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「2022年春、コロナ防疫優等生国の破滅」~いちおう終わったことになる新型コロナ禍の、数字で見る世界②

 欧米が壊滅的な被害を被っていたころ、
 東アジアやオセアニアに、感染を低く抑える優等生国があった。
 あの国々はどうなったのか?
 実は2022年の春に、一斉になくなってしまったのだ。
 という話。(写真:フォトAC)

【あのコロナ防疫優等生国はどうなったか】

 新型コロナ感染について、初期から少し振り返りましょう。
 このウイルス感染は2019年12月末に最初の感染報告があってそこから一気に広がり、翌20年1月23日には中国武漢市がロックダウン。ほぼ時を同じくしてヨーロッパにも飛び火します。アメリカ合衆国に入ったのもほぼ同時期です。2月にはあっという間にヨーロッパ全土に広がり、3月に入るとイタリア・スペイン・フランスなどの都市が次々にロックダウン。アジアでも3月に韓国の大邱で宗教団体を中心に大きなクラスターが発生しました。
 合衆国では当時のトランプ大統領コロナウイルスの危険性を頑なに認めず、おかげで感染は全土に拡大。ロックダウンのニューヨークには遺体を一時保管するための冷凍トラックが集められたり、軍の病院船がマンハッタン港に横付けしたりと、たいへんな騒ぎになったのです。それも20年の3月のことでした。

 新型コロナ感染は燎原の火のように爆発的に拡大しましたが、それにもかかわらず強く抵抗できた国もいくつかありました。
 ヨーロッパではドイツが比較的よく対応し、さすが医療システムのしっかりしたこの国のことだけはあると賞賛され、スウェーデンは国民からの信頼の篤い政府が、独自のゆるい規制のもとで集団免疫を目指すとして、イタリアやフランスのような急激な感染拡大もなかったことからこれも高く評価されました。
 その後これらの国がどうなったのかは、私たちの良く知るところです。

 続いて注目されたのは東アジアとオセアニアの国々――我が日本といち早く感染を抑え込んで2度と大きなクラスターを発生させなかった韓国、台湾・ベトナムシンガポールニュージーランドは早目で細かなロックダウンを繰り返すことで感染拡大を防ぎ、当時のアーダーン首相の手腕が高く評価されました、オーストラリアも感染者ゼロに近い状況を長く続けました。
 さてそれらの防疫優等生国は、最終的にどうなったのでしょう。

【2023年3月、世界はこうなった】

 人口に大きな差がありますから10万人当たりの感染者数で比べると、下のようなグラフになります。
 文字が小さいので説明すると、①日本 ②韓国 ③台湾 ④ベトナム ⑤シンガポール ⑥ニュージーランド ⑦オーストラリア。
 アルファベットは、早い段階から感染拡大を防げなかった国々、いわばコロナ防疫初期劣等生国で、
aイタリア bスペイン cフランス dドイツ eイギリス fスウェーデン gオランダ hチェコ iアメリカ合衆国となります。
 チェコとオランダを入れたのは、あまり話題にならなかったものの感染状況が極めて悪かった国だからです。ちなみに②と③の間でほとんどグラフになっていないのが中国です。

 私が任意に選んだ46カ国ですからフランスが最も成績が悪く、韓国が2番目というわけではありません。他に割って入る国もあるかもしれませんが、K防疫を標榜した韓国が、今年3月の段階で日本の2倍以上の感染者を出しているのは驚きです。しかし韓国に比べるとマシな日本も、東欧諸国や中南米諸国、あるいは酷い感染状況で再三ニュースになったインド(X)や南アフリカ共和国(Y)、ブラジル(Z)などと比べると、情けないほど多くの感染者を出しています。感染者ゼロに近い状態を長く続けてきたニュージーランド・オーストラリアも見た通りの始末。いったい何が起こったのでしょう?

【コロナ防疫優等生国の破滅】

 問題は2021年11月に南アフリカ共和国で発見された新型コロナウイルス・オミクロン株でした。このとんでもなく感染力の強い株が2022年1月にオーストラリアに襲い掛かり、2月には台湾・韓国・シンガポールニュージーランドを総舐めにして日本にも襲い掛かり(第6波)、3月になってからはベトナム・マレーシア・インドネシアなど東南アジアの国々を次々と潰しにかかったのです。それまで約2年間、必死に守ってきた防疫体制は、オミクロンという特殊な株によってあっという間に席巻されてしまいました。

 その破壊力がどれほどのものだったのかというと、例えば韓国では1日の新規感染者数の記録が2022年3月16日に出ていますが、その数が621317人。日本の新規感染者数の最大値が2022年9月19日の260973人ですから単純な計算だけでも2・4倍。韓国の人口が日本の4割程度であることを考えると、とんでもない数の新規感染者が出ていたことになります。折あしく国論を二分した大統領選挙の真っ最中で感染拡大に対する対応が甘かったという面もあるかもしれませんが、それにしてもすさまじい数です。
 ちなみに韓国の死亡者の記録は2022年3月23日の470人。日本は今年1月14日の503人ですが、人口比で考えれば日本の2・4倍、ざっと1200人近くが1日に亡くなった計算になるのです。オミクロン株、ハンパじゃない!

 ただ、これは後で改めてお話ししますが、日本はこの時期にさえよく頑張りました。そしてよく頑張ったからこそ、いつまでも苦しめられることになるのです。

(この稿、続く)