昨日、10月29日はインターネットの誕生日。
1969年のこの日、初めてパケット通信の情報が動いた。
誰も考えなかったことだが、それから半世紀以上たって、
世界は連絡を深めるたびに分裂していくじゃないか、
という話。(写真:フォトAC)
【閑話休題:インターネットの誕生日】
うっかりしていましたが昨日10月29日はインターネットの誕生日でした。
何年の10月29日なのか、つまり今、インターネットは何歳なのかということになるのですが、これが驚いたことに55歳。1969年の生まれなのだそうです。今から半世紀以上前の昨日、アメリカのカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)とスタンフォード研究所(SRI)の間で最初のパケット通信が行われ、それがインターネットの始まりとなりました。
そんなに歴史があるのにも関わらず私たちが知らなかったのは、インターネットが軍事用の通信技術として使われていた期間が長かったことと、まだコンピュータが一般的なものでなかったからでしょう。
【インターネットが使い物になるまで】
私が最初のパーソナル・コンピュータ(PC)を買ったのは1983年ごろでしたが、当時のコンピュータは単体で使うものであって、コンピュータ同士を繋いだり通信したりといったことはまったく考えられませんでした。ソフトもほとんど売っておらず、PCは何かをする道具というよりはプログラムを組んで遊ぶオモチャだったのです。
そのオモチャで3年間ほど夢中で遊んだあと、飽きて私はPCを手放します。代わって手にしたのがワープロ専用機で、その後10年間ほどはもっぱらこちらで仕事をしていました。PCは余りにも高価で、未熟で、おまけにプリンターがついていないので(専用機はついていた)とても不便だったのです。
その10年の間に、私の知らないところでインターネットは飛躍的な成長を遂げます。軍事用から商業用に開放され(1990年)、翌年WWW(ワールド・ワイド・ウェブ《世界に広がるクモの巣》)というシステムがつくられ、1995年にWindows95が発売されると、インターネットは急速に身近なものになって行きます。しかしそれでもなお、私はPCには戻っていません。
当時のネットの世界は玉石混交どころか河原石や偽宝石だらけで、「超整理法」の野口悠紀雄さんですら「あんなものは使い物にならん」と言っていたくらいです。私もいつもの癖でバカにして悪口を言っていたのですが、それがわずか1~2年で“使い物になり始め、さすがの私もインターネットの軍門に下って、1999年までには自らのウェブ・サイトまで持つようになっていました。
嬉しかったのです。私にはひとに話したいことが山ほどあって、それを出版だのテレビだのといった面倒な手続きを経ずして世界中に広めることが可能になった、そう思うだけでもウキウキしました。この新しい技術を使って人々は互いを理解し合い、世界はひとつにまとまっていくに違いないと、専門家たちの言うことを鵜呑みにして信じたのです。
まさか情報が多すぎて、個人で対処できなくなる時代が来るとは考えませんでした。
【世界は分かり合えない】
アメリカ大統領選挙はいよいよ目の前に迫ってきましたが、トランプ派とカマラ派では見ている世界が違います。
ドナルド・トランプの熱狂的な支持者の一部は、独自のSNSやBBSでしか交流しませんし、テレビはFOXしか信用しません。ABCなど旧3大ネットワークは、ディープ・ステートと呼ばれる悪魔的エリート集団に支配されているから本当のことは言わないと信じ切っているからです。
一方、カマラ・ハリスの指示者たちが依拠する情報源は、3大ネットワークや大手新聞社など、これまで信じるに足ると考えられてきたメディアです。
「大手マスメディアが言っているから正しい」と信じる人たちと「大手マスメディアが言っているからウソだ」と信じる人たちが対峙し、それぞれ選別された情報しか集まらない(フィルター・バブル)ネット社会で、仲間の声ばかりを聴いている(エコー・チェンバー)。これでは世界の姿がまったく異なって来て、分かり合えなくなるのは当然です。
(この稿、続く)