難しい問題だが現在進行形の歴史的大事件、
いま、これについて子どもたちに語らないことは罪だ。
少し勉強して子どもに知らせ、質問に答えられるようにしておこう。
という話。
(写真:フォトAC)
【ロシアのウクライナ侵攻、原因と目的】
ロシアがウクライナに深く侵攻しています。
昨日のNHKの解説によれば、プーチン大統領は、
- ウクライナがNATOに加盟することによって、ロシアの喉元にヨーロッパの匕首が突き付けられることに抵抗がある。
- もともと兄弟国で仲の良かったウクライナが、ロシアに背を向けて“あちら側”に行ってしまうことが我慢ならない。
- 仲がよかったからこそ曖昧なままにしておいた国境線について、“あちら側”に行くようなら今回こそはっきりさせようという意図がある。
そんなふうに言っていました。何か未練がましい男が去っていく女性を追いかけ、嫌がらせをしているような話ですが、その説明を外してしまうと、いま、この状態で大規模な戦争を仕掛ける理由がどこにも見当たりません。ですから案外、的を得た話なのかもしれません。
ではプーチン大統領の最終目的は何かというと、これもNHKの解説ですが、
こと。なるほど、これも分かりやすいと言えば分かりやすい。
同じことは多国籍軍や米軍がイラクやアフガニスタンでやったと言う人もいますが、国内を強権で抑え、国際的にも孤立していたフセイン政権やタリバン政権と、大統領選挙では72%の支持を受け、現在もわずか19・3%とはいえ第2位に6.4ポイントの差をつけて支持を受けるゼレンスキ―政権は異なるでしょう。
気に入らなければ力づくで政権を変えてもいいというロシアの論理が通用するなら、領土に野心を持つ国はほかにもありますから、世界はあっという間に力で土地を奪い合う19世紀に戻ってしまいます。そんなことが許されていいはずがありません。
【時代は変わっている】
幸いにも以前とは異なるさまざまな条件があります。ひとつは、
- ロシアが曲がりなりにも民主主義国の体をなしてきて、国の内外で反戦の声を上げ、デモを繰り返す人々がいること。フィギュアスケートのメドベージェワのように、SNSを通じて反戦の意思を明らかにする有名人も出てきたこと。
- 2014年のクリミア併合以来の国際的経済制裁にロシア国民はうんざりしており、この上の制裁にはかなりの抵抗があること。
- 国民は兄弟国であるウクライナを攻めること大義を感じておらず、14年のような熱狂はまるでないこと。
- ロシア内外を問わず、これはロシアの戦争ではなくプーチンの戦争だと意識されていること。
- 2014年以来、ウクライナの軍備増強が進んでいたこと。
などです。
好材料もあります。状況を見て行きましょう。
【少し勉強して子どもに知らせ、質問に答えられるようにしておこう】
政治や社会問題の重要度に関して、私はよく、
「これはいつか歴史の教科書に載るような内容かな」
と考えます。もちろん高校の教科書と中学の教科書は違い、小学校の社会科の教科書に載るとなると、私の生きてきた六十余年でも東日本大震災くらいしか考えられません。今回のウクライナ侵攻についても、このさき第三次世界大戦にでも繋がらない限り、中学校の教科書にすら載ることはないでしょう。
しかしやがて国際政治や歴史を学び、世界を活動の場として生きるかもしれない子どもたちが、現在進行形で起こっている歴史的国際的事象に目を向けておくことは大切です。将来、「ああ、あの時はこういうことがあったな」とか「国際社会はこのように反応したな」という思い出せることは、学習を深める上でも、生き方を決める上でも重要です。
残念なことに、現代の先生たちは新聞も読まなければニュースも見ません。そんな時間があるなら少しでも学校の仕事を進めておきたいと、皆が思っているからです。
だから事態がひじょうに大きくなってからようやく気付くのが普通なのですが、ウクライナ情勢もいまや大きな意味での歴史の一齣になりそうです。ちょっと立ち止まって少し調べ、あらましだけでも子どもに語って注目させれば、40人の学級の中の2~3人くらいは食いついて、以後のニュースに深く注目するかもしれません。それも教師の仕事です。
それに子どもから先に質問してきて、こちらが応えられないのはやはりまずいでしょ?
(追記)
27日までにEU・アメリカ・英国・カナダなどはプーチン大統領他の資産凍結を決め、国際的な決済ネットワークからのロシアの銀行の締め出しを検討しました。日本もまた、これに同調する方向で動いています。
EUはさらに、ロシアの航空機に対し領空を閉鎖、通過や着陸を禁止すると発表し、これにもカナダなどで同調する動きが出ています。
これはもう欧米諸国対ロシアの、放火を交えない戦争です。