カイト・カフェ

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「できないことは叱ってはならない、やらないことは叱らなければならない」~東京都感染者3000人をどうみるのか

 新型コロナ感染者が、東京都でいよいよ3000人にも達しようとしている。
 なぜこんなことになったのか。
 野党・マスコミは正義を笠に着て、できもしないことを政府・東京都に要求する、
 その政府・東京都は、同じくできもしないことを国民・都民に要求する。
 そしてみんな、意欲を失ってしまった。

という話。

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(写真:フォトAC) 
 
 

【東京都の、感染者数3000人が目の前!】

 昨日発表の東京都の新型コロナ感染者数が、2848人で過去最大となりました。近県はもちろん大阪、福岡といった大都市を持つ府県も軒並み感染者数を増やしています。宮根誠司さんをはじめとするワイド・ショウ関係者はもう一度手のひらを返して、オリンピック即時中止を叫んだりするのでしょうか。

 一説によると昨日の急激な増加は、先週末の四連休に報告できなかった分が出てきた(だから先週の金・土曜日の発表はびっくりするほど少なかった)という話もありますが、感染拡大が収まっていないのは事実のようで、早晩、一日2000人を越す感染拡大が常態になり、やがて3000人を越えてしまうことも考えなくてはなりません。そうなると本当にオリンピックを中止してしまうのか――。

 オリンピックが面白いから中止にしないで欲しい、ということではありません。やめられる状況にないのに即時中止の世論が高まると、単純に政治不信が増大し、政府が言うことを誰も聞かなくなる、きけばいいこともきかない、もともときかない人たちに口実を与えることになる、それを恐れるのです。
 
 

【オリンピックは絶対に中止にならない】

 オリンピックがやめられないというのは、単に数字の問題です。9万人もの選手・関係者を招いておいて途中で帰すにはそれなりの名分が必要です。
 東京の感染状況は中止の理由になりそうですが、日本にとっては過去最大の感染拡大といっても、昨日の段階ですら10万人あたりの感染者数は、コロナ対策の大部分を解除してしまったイギリスで日本の15・2倍、死者数でも11・1倍です。同じく感染対策からの自由を謳歌するアメリカ合衆国は感染者数4・8倍、死者数8・3倍、この状況で東京は危ないから中止すると言っても聞き入れてもらえないでしょう。

 日本人から外国人に感染させてしまう危険も、逆に選手から日本人に関瀬させてしまうリスクも、それを管理するのは日本政府の責任であって、海外アスリートが競技をやめて帰国することで実現すべきものではありません。
 新宿でも渋谷でも、マスクもしない日本人の若者が平気で闊歩している状況で、なんでオレたちが夢を諦めて帰国せにゃならんの? そう問われては返す言葉がありません。

 したがって「日本国民がロックダウン並みの自粛をしても毎日数百人が死亡する」とか、「ワクチン接種したアスリートでもバタバタと倒れるような変異株が東京で生まれる」といった極端な状況でもない限り、オリンピックは最後までやらざるを得ません。

 だとしたらみんなで我慢して、静かに家で過ごしましょうというのが私の考え方ですが、世間は必ずしもそうなっていかないのはなぜなのでしょう?
 
 

【政府も都も、誰も国民を誉めなかった】

 “自粛疲れ”だとか“自粛慣れ”だとか、いろいろ言いますが、要するに“いやになっちゃった人”がたくさんいるのです。
 一生懸命に自粛したって新型コロナはなくならない、やったところで誰も誉めてくれない、からです。

 今から振り返れば、昨年の第一回緊急事態宣言下の日本はとんでもなく凄かった――渋谷スクランブル交差点を見ても浅草仲見世の様子を見ても、まるでCG動画としか思えないほどに人っ子一人いませんでした。
 それを誰が誉めたか。
 少なくとも政府・東京都が誉めたという証拠はありません。当時私は何度も「もっと国民を誉めてくれ」と書きましたからよく覚えています。

 誉める代わりに何をしたか? 政府・東京都は、初夏に再び感染が拡大し始めると、「気の緩み」という言葉を使って国民に報いたのです。これは痛いミスというよりひどい仕打ちです。
たしかに私たちは一回の緊急事態宣言でコロナ感染を撲滅することはできませんでした。しかしそれは気の緩みではない。精一杯やってあの程度が自由主義なのです。日本よりはるかに厳しいロックダウンを実施したニューヨークやロンドン、パリと比較すれば、あれがどれほどすばらしいできごとだったかは明らかです。
 
 

【できないことは叱ってはならない】

 教育の世界には、
「できないことは叱ってはならない、やらないことは叱らなければならない」
といった言い方があります。さらに言えば、
「できなくても努力したことは誉めなくてはいけない、努力せずにできたことは(あまり)誉めなくてもいい」
ということもあります。

 国民の努力の至らなさを“気の緩み”と表現した政府・東京都は間違っています。国民のやる気を大いに削いだ政府の言うことを、国民は前向きに聞くことができません。
 緊急事態宣言の効果についてはこれ以上アテにできないからには、あとは検査数をさらに増やすとか、病床を確保するとか、ワクチン接種を急ぐとか、そういった具体的対策を地道に続けるしかないでしょう。

 野党・マスコミも、できっこないオリンピックの中止や、今さらながらの「オリンピックを開催する意義の説明」だの言っていないで、もっと建設的な議論をしていくべきなす。