「彼らが興味を感じない、けれど必要な情報をどう届けるか」~情報弱者として若者たち② 

 朝から晩までテレビやらをつけっぱなしにし、
 新聞を隅々まで読む高齢者は情報弱者ではない。
 問題は自主的に情報網を選択し一部を遮断してしまう若者だ。
 彼らに必要な情報をどう届けるか

という話。

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(写真:フォトAC) 
 
 

【組長になって知ったこと】

 町内会の最小単位の「組」で、今年は組長をやっています。
 町会費を集めたり回覧板を回したり、配布物を配ったりするだけの簡単な仕事ですが、同じ組に“元ヤクザ”みたいな人がいて、その人に「組長(さん)」と呼ばれるのはちょっと快感だったりします。
 8年に1度の輪番でやっている仕事ですが、前回と違うことのひとつに、いつの間にか「要支援名簿」というのができていて、一朝、災害があったりしたら支援を必要な人のところに駆けつけなくてはならなくなった点です。
 組の中にひとり暮らしの高齢の女性がいますので前々から“何かあったら・・・”と心構えをしていたのですが、これで支援に駆け付ける法的根拠が与えられたようなものです。遠慮なく声をかけましょう。
 ところでこの女性、88歳でスマホもなければコンピュータも扱えません。おそらく一般的には「情報弱者」という枠組みの中に含められるべき人なのですが、この人に欠けているのは何なのでしょう?
 
 

【老人の情報環境は意外と豊かだ。アナログだけど】

 元々専業主婦で、ご主人を亡くされてからは適度に広い家庭菜園の世話をしながら、特にこれということもなく日を過ごしておられます。
 農作業の時は腰から下げたラジオを流しっぱなしにして聞き、室内にいるときはテレビをつけっぱなしです。暇ですから新聞は隅々まで読んでいます、というのはたいていのことで話題が合うからです。以上のこと、半分は憶測ですが、私の母がそうですから大体似たようなものでしょう。今年94歳の母は私が読み終わった月刊文芸春秋を、それこそ舐めるように隅々まで目を通しています。暇ですから。

 災害などの緊急事態に際して自ら市役所のホームページを開いたり、気象庁のサイトに行って確認したりというようなことはもちろんできません。その意味では情報弱者に違いないのですが、心配なことがあれば子どもたちが真っ先にガラケーや固定電話で状況を知らせてくれますし、地域の担当者も支援に駆け付けます。これで困ることがありますか?

 高齢者がテレビやラジオをだらだらとつけているのは、寂しいからであって特定の情報が欲しいからではありません。ですから彼らの周辺には興味のフィルターを介さない、ごく常識的な、普通の日本国民なら当然知っていていい情報が渦巻いています。その意味では高齢者の持っている情報回線は大部分がいわばプッシュ式で、望まなくても入ってきます。
 それに引き換え、若者はどうでしょう?
 
 

 【若者の情報網の二重のフィルター

 昨日紹介したEXITの「りん太郎。」さんの言葉、
「そうですね、興味深いコンテンツが増えすぎて、こちらが求めなくても入ってくるものが多い。これだけニュースでやっていても、今の若い子は、緊急事態宣言が出ているか出ていないかも知らない子が多いですね」
 その中に出てくる「こちらが求めなくても入ってくるもの」には高齢者に似て非なるものがあります。
 若者が手に入れている情報は「自らの興味」とAIが解析した「この人の興味」という二重のフィルターに曲げられ、個人に特化した情報だからです。基本的には興味のない、あるいは聞きたくない情報は届いてきません。情報のある部分がごそっと抜けている――。

 だから現代の若者はダメだと言っているわけではありません。
 私が若かった時代はコンピュータもネットもなく、下宿住まいのころはテレビもありませんでしたから自然とラジオが生活に根付いていました。その点では現代の老人とさして変わりがなく、私と関係のない、あるいは私が望まない情報も自然と入ってきたのです。

 それに対して今の若者は、ラジオを聞く代わりにスマホを開き、そこで自分の好きなアプリを起動させると、欲しい情報、必要な情報の氾濫に直面します。「りんたろう。」さんの言う「興味深いコンテンツが増えすぎて」の世界です。
しかし世の中には「欲しい情報」「興味ある情報」以外に、「知っているべき情報」「持っていなくてはならない情報」というものもあるのです。それを若者に送り込むには、どうしたらいのでしょう。
 
 

 【とりあえず有名人に期待、やがて根本的な仕組みを】

 私はSNSにはまったく知識がなく、情報を強制的に差し込む方法などまるで思いつきません。もっともアカウント所有者の選択権を最優先するSNSに、“本人が望まない情報”を差し込む仕組みがあるとは思えませんし、仮に差し込んでもブロックされるかアプリごとを削除されるのがオチ、という気もしてきます。本人がアプリを削除する可能性など、運営会社としては最も避けておきたいことかもしれません。
 そうなるとあとは、スマホ所有者の選択したアクセス先に若者に必要な情報が多くあるという状況を生み出すしかなくなります。

 Googleの検索窓に「自殺_方法」と入れると真っ先に電話相談がヒットするような仕組みも必要でしょう。しかしもっと効果的なのは世にインフルエンサーと呼ばれる人、あるいは芸能人など、若者が意見を求めたくなるような人たちの社会意識を高めておくことだと思うのです。
 新型コロナに関して言うなら、自分が選んだ相手が「コロナが怖い」と語り、正しい知識を訴えるということです。

 AKBから同時に7人もの感染者が出て南海キャンディーズの静ちゃんは二度目の感染です。芸人の陣内孝則さんは2日のツイッターで、
「今日で一人療養4日目ですが未だに高熱が続いています。ロキソニン等で一時は下げる事は出来ますが効果が切れるとまた高熱の繰り返しです。
 味覚もなくなっています。
 正直思ってた以上の症状です」

と語り、
「このまま回復を待つのみで良いのでしょうか? アドバイス下さい!」
と不安を記しています。
 現在はこうした人々の自発的な発言に期待するしかありません。しかしゆくゆくは人々が望むと望まざるに寄らず、必要な情報が確実に届いていく仕組みを考えないといけないと私は思います。