カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「子どもは案外“ためになる話”が好き」~落ち着いた雰囲気で授業を行う工夫②

 “この人は意外と面白い話をする”
 子どもにそうした予断を持ってもらえば、とりあえず聞いてもらえる。
 そのためにはまだ白紙に近い朝の耳と頭に言葉を入れること。
 子どもは案外、ためになる話が好きだ。

という話。

f:id:kite-cafe:20220415074537j:plain(写真:フォトAC)

 

【いい意味での予断を植え付ける】

 成人式や卒業式の式辞がつまらないというのは予断です。つまらないと決めてかかっているから熱心に聴こうとしない、だから当然、面白くない(聞いていないから)。しかし逆に「この人はぜったいに面白い話をする」という予断があれば、彼らはとりあえず傾聴はずです。すると話の中に「いい部分」が見つかり、さらにしっかり聞こうとする。そういうことにもなろうというものです。もちろん、せっかく謹聴してくれているのにつまらない話しかしなかったら、すぐに捨てられてしまいますが――。

 朝の清々しい時間、子どもたちのエネルギーが全開となっておらず、まだ少しボーっとしていて教師からすれば最も釣り上げやすい時間に、最上級の餌を投げ込む――それで釣られない魚はいません。
 この先生は意外と面白い話をする、この先生の話を聴いておけば何かいいことがあるのかもしれない、そうした予断を植え付けてしまえば、あとはずいぶんと楽になります。

 初任のころ先輩から教えられた「毎朝、いい話をしなさい」はそういう意味で、そののち教員を続けている間じゅう、私はずっと習慣として続けることになりました。学級担任を外れてからも職員室の先生たちに話しかけるつもりで毎日プリントにして配布し続け、その成れの果てがこのブログです。もう40年近くなります。

 

【子どもは案外、“ためになる話”が好き】

 昨日は「面白い話」という言い方をしましたが、それは漫才やアニメの面白さではありません。子どもの興味関心をそそる話、好奇心を刺激する内容、あるいは“世の中はこんなふうになっているんだよ”とか、“ひとと話をするときはこんなふうにするといいんだよ”とかいった、子どもの成長に役に立つ話を、説教にならないよう注意しながら話すのです。
 子どもたちは自分が成長できる話、つまり“ためになる話”が決して嫌いではありませんから、具体的に例をあげて話せば、必ず聞いてくれます。

 例えば、時事問題やテレビで見たちょっといい話、読んだばかりの本の話、それから校内や学級内で起こったとても感心したできごと、ふと思い出した昔のこと、あれやこれやでイライラしていますといった話、つまり今と大差ないことを、子どもにも分かりやすいようかみ砕いて話すのです。
 現在ならもちろんウクライナ戦争について、ウクライナがどこにあるのかといったところから話すに違いありません。というのは世の中のあちこちで「ウクライナ」「ウクライナ」と言っているのに、子どもたちはよくわからないからです。それが「今さら聞けない」たぐいの話であることは分かっていますから質問もしませんが、やはり気になっています。それなりに話しておかなくてはならないでしょう。
 「コロナ困ったね」とそんな部分から現状を説明するのもいいでしょう。「台風、ここまで来てるよ。今まで来た台風の中で3番目に早いんだって。4月の台風なんて聞いたことないものね」、そんなことから始めても子どもを引き付けることはできるでしょう。

 

【下準備の実際】

 ただ、下準備は大変です。
 土日・祭日、さらに夏休みや冬休みなど長期休業以外は毎日語り掛けるので年間200日余り。しょっちゅうネタ切れの危機があり、手の空いた時間はつねに“明日は何を話すか”そればかりを考えていました。
 通勤時間が長かったので運転しながら考えを進め、思いつくと車を停めてスマホボイスレコーダーに吹き込み、再び車を動かして文章構成を考えながら帰宅する、そんなこともしょっちゅうでした。ほんとうはいけないことですがね。

 ただ何を話すか決まると、あとはすんなりと進みました。
 私がその日そのころ、心を動かされていたこと、興味をもって調べたこと、何か急に思い出して懐かしくなったこと――総じて「その時いちばん生き生きと語れそうなこと」を子どもの年齢にふさわしい言葉で語りかければいいのですから、意外と簡単なのです。

 私が教室で私語に悩まされなかった原因はたくさんある(特に小学校低学年での指導に負うところが多い)と思うのですが、こうして毎朝きちんと話したことも、大きな影響があったのではないかと思っています。