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「中体連全国大会の規模縮小は教師のためじゃない」~のちのち禍根を残さないよう言うべきことは言っておく①

 全中の規模縮小は教師の負担軽減のためじゃない。
 大会を担う係員・補助員(部活顧問と部員)が足りないからだ。
 それを教師のためだと言われて認めると、
 のちのち何を言われるか分からない、
という話。(写真:フォトAC)

【全中(全国中学校体育大会)19種目から9種目が消える】 

 先週8日の土曜日、日本中学校体育連盟(いわゆる中体連)は全国中学校体育大会(略称:全中)の規模縮小のため、水泳や体操など、現在実施している19競技中9競技を2027年度から取りやめると発表しました。
 取りやめになる競技は、水泳・ハンドボール・体操・新体操・ソフトボール(男子)・相撲・スケート・アイスホッケー・スキーの9競技(スキーに限っては開催地との契約関係から29年度まで実施)。
 残る競技は、陸上・バスケットボール・サッカー・バレーボール・軟式野球ソフトテニス・卓球・バドミントン・柔道・剣道・ソフトボール(女子)の11競技です(ソフトボールは女子が残ったので「取りやめ」と「残留」で二重に数えます)。
 中体連の説明によると、部活動の設置率が20%未満の競技を原則として削減の対象にしたそうです。それに対して教員の働き方改革を求める立場から歓迎の声もありますが、部活動に熱心な立場、特に取りやめとなった競技の部活担当者や競技団体からは競技力の低下を心配する声も上がっています。

【別に教員の負担軽減が理由じゃないだろう】

 新聞等によると取りやめの理由は「少子化」と「教員の負担軽減」だそうですが、後者の方は取って付けたような理由で、本筋は「少子化」ということでしょう。負担軽減が理由なら「部活動設置率20%未満」などといった基準を設ける必要はなく、全中は一斉にやめてしまうのが筋です。
 さらに言えば、部活動設置率20%未満であっても各都道府県で1校でも残っていれば、その学校が無競争・不戦勝で県代表として出て来ればいいのであって、チーム数が少ないことも理由にはなりません。
 ただし設置率の低い競技の大会は、開催県がかなわないのです。全国大会ともなればレベルの高い審判を試合数分用意しなくてはなりませんし、大会運営役員となると出発係だの招集係だの、あるいは通告係・記録係・会場係・受付係・コンピュータ操作係等々、とんでもない数の人間が必要になります。ド素人では勤まらない係もたくさんありますし、役員同士初対面では動きも悪くなります。そこで県内の部活顧問とチームの生徒を片はし糾合して運営に当たらせるわけですが、1県で数校しかない部活ではその人数が足りなくなるのです。
 
 世の中には中学校でもラグビー部がある学校はありますし、ゴルフ部もあればワンゲルだのアーチェリーだの、あるいはグランドホッケーだの弓道だの、もともと設置率が低すぎて全中大会が開けない競技はかなりあったのです。今回、相撲やハンドボールがその仲間に入ったというだけで、中体連自体が規模を縮小し、部活動を学校から切り離し始めた、といった大きな方針の変更ではないのです。
 ちなみに、こうしたマイナーな部活でも、競技団体を起こして全国大会を実施している競技はいくつもあります。今回取りやめになった競技についても、とりあえず日本相撲連盟(相撲協会ではない)や日本ハンドボール協会が黙っていないでしょう。3年も猶予があるのです。何とかしてくれると思いますし、なんとかしなくてはなりません。中学生ラグビーの全国大会は「太陽生命カップ」と言いますから、これも参考になるでしょう。

【大した問題ではないが慎重に扱いたい】

 今回の「全中から9種目がなくなる」という報道において、ここに記したように、
少子化で部活数が減ったから切り捨てたんじゃない。基本的に開催県の部活顧問と部員だけで運営してきた全国大会が、人数不足でできなくなったのだ」
とか、
「もともと中体連が全国大会をやって来なかった部活は、ゴルフ部だのワンゲル部だの、たくさんあるんだよ」
とか、
「そういったマイナー部活だってこれまで全国大会をやってきた例はあるのだから、取りやめになった部も同じようにすればいいのだ」
とかいった点を丁寧に押さえて発表したマスコミは、私の見る限りひとつもなかったように思います。
 削減の理由は「少子化」と「教員の負担軽減」と説明されると、私たちはすとんと腑に落ちて、それ以上考えなくなってしまいます。両方とも事実としては明々白々のことですから。
 しかし教員の働き方改革や負担軽減の名の下に行われるさまざまなできごとに関して、私たちはもっと慎重でなくてはいけません。今は世の中全体が教員の「働き方改革」や「負担軽減」に同情的ですが、公務員に対する空気など簡単に変わってしまうからです。
 
 表立っては言いませんが、部活動は保護者の既得権益です。それが奪われることに親が素直でいられるはずがありません。去年までは子どもに、なにも考えずスポーツやら芸術やらをやらせ、土日の練習試合や大会に行っては大声で応援していればよかったのを、今年は毎月何千円も払った上に、放課後、子どもを迎えにいってスポーツクラブなどに送り込まなくてはならないのです。ママ友を集めて当番制で送り迎えをしても、四日に一度は年休をとって早退しなくてはならない、夕飯をつくったらまたお迎え、そんなことを1年で300日くらい、3年も続けなくてはならないのです。八つ当たりと承知していても、学校を恨みたくなります。

【今は黙っている人たちが、いつか文句を言い始める】

 もともと学校や教師に批判的な気持ちをもっている人だって少なくありません。
 韓国は今年、オリンピックの選手団を48年ぶりに縮小するそうです。団体球技で出場できるのは女子ハンドボールのみ。サッカーもバスケットボールもバレーボールも全部ダメ。国際スポーツにおける韓国の地位は大きく下がりました。
 原因は少子化と国内スポーツの充実によって若い選手が海外に出なくなったためだと分析されていますが、少子化が一因なら近い将来の日本にも同じことが起こるかもしれません。そのとき、今は黙っている人々が大声でこんなふうに言うかもしれないのです。
「教師を楽にするからといって、部活の全国大会を減らしたのがいけなかったんだ」
「そもそも部活を地域に移行したのが間違いだった」
「専門家といったって学生ボランティアみたいなのばかりで、技術も指導力もなく、2年もやったらどんどん変わって継続的な指導ができなかった」
「どうせオレたちの税金で高い給料をもらってるんだ。部活ぐらいタダで面倒見たってバチは当たらねーだろ」
 
 ゆとり教育の始まったころ、私たちがあんなにも苦労していたのに、
「結局、先生たちにゆとりを与えただけで終わったゆとり教育
みたいな言われ方をしたことを、私は忘れません。
 中体連の全国大会の縮小は、教師の負担軽減とは何のつながりもないことは、はっきり言っておく必要があります。