カイト・カフェ

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「彼らはなぜ結婚したのだろう」~アスペルガーの家族①

 このところ、アスペルガーの家族(主として配偶者の一方が広汎性発達障害)について調べています。私の身近で立て続けに2件、そういうお話があったからです。

 これまで私は何となく「自閉圏の人々は結婚しない」と思い込んでいたので、そうした視点から考えてみることありませんでした。しかしそれはまったく迂闊な話で、児童生徒の保護者としてこれまでもそうしたカップルはたくさん見てきました。それなのに気が回らなかったのです。

 さて、そういうことで取りあえずネットで「アスペルガー 配偶者」とか「発達障害 配偶者」と検索したところ、これが驚くほどのヒットします。特にアスペルガーの配偶者を持つ妻のブログといったものが多く引っかかってくるのです。しかもこぞって面白い。

 不謹慎な言い方ですが、これらは現実を生きる“フーテンの寅さん”や“釣りバカの浜ちゃん”や“野田恵”の物語ですから面白くないわけがないのです。また書き手もブログを維持できるほどの文章上手ですから、その意味でも面白い。ただし一瞬でも当事者に身を寄せて考えると、そこには残酷なほどに苦しい世界が広がっています。

 広汎性発達障害は遺伝しませんがその形質は同じですから、夫がアスペルガーで子どものうちの何人かも発達障害という例も少なくありません。そうなると妻が一人で一家を支えなくてはなりません。しかもとなりにいるのが“ただの役に立たない夫”ならまだしも、しばしば“邪魔する夫”だったりします。妻が時間をかけてせっかく積み上げたものを、何のためらいもなく簡単に壊したりできます。夫の尻拭いをするその先で尻拭いのタネをつくり続けます。その上で多少引け目を感じてくれれば可愛いものの、こちらがひとこと言えば尊大で我がままで失敗ばかりしているくせに上からものを言う、ほんとうにかなわない人たちなのです。

 どうしてこんな人たちと結婚したのか。

 ネットで閲覧できる限りで言うと、自閉圏の男性と結婚する女性の中には三つのタイプが含まれていることが分かります(妻たちを3グループに分けられるというのではなく、自閉圏の妻たちの中に小さな三つのかたまりが確認できるという意味です)。

 ひとつは結婚すること自体に意義があり、相手を余り吟味しなかったケースです。これはありがちなことです。私も似たようなものでしたから。

 もうひとつはその男性の、ちょっと風変わりな性格や高い能力を積極的に愛したり、少なくとも好ましく思っていたケースです。

 そして三番目が機能不全の家庭に育った一群です。アルコール依存症の父親のもとで育ったとか、虐待を受けて育ったとかいった場合です。

 第3の点にについて言うと、20年ほど以前、「アダルト・チルドレン」という言葉が流行りました。これは「Adult Children of Alcoholics(アルコール依存症の親のもとで育ち、成人した人々)」が始まりで、アルコール依存症で治療に来る患者の妻たちがこぞって似た感じで、調べてみるといずれも父親がアルコール依存症だったという発見から積みあがってきた概念です(現在この言葉を使うことは稀で、「機能不全家族」といった概念から話をすすめることが多いようです)。

 それと同じように、自閉圏の男性の尊大で傲慢な態度に、進んで惹かれていった女性たちがいる、そんな感じなのです。

(この稿、続く)