カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「彼らはほんとうに分かっていないらしい」~情報弱者として若者たち①

 これほどの感染拡大にも関わらず、繁華街で飲み続ける人がなくならない
 それどころかコロナ対策として打ち出されることごとに、大まじめで反撃する
 「いつまでも大人しく従うと思うなよ」と、彼らの自信はどこから来るのか
 それにしてもすごいことだ

という話。

f:id:kite-cafe:20210803084956j:plain

(写真:フォトAC) 
 
 

【夜の居酒屋で、彼らは政府の暴挙に怒っている】

 昨日のニュースに「五輪中の居酒屋は『20時でも満席だった』 米紙記者も驚いた混雑ぶり...店内写真に波紋広がる」という記事がありました。

www.j-cast.com

 
 それによると、
米紙ワシントン・ポストの記者が2021年7月31日にツイッターへ投稿した、東京都内の「居酒屋」で撮ったとみられる写真が物議を醸している。
写真には、多くの人が店内でマスクをつけず飲食を楽しむ姿が映っている。投稿によれば、時短営業の対象となる20時以降も店内の混雑ぶりは変わらず、ほとんどの人は店内のテレビで東京オリンピックの試合を観戦していたという。
(中略)
「クレイジーだ! 日本では今週、COVID19の記録的な感染者が報告されたばかりだというのに、レストランの客がマスクをつけずに近くに座っていてもいいというのか?」
(中略)
「これは問題だ。誰も耳を傾けない。誰もがルールに従わなくていいと思っている。あなたはそうではありません...」


 東京都の要請に従わず、明け方まで酒を提供するレストラン・居酒屋があることは承知しています。しかし問題は店よりも客であることは明らかです。店には「生きるためにやむにやまれる」という言い訳の余地があるのに、客の方には耳を貸したくなるいかなる理由もないからです。

「オリンピックをやっているのに、なぜ自分たちは我慢しなくちゃいけないのか」は、「自衛官や警察官は銃を持っているのに、なぜオレたちは持ってはいけないのか」というのと同じくらい筋違いです。オリンピックはお祭ではないし、銃はおもちゃではないからです。外で飲むことの正当化するにはまったく不十分。

 もちろん居酒屋にいる呑兵衛の中には、ワクチン接種を終えて意気揚々と高笑いする老人もいるはずですから若者ばかりを悪く言ってはいけないのですが、今や都内の感染者の7割以上が30代以下となると、やはりその年齢層に自重してもらわなくてはいけません。
 彼らはいったい何を考えているのか。

 そうかと思ったら同じ昨日の中日スポーツには「『帰省原則中止』に国民の怒り爆発 『大運動会で盛り上がってるくせに』『いつまでも大人しく従うと思うな』」という記事もありました。

www.chunichi.co.jp

 
 SNSの投稿から拾ってきた声らしいのですが、
「いつまでも大人しく従うと思うな」
とは! 
 自分自身に対するこの強い肯定感・自信はどこから来るのでしょう?
 中日スポーツも否定をせずに取り上げることで、彼らの発言に一定のお墨付きを与えていいます。そして私は怯えます。
 
 

【彼らはほんとうに分かっていないらしい】

 実はその前日、1日のNHKのニュースを見たときから、胸のざわつきはずっと続いていたのです。それは「入院した“感染経路不明“の人 多くが感染リスク高い行動」というニュースです。www3.nhk.or.jp 新型コロナウイルスに感染して入院した人のうち、感染経路が不明とされた人に対し、国立国際医療研究センターのグループが詳しく聞き取ったところ、多くが複数で会食するなど、感染リスクが高い行動を取っていたことが分かりました」
で始まる記事なのですが、その最後の方で、
「こうした行動を取ったことについて聞いたところ、『外食が感染のリスクだとは知らなかった』とか、『職場ではマスク着用は不要だと思っていた』などという回答があったということで、対策の知識が十分行き届いていないことや、意識の低さが見られたとしています。

 これが単なる言い訳、嘘・たわごとだったらむしろ問題はありません。
 けれどもしかしたらこの人たちは、ほんとうに外食リスクや職場内感染について知らなかったのかもしれないのです。新型コロナ感染が問題となって1年半も経つというのに――。
 
 

【私も分かっていなかった】

 私は今年5月31日に当ブログで、政府の分科会の尾身会長とEXITの「りんたろ-。」さんの対談を扱いました。

kite-cafe.hatenablog.com

 小尾会長が、いくら伝えても若者に危機感が届かないことを嘆いて、

「我々が記者会見をやるでしょう? (それを伝えるのは)ほとんどが新聞テレビですよ。新聞を読まない人はテレビも見ないという感じですか?」
と問います。それに対する「りんたろ-。」さんの答えが、
「そうですね、興味深いコンテンツが増えすぎて、こちらが求めなくても入ってくるものが多い。これだけニュースでやっていても、今の若い子は、緊急事態宣言が出ているか出ていないかも知らない子が多いですね。で、外へ出て居酒屋がやっていなくて“なんだそれ”みたいなことなんですよね」
 これに関して私は、
「彼らは何も知らない、コロナ感染の深刻さ、身近な人をあっという間に失ってしまう切なさ、医療現場の苛酷さ――だからあんなふうに冷淡になれるのだ」
という方向でお話をしました。しかしそれでも甘かった。「緊急事態宣言が出ていることも知らない」という言葉を、どこかで誇張表現のように感じていたのです。

 現場の苛酷さどころか、彼らのもとにはコロナウィルスが飛沫感染することも、飲食の場でうつりやすいことも、マスクが他人にうつさないための防御策だということも、まったく伝わっていなかったのかもしれないのです。
 何だか知らないけどみんながしているからマスクをしてみたら、案外カッコウいいので続けている、その程度のことなのかもしれません。

 そうなると都知事が突然、居酒屋を閉めたりネオンを消したりしたことも、何の説明もない暴挙としか思えず、許せなくもなります。片方でオリンピックを開きながら帰省を控えろという意味が分からない――いつまでも大人しく従うと思うなよ! となるのです。

(この稿、続く)