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「子どもの病気と障害」~子どもの問題を障害や病気の観点からも観ること

 ここ10年余り、子どもの問題行動を障害や精神病の観点から捉えなおそうという動きが強くなっています。何でもかんでも病気や障害のせいにするのも考え物ですが、これまで保護者や教師たちが自分の責任として重く背負い込んできたものの一部が、普通の人間の普通の努力では解決し得ないものであるという発見は、私たちの精神的負担を大いに軽くするとともに、子どもの成長にとって有効な方針が示されたことで画期的といえます。

 ただ、この「病気と障害」、社会に提示されるものの数が多すぎるとともに、分類がはっきりせず、しかも評価の軽重も分からないのでいくら勉強しても全体像が見えてきません。

 たとえば、古いものから言えば「母原病」「ピーターパン症候群」「シンデレラ症候群」「アダルト・チルドレン」は子どものあり方を病理として扱ったものですが、いまやこれらの言葉で問題を語ろうという人はいません。このうちのいくつかについて私はかなり熱心に勉強したという思いがあるので、気持ちは少々複雑です。

 人格障害という概念があり、パーソナリティ障害といったりもします。これは精神病や精神障害の分類として定評のあるアメリカ精神医学会「精神障害の診断と統計の手引き第4版」(DSM−Ⅳ)にも載せられているもので間違いない障害ですが、子どもに「人格」と言えるほどのものがあるかどうか、という議論が根底にあるようで、教育の現場に入ってくることはありません。また人格障害と診断された人を近くにもったことも一度もありませんから、そう診断する医師が少ないのでしょう。ただし私は、便利で有効な概念かと思っています。

 今、人格障害はパーソナリティ障害とも言うと書きましたが、病名または障害名の変更が現場に混乱をもたらしている点も考慮しなくてはなりません。

 かつて精神分裂症と呼ばれたものは「統合失調症」、うつ病は「気分障害」(しかし「うつ病」という言葉はしっかり残っています)、躁うつ病は「双極性うつ」などといったりします。うつ病については「新型うつ」などといった言葉も出てくるのでさらに混乱します。

 LD(学習障害)、ADHD注意欠陥多動性障害)、高機能自閉症などはここ10年あまりのもので文科省も明確に定義していますしDSM−Ⅳにもあるものですから安心して近づけます。ただし高機能自閉症アスペルガー症候群、広汎性発達障害の関係は不明です。文科省のホームページには、
自閉症の3大特徴『①他人との社会的関係の形成の困難さ、②言葉の発達の遅れ、③興味や関心が狭く特定のものにこだわること』を持つもので、知的遅れのないものを高機能自閉症、さらにその中で『②言葉の発達の遅れ』のないものをアスペルガー症と分類する。両方あわせて広汎性発達障害という」
といった感じの説明がなされていますが、現場はもっと複雑です。私の感覚では医者それぞれが好みで使用しているように思います。

 医者の好みといえば、この市に来て非常に感じるのが「統合失調症と診断される子が他地域に比べて異常に多くはないか」ということです。これもこの地域が統合失調症に罹りやすい風土というのではなく、地区の有力な医師がこの病名を多用する傾向にあるからではないかと疑っています。

 さて、これだけ厄介な状況で、私たちは何を優先的に学んでいけばいいのか。
 私はまず「LD,ADHD,広汎性発達障害高機能自閉症アスペルガー症)」「愛着障害(反応性愛着障害)」そして「うつ病気分障害)、統合失調症」「双極性うつ」「新型うつ」の順ではないかと思っています。特に根拠のあることではありませんが。