カイト・カフェ

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「日本が汚れる」⑥〜詐欺師たちの宴

 ホリエモンこと堀江貴文が私たち素人の目の前に登場したのは、2004年の大阪近鉄バッファローズ買収問題の時でした。
 恐ろしく若い企業家が、美女を引き連れ、ジーパン姿で球場を闊歩するという姿は、新鮮というよりは不快なものでした。傲慢な語り口調も原因ですが、嫉妬もあります。しかし不快感の根本的な理由は、こうした存在に対してどのように振舞ったら良いのかわからない不安があったのです。
 四足の哺乳類だったらライオンでもいいがヘビではかなわない、といった感じです。

 年配であったりスーツを着ていたり、胡散臭くても礼儀正しかったり逆に不遜な感じがしたりと、どれでもいいのです。球団をひとつ買ってオーナーになろうという人物はそれなりの姿をしていなくてはなりません。それなりの人が来てくれればあんな不快感は起らなかったのかもしれません。
 同じことは、「金儲け、悪いことですか? みんなが一所懸命お金を儲けて(略)何が悪いんですか?」と言い放った村上世彰にも言えます。こちらはきちんとスーツを着ていましたが、マスコミ相手にああも挑戦的に言葉を放つ“若造”を私たちは驚きをもって眺めたものでした。

 結局、大阪近鉄バッファローズホリエモンと同じIT長者の「楽天三木谷浩史の手に落ちる(現在の楽天イーグルス)のですが、この時の三木谷が鮮やかだったのはトレードマークの髭をそり落とし、ジーパン姿をやめてスーツにしてしまったことです。私は400年以上前、斎藤道三に会いに行ったときの織田信長のことを思い出したりもしました。
 ソフトバンク孫正義も同じように既存の体制を尊重して見せます。そこがホリエモン村上世彰とは違ったところで、だから二人は生き残ると思ったりもしました。

 それぞれ別の理由で4人とも嫌いなのですが、当時、一部に熱烈に支持する流れがありました。日本にスティーブ・ジョブズビル・ゲイツが出現する可能性を見せたからです。また若者の中には額に汗することなく、コンピューターの前に座って瞬時に数億の金を動かすことこそ有能な人間のやるべき仕事、といった誤解もありましたから、一時は時代の寵児だったのです。
 ただし今から考えると、何やかやと言ってもこの人たちには実力がありました。世に知られるずっと以前から着々と積み上げたものがあったのです。

 それから10年余、中身はスカスカでもはったりやごまかしだけで世界を相手にできると本気で信じる人々が生まれてきました。それも立派な大人です。
 考えてみれば長髪も髭もサングラスも、ムーミンのステッカーも割烹着もみんな怪しいものでした。しかし私たちは信じた。
 マスコミが安易に騙されることはない、メディアの人々は責任ある仕事をしているはずだ、それぞれの主人公たちが堂々とテレビや新聞に顔を出す以上、ウソだったりいい加減だったりするはずがない、そんなふうに思い込んでいたのです。

 時代は、また新しい人間を生み出しつつあります。しかしそれは学校の責任ではないはずです。