「ロシアの弱さと強さ、つるふさの法則、そして権力者の顔」~ウクライナ戦争を巡る断想②

ウクライナ侵攻を通して見えてきた、
ロシアの軍事力の弱さと経済力の強さ。
それにしても「つるふさの法則」に揺れ動いてきたこの国は、
どうしてプーチンのような権力者しか生み出すことができないのか。
という話。(写真:フォトAC)

【驚くべきロシアの弱さと強さ】

 ウクライナで戦争が始まって8カ月、この間に驚かされたことがいくつもあります。
 ウクライナについていえばゼレンスキーという元コメディアンの肝の座った様子、外交のうまさ、ロシアについては呆れるほど強くなかった軍事力、びっくりするほどしぶとかった経済力などです。
 特にロシアの軍事力については、当初、大量の戦車が一列になって侵攻していくさまを見て、超ド素人の私でさえびっくりしました。
 大昔のテレビ時代劇に「木枯し紋次郎」というヤクザ渡世が主人公のドラマがありましたが、紋次郎は大勢の敵に囲まれると脱兎のごとく逃げ出して田んぼの畦道に誘い込み、そこで振り返って寄せる敵を一人ひとり片付けていくのが常套でした。町に根付くヤクザは稲を踏み荒らして村人の反感を買うわけにはいかなかったのでしょう。畦道では必然的に一列にならざるを得ず、一対多数の有利さがまったく生かせなかったのです。
 
 制空権のないところで一列に進めば、紋次郎――じゃなかったウクライナの思うつぼだということが分からなかったのでしょうか? よほど舐めていたとしか思えません。
 ソ連の崩壊のとば口となったアフガン紛争で、ソ連は10年間に1万4000人の死者を出したそうですが、今回のウクライナではわずか8カ月で9万人が死者・行方不明になっていると言います。また精密誘導兵器の三分の二がすでに消費され、経済制裁の部品不足ために追加生産もできずにいると言われています。
 それにもかかわらず戦争をやめずにいられる――それがロシア経済の不思議な強さです。豊富な石油と天然ガスのおかげでNATO諸国に揺さぶりをかけられる、親ロ諸国に売った代金でイランなどから武器を購入できる、これまでも制裁に苦しんできた国民はまだいくらでも忍耐強く我慢できる――。ある意味で大したものです。

【つるふさの法則と権力者の顔】

 ソビエト連邦時代からずっと、ロシアは禿げとそうでない者とが激しい権力争いをして、交互に権力者の座についているという話があります。
 並べてみると、
レーニン(つる)→スターリン(ふさ)→フルシチョフ(つる)→ブレジネフ(ふさ)→アンドロポフ(つる)→チェルネンコ(ふさ)→ゴルバチョフ(つる)→エリツィン(ふさ)→プーチン(ほとんどつる)→メドヴェージェフ(ふさ)→プーチン(さらにつる)
となります。
 これについては15年ほど前にこのブログで扱ったことがあります()が、
さらに、

  • 「つる」は改革的であるが権力を悪い形で失い(失脚もしくは病に倒れる)、「ふさ」は保守的で死ぬまで権力を持ち続ける。
  •  これを「つるふさの法則(またはハゲフサの法則)」という。

という二つの点については、今回調べ直して初めて知りました。正しければプーチンもロクな終わり方をしない。
kite-cafe.hatenablog.com

 しかしこうやって改めて並べてみると、ロシアという国はときどき怪物のような為政者を生み出す恐ろしい国だということが分かります。
 悪行の限りを尽くしたスターリンはもちろん、政敵を殺すのに何のためらいもなかったレーニン、西欧の高級車や洋服を好み汚職まみれになりながらプラハの春を潰しアフガンに侵攻したブレジネフ、そしてプーチン
 帝政ロシアまで遡ればイヴァン雷帝やら「玉座の上の娼婦」とまで言われたエカテリーナ二世など、恐ろしい人ばかりで、日本でこれに匹敵する権力者といえば織田信長くらいしか思い当たりません。
 
 なぜロシアはこんな為政者しか生み出せないのか――そんな観点からもう一度ロシア史を勉強し直したくなりました。