カイト・カフェ

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「グラフは簡単に動かない」~東京都の新型コロナ新規感染者数の出入りが大きすぎる件について①

 東京都の新型コロナウィルス新規感染者が、200人台から一気に119人に減った。
 このまま下がっていくといいのだが――、
 しかしそれにしても、なぜこんなに激しく人数が変わるのだろう?

というお話。

f:id:kite-cafe:20200714072136j:plain(SuperT自作)

 

【東京の新規感染者、大幅に増え、大幅に減る!】

 昨日の東京都の新型コロナ新規感染者数が4日ぶりに200人を切って119人だそうです。救急の電話番号(119)と一緒というのは何かスッキリしませんが、一昨日の206人から一気に半分近くまで下がったのですから何かほっとします。

 6月24日(水)に50人を越えて翌日にはいったん40人台(48人)に下がったものの26日(金)からは連続6日間の50人越えで“いやあな感じ”がしていたら、7月2日(木)に前日の67人からいきなり倍近い107人になり、100人台が6日続いて8日(水)にいったん75人に下がって、“やれやれ”と思っていたら9日(木)はまたまたいきなりの224人、一気に3倍近くにもなってしまったのです。
 それから連続4日間の200人台で、もうこれはダメかなと諦めかけたら昨日の119人です。このまま新規感染者数の数が減って行ってくれればいいのですが――と、そんなふうに書きながら、ふと脳裏をよぎるものがあります。

「なんかこれ、変じゃね?」

 

【グラフは簡単には動かない】

 統計グラフというのは基本的に緩やかな流れになるものです。新型コロナ感染についていえば、東京都民が毎日同じように生活し検査が同じように行われているとしたら、増えるにしても減るにしてもそれほど極端になるはずがありません。
 大きなクラスターが見つかってそこから10人~20人と芋ずる式に新規感染者がみつかったといったことはあるにしても、100人がいきなり200人になったり逆に半分に下がったりといったことがあるはずがないのです。
 しかし現実にはそうなっている。だとしたらそこには何か特別な理由があるはずです。

 これについてはこのブログでも扱ったいくつかの例があって、代表的なものは「いじめ件数の推移」のグラフです。(下図)

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 なぜこんなリズミカルなグラフになるかというと、1994年、2006年、2012年にそれぞれ「いじめの定義」が変わって、より広く網をかけるようになったからです。増やす方向でつくった新しい定義に従って報告すると件数は増えざるを得ません。

 いったん大幅に数を増やした後で、新しい指針によって指導が進むと、毎年少しずつ解決していくので数が減っていきます。するとまた基準が変わって報告が増える、その繰り返しが上のグラフです。

 

【警察力は衰えていない】

 もう一つ、基準が変わることで大きな変化を起こした有名なグラフに、警察の「検挙率」というものがあります。

f:id:kite-cafe:20200714072400j:plain これは警察の捜査能力が低下した証拠として利用されることが多いのですが、それにしても異常な低下です。1980年代まで60%前後、時には70%もあった検挙率が一時は20%にも下がったのですから。
――しかしこれにも理由はあるのです。

 1980年代半ばに至って、人口の増加、犯罪増加に警察の能力が追いつかなくなってきたのです。犯罪の増加に合わせて警察官を無限に増やしていくわけにもいきませんし、行政改革でむしろ減らす方向に進んでいました。
 そこで警察は思い切って、“自転車盗のような軽微な犯罪については受け付けこそするが本格的な捜査はしない”という方向に舵を切ったのです。その代わり殺人事件のような重大犯罪には人数をかけて決して容赦はしないと――。

 それは正しい方向だったと思います。
 人数も予算も増やさずに検挙率だけは維持せよ、むしろ上げよと言われたら、殺人事件に100人も200人も投入し続けることができなくなります。殺人事件1件を検挙しようとしている間に自転車盗100件を見逃してしまったら、検挙率はどんどん下がってしまうからです。逆に言えば1980年代までの高い検挙率は、軽微な犯罪に人数をかけていたからこそ達成できたものかもしれません。

 これほど犯罪の少ない日本で、なぜか自転車と傘だけはしょっちゅう盗まれて戻って来ません。まるでこの二つだけは“盗んでいいもの”と相場が決まっているみたいですが、だからと言って今の日本が極度に治安の悪い国という気がしないのは、やはり警察が責任をもって凶悪犯を捕えようとしてくれているからでしょう。私たちは良い国に住んでいます。

 さて、そこで再び東京都の新型コロナ感染です。常識的に考えれば緩やかに上がったり下がったりするはずの新規感染者数が、これほど激しく動くのはなぜなのでしょう? 基準は、どう変わったのでしょう?

(この稿、続く)