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「仕事が爆発的に増えても、教員数は絶対に増やせない不思議な仕組み」~教員の働き方改革が進まないわけ④

 新規採用者確保のため、内定時期を前倒ししようと発言して、
 文科大臣が現場教師からバカ扱い、もしくは袋叩きにあっている。
 しかし大臣も気の毒だ。
 今の文科省にできることは、その程度でしかないのだから。

という話。

(写真:フォトAC)

【文科大臣、バカにされる】 

 昨今の教員不足に関して末松文科大臣が、「民間企業が先に内定を出してしまってから、まだ試験をやっているようでは、時代に追い付いていない」
とおっしゃって、大学3年生で1次試験を受け、4年生になってから教員採用の内定を得られる、スケジュールの早期化に意欲を燃やしたそうです。

www.kyobun.co.jp

 SNS上では笑い者になっています。

 “受験者が減っているのは、民間が先に人材を抑えてしまうからだ、同じ土俵なら勝負になる” そう考えている時点でアホだというのです。私もそう思います。
 原因は人手不足の時代に教職が明らかにブラックで、優秀な人が逃げてしまうからです。教師の労働環境を改善しないまま、早めにツバをつけようとしても、よほどの人格者でない限りあえて火中の栗なんか拾いません。試してみるまでもないことです。

 しかし文科大臣に同情できる面もあります。他に打つ手がまったくないのですから、対策をと言われれば、大臣として何か言わなければならなかったのでしょう。その結果がこれです。気の毒と言えば気の毒ですね。

 

【部活は絶対なくならない。学校からも切り離せない】 

 まだ部活は何とかなるだろうということで、先日、スポーツ庁は地域への移行を打ち出しましたが、できっこないことは証明済みです。
 この件については私も何度も書きましたし、最近では昨年の10月、ひとつにまとめてみましたから、興味のある方はお読みください。

kite-cafe.hatenablog.comkite-cafe.hatenablog.com 簡単に言えば、部活動の廃止・縮小を望んでいるのは(特別な例を除いて)教員以外にいないということ。部活動を学校から切り離す試みは何度も行われてきたが、いずれもうまく行っていないこと。外部組織も外部コーチも、必要数を満たすには程遠い状況であること。また年収で500万円とか600万円を保証するなら別だが、時給2000円~3000円程度では永続的な組織運営は不可能であること。だから学校の部活はなくならない、という内容です。

【仕事が爆発的に増えても、教員数は絶対に増やせない不思議な仕組み】

 仕事を減らせないなら教員を増やすしかない――それが道理ですが、こちらも全く見通しがありません。

 教員の数は「定数法(正式には『公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律』)」という法律で決まっていて、予算の絡むものですからまったく融通が利きません。
 短い法文ですので一度読んで実際に計算して試してみるといいのですが、要するに教員の数はその学校の学級数によって決まり、学級数は同学年に在籍する児童・生徒の数によって決まる、そういう仕組みになっているのです。子どもの数が増えないと、教員の数は増やせない。
*一番下に分かりやすい資料があります。

 パーキンソンの第一法則は「公務員は、どんなに仕事が減っても、はたまた全くなくなっても、増え続ける」というものですが、日本の教育公務員に関しては完全に間違っていて、「日本の教員は、どんなに仕事が増えても、はたまた人間性を失うほどに忙しくなっても、(児童・生徒数の増えない限り)増えることはない」のです。この段階で、すでに今日の状況は予定されていました。

 

【35人学級が足かせになる】 

 もっともつい最近、というか昨年、この定数法が約40年ぶりに一部改正され、1学級の上限が40人から35人に引き下げられました。いわゆる「35人学級」です。
 毎年1学年ずつ、5年かけてすべての学年を上限35人しようという制度で、実際に恩恵を受けるのは児童数36人~40人の学級だけ。それほど多くが対象となるわけではありませんが、それでも約13500人もの増員になります。

 長年の折衝の結果ようやく財務省を説き伏せて勝ち取った人員ですが、逆に言えばこれで当分の間、文科省は大幅な増員要求ができなくなっているとも言えます。増員中ですから、要求しても絶対に通りません。

 ここに至って完全に手詰まりとなります。現場は過重労働に苦しみ、文科大臣と文科省はトボケた答弁を繰り返してバカにされ続けるしかないのです。

(参考)
「公立小中学校等の教職員定数算定の仕組み」
 ↑ 簡便で、かなり勉強になります。

(この稿、続く)