カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「日本が汚れる」③〜テレビ、洗濯機、高級時計

 イタリアに旅行した初日、ホテルを案内してくれた現地日本人スタッフが部屋の使い方を一通り説明した後で「テレビはこのリモコンで・・・」とスイッチを押して見せたのですがなかなか画面が立ち上がらない。その間10秒とはかからなかったと思うのですが日本の感覚に慣れた私たちにはずいぶん長い時間でした。
「イタリアですから(万事のんびりしている)」とその人は言いましたが、イタリアとは言え電波や電気までゆったりと動いているはずはありません。近寄ってみるとそれは「○A○S○N社」製のテレビでした。
 こんなもんに負けて日本のメーカーが苦境に立たされているかと思うと腹が立ちました。

 私の妻は二槽式洗濯機こそエコでしかもきれいに洗えると信じて疑いません。そこで10年ほど全自動洗濯機を使ってから二槽式に戻し、かれこれ10年ほどになります。その二槽式もついに壊れてしまい、今日の洗濯に困って家電量販店に走ったのです。ところが困ったことに、全自動なら在庫はいくらでもあるのに二槽式となるとすべて取り寄せになってしまいます。そんなものを買う人は稀ですから置いておくだけ損なのでしょう。しかしこちらは“今日”に困っているわけで、あちこち駆け回ってついにホームセンターで即日配達の一台を見つけました。「◯宇社」製、値段も極めて手頃でした。

 さっそく届けてもらって設置し、動かそうとして重大な問題に直面します。アラームがついていないのです。洗濯が終わってもブザーが鳴らない。全自動なら大して問題にならないところですが二槽式となるとそうはいきません。すすぎ洗いが終わっても気づかないわけですから水が出しっぱなしになってしまいます。これではエコでなんでもありません。
 さらに問題が発生します。妻が洗濯している最中、歯磨きをしていた私は突然背中に水を浴びせられてびっくりします。少量洗いで水の少なかった洗濯槽から、渦になった水の一部が飛び出してきて周囲を水浸しにしているのです。そんな洗濯機、聞いたことがありません。
 しばらくすると飛び出しは収まりましたが、適切な洗濯物と水量のバランスは目分量で決めなくてはなりません。と、そうこうしているうちに脱水槽が首を振りはじめ、ついには何も入れてない状態でも回転筒が周囲にぶち当たって激しい音を立てるようになりました。
 修理してもアラームと水の飛び出し問題は残りますから結局あきらめるしかありません。わずか一か月で今度は慎重に選び、国産のものに買い換えました
 日本は白物家電でも世界の中心の座を明け渡してしまっています。しかしこんな洗濯機に席巻(石鹸のダジャレではない)されたのは、いかにも悔しいことです。

 これはマーケティングの失敗で、だから日本はだめなのだという評価があります。“ガラパゴス論”です。日本製品は国内で特殊な進化を続けてしまった、したがって国際的には全く通用しない。特に貧しい国々は高性能ではなく、多少機能を外しても安価なものを求めている。それに合わせてこなかったメーカーはだから負けるのだと。
 しかしあんなレベルのテレビや洗濯機と同じ勝負をしてどうなるのでしょう。すでに陳腐化した技術で真っ向から勝負すればあとは低価格競争だけが残り、賃金の高い日本製品は結局勝てないのです。特にこれらの製品でシェアを奪われ続けた時期は、異常な円高と重なりますから絶対に勝てません。同じ負けるなら、あえて低いレベルに下がって勝負することはないのです。そうはおもいませんか?

 (この稿、続く)