カイト・カフェ

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「公務員は手を汚さない」〜豊洲・五輪・全国学テ④

 先週の金曜日、「平成28年度全国学力学習状況調査」の結果公表に関するニュースを、作業をしながら見るともなく見ていて、思わず振り返り、釘付けになる場面がありました。それは、
「算数Aでは石川・福井・秋田・沖縄が上位に入り・・・」
 という部分です。耳を疑いましたが画面にはっきりと表示されています
 石川・福井・秋田は常連ですが、沖縄は最下位街道をずっと走ってきたはず、いつからそんなことになったのか――。
 調べてみると2012年の琉球新報には、
「ことしから調査が導入された理科を含め小中の10科目全てで全国最下位となった」
とあり、私の記憶が正しかったことが裏付けられます。しかし算数Aについてさらに見ていくと、続く2013年も最下位、ところが2014年は22位、2015年6位と、とんとん拍子に上がって今年2016年はついに4位、点数的には3位相当にまで一気に上り詰めてきたのです。なにがあったのでしょう。

 私の心の中には、「沖縄、やったじゃないか!」といううれしい気持ちと「沖縄、お前もか!」という嘆きに似た思いの両方が沸き上がってきました。3対7くらいで後者の方が大きな比重を占めています。
 学力問題で最下位の沖縄が上昇に転じることは悪いことではありません。しかし沖縄は反骨と自主独立の県なのです。沖縄くらいは全国の悪しき趨勢に巻き込まれなくてもいいのではないか、私にはそういう思いがあるのです。かくいう私の県はもう10年前にさっさと飲み込まれているのですが――。

 ただし、実は「全国学力学習状況調査」の順位を上げるのはそう困難なことではありません。問題はやるかやらないかであって、順位を上げること自体は難しくない。
 実際、今回の算数Aの得点を見ても上位3県の平均点は全国平均に対して+0.8問なのに対し、下位3県の平均点は全国平均に−0.3問。トップ3とワースト3の得点差は、問題1問分しかないのです。下位3県も全員があと1問ずつ余計に点数を取っていれば、上位3県に食い込むことができるのです。
 また1問分余計に説くこと自体も、それほど難しくない。私は10年前、それを簡単にクリアした経験があります。

 それは2007年の第一回全国学力学習状況調査の時のことです。私は転任したばかりの小学校で管理職として初めての全国学テを経験したのですが、その時の6年生はひどく荒れた学年で、テストを受ける様子を見に行っただけですぐに “ヤバイ”様子が見て取れました。とにかく手がつかない問題が多すぎるのです。時間はたっぷり余ってしかも何もできない。
 案の定、半年後、帰ってきた成績は惨憺たるもので、市内15小学校中、ダントツの最下位。14位の学校との間に大きな得点の開きがあるのにはまいりました。全国の都道府県別ランキングに当てはめると後ろから2番目、つまり沖縄の前に当たります。
「振り向けば沖縄」
 その時、市教委が私たちに投げつけた言葉で、私たちに対しても、沖縄県に対しても失礼な言い方でしたがそれが現状でした。
 学力問題に関して、私が沖縄に親近感を持ち、その上昇を心から喜べるのはそういう背景があるからです。

 私たちとしてはしかし、6年生には勉強よりも先に手をつけなければならないことが山ほどあるので、成績のことはあまり気にせず、そのままやり過ごすつもりでいました。ところが市教委は放っておいてくれません。
 学力分析が終わると担当者(退職校長である嘱託主事)がやってきて、こってりとした指導の上、学校独自の分析と対応策の策定(早い話が反省文と改善計画書)を求めたのです。それがほんとうに面倒だった――。
 実効性のあるものでなければならないので絵空事ではすみません。何度も書き直しをさせられ、そのつど市教委に出かけて行って見てもらい、繰り返し指導され、また書き直して報告に駆けつける。

 私は最後にはすっかり嫌になって次年度受験の5年生の学年主任と国語・算数の責任者を集め、残る半年間、しっかりと受験対策をして、せめて平均点はとれるようにとお願いしたのです。ところが十日ほどたって、今度はその3人から私が呼び出され、意外な話をされるのです。

                             (この稿、続く)