カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「知りたいことはほとんど伝わってこない」~ウクライナ戦争を巡る断想④

田舎の隠居親父がボヤいたところで何の意味もないが、
ロシアの核攻撃ってほんとうにできるの?
ロシアの南方あるいは極東はどうなっているの?
拉致された人はどこに行ったの?
と、ほんとうに知りたいことは何も伝わってこない。
という話。(写真:フォトAC)

【核攻撃、するとしたらどこへ、どの程度でやるの?】

 プーチン大統領は核攻撃をチラつかせてウクライナおよび西欧諸国を恫喝しているとたびたび報道されていますが、私はそのたびに不思議に思うことがあります。
 「核を使うかもしれんぞ」というときのプーチン大統領の頭には、どんな状況でどんな使い方をするのか、はっきりしたイメージがあるのだろうかということです。同じことはウクライナや西欧諸国も言えて、ロシアのどんな核攻撃を想定しているのでしょう?
 
 ロシアのラブロフ外相は11日「国家存亡の危機が高まった時にのみ使われる」と発言したそうですが、そんな危機はなかなか思い浮かびませんし信用もできません。けれどだからといって、切羽詰まったロシアがウクライナのどこかを核で攻撃するというのも想像できないのです。
 
 例えばゼレンスキー政権を打倒すためにキーウの大統領府を直接核攻撃するとします。この場合、広島型の50分の1といった超ミニサイズではよほど正確に当てない限り目的は達成できませんから10分の1規模のものを撃ち込んだとします。それでも半径600mほどの範囲が爆風で吹き飛ばされ焼け野原になってしまいます。被害は数万人におよび、キーウはヒロシマナガサキに続く3番目の都市として名が刻まれます。しかもこれまでと違って最終命令者プーチンの名が永久に記憶されるのです。誇り高いウラジーミルにそんな決断ができるでしょうか?
 
 攻撃対象として他に考えられるのはウクライナ国内の軍事基地・兵站ですが、この場合は数がハンパではなくなります。核を300発も400発も打ち込んでタダで済むはずもありません。
 ロシア軍が撤退する際、追撃するウクライナ軍を停止させるために使う核というのも考えられますが、これだって一度使えば同じ状況で何十発も打たなくてはならなくなります。結局、核を打ちまくった男(国)としてプーチンもロシアも何百年も語り継がれることになります。
 ロシアの為政者は国民が死ぬことに抵抗はなくても名は重んじます(少なくともかつてはそうでした)。そんなことができるのか。
 
 ロシアの核攻撃は大統領が国防大臣に指示を出し、国防大臣が参謀長に伝え、さらにその下に2段階あってようやくボタンが押されるのだそうです。その系列のたとえ一人でも躊躇えば、核ミサイルは発射されず躊躇った一人は逃走するか闘争(つまり反逆)するしかなくなります。
 結局いかなる場合であって核ミサイルは撃てないのではないかとド素人の私は首を傾げているのですが、メディアは「核攻撃の恐れ」を口にするだけでこの問題に的確に答えてくれる人は今のところいません。気になります。

【ロシアの裏庭は大丈夫なのか】

 中国もそうですが、ロシアには手下はいても友だちはいない、力で抑えているだけでいつ反旗を翻しても不思議のない国と国際的には何の役にも立たない国ばかり、という印象を持っています。「何の役にも立たない」は言い過ぎで失礼かもしれませんが、アフリカの諸国やアジアの一部が積極的に兵や武器を供与してくれるとは思えません。
 
 かつて子分だった中国やインドはもう立派に独り立ちして傍観を決め込んでいますし、かろうじて頼りにできるイランも無限に力を貸してくれるわけではありません。
 中途半端にかかわってロシアとともに制裁を受けているベラルーシはオタオタと腰が定まりませんし、北朝鮮も自国のことで精いっぱいです。
 
 問題はカザフスタンだとかウズベキスタンアゼルバイジャンとかいった旧ソ連の諸国です。それぞれが親ロシアだったり反ロシアだったり、政府は親ロシアであっても国内に大量の反ロシアを囲い込んでいたり、あるいは旧ソ連諸国同士での紛争があったりと内容はさまざまです。それを強国ロシアがなだめ、すかし、脅しながら押さえてきました。
 ウクライナ戦争の結果そのロシアのタガが緩んだ時、これらの国々はどう動くか――すでにその兆候は出ているはずですが報道されるに至っていません。これも気になります。
 
 もしかしたら極東のサハリンや国後・択捉でも経済困難が進み、「もうこうなったら住民投票で“日本に帰属”でいいじゃないか」といった話になるかもしれない(ソ連崩壊直後にはそういう話もあった)、そう考えるとこちらも気になります。

 【知りたいことはほとんど伝わってこない】

 今年3月から6月にかけて、ウクライナ=ロシアの休戦協議によっていくつかの人道回廊が設置されました。その際にロシア領内に誘導され、それきりになっているウクライナ人がかなりいます。一部はロシア経由でヨーロッパやトルコに逃れましたが、シベリアに送られたウクライナ人もかなりいたと噂されました。その後どうなったのか――一切報道がないので気にかけています。もちろんすべてが偽情報ということもありますが、訂正記事があったという記憶もありません。

 その他、アゾフ大隊の裁判はどうなったのかとか、ウクライナ穀物輸出は順調なのかとか、実際のところ戦況はどうなのかとか――これだけ情報が発達しているのに、知りたいと思うことはほとんど知ることができません。
 なんとももどかしいことです。
(この稿、終了)