対に認めないでしょうし、万が一認めたとしても朝三暮四、今回の「10%以上」に相当する金額を「残業代予算」だと言って渡し、それでやり繰りさせればいいだけのことです。何しろ財務省文科省も、100時間以上の時間外労働をしても50時間しか認めないというやり方を自分たちの課していますから、それと同じことを教員にもやらせるに違いありません。教員は官僚と違って残業代の出る分しか働かない、仕事が残っていても置き去りにできるというなら別ですが、そうだったら最初から時間外労働8時間で切り上げれば良かっただけです。でもそんなこと、しませんよね?
 
 しかも満額出してもらえないその程度の「残業代予算」を巡って、管理職と一般教員が、あるいは一般の教員同士が疑心暗鬼になったり対立したりするのはかないません。
 現役の学級担任だったころの私は子育ても忙しく、山ほどの仕事を持ち帰りにして定時退勤するのが常でした。残業手当が創設されるとあれほど頑張っていた私が一銭の残業代も貰えず、逆に4%の調整額を失うわけです。そんなことを我慢できるはずもなく、たくさん残業代を貰っていそうな同僚の働きぶりには自然と厳しい目が行きそうです。それも耐えがたい。
 
 ところであまり意識されませんが、教職調整額には「一般公務員より4%」高い給料という以上の魅力があります。それは「退職金額の算定基準の中に調整額が含まれる」ということです。残業代は「諸手当」に属しますからいくらもらっても退職金に反映しませんが、調整額は手当ではないので本給に合算して退職金の算出基準になるわけです。それが10%以上――けっこうおいしい話かも知れません(ただし管理職にならないのが条件ですがね。管理職は調整額をもらっていませんから)。
参考】
 「東京都公立小中学校事務職員会『第 1 回学校事務研究会 【退職手当説明資料】』」
 (この稿、終了)