「もっと丁寧な説明はできないものか」~東京都の新型コロナ新規感染者数の出入りが大きすぎる件③

 グラフ上はどう見ても第二波なのに、なぜ政府も東京都も、
 かくも落ち着いていられるのか。
 そうした疑問から始まって、できるだけ都に有利な解釈をしようと努めてきたのに、
 4段階ある警戒のレベルのうち最も深刻な表現に引き上げだとか。
 なんだかハシゴを外されたみたいな気持ちになるが、もう少し考えてみよう。
 それにしても政府も都も、もっと丁寧な説明はできないものか。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200716070236j:plain(「【東京都】東京都庁展望台からの夜景」 フォトAC より)

 

【陽性率50%超の世界】

 昨日カーラジオでテレビの音声を聞いていたら、新型コロナウィルスに感染したというホストの電話インタビューが流れてきました。店の従業員55名でPCR検査を受けたところ28人が陽性で、全員無症状だったと言います。

 驚いたことは三つです。
 一つ目はホストクラブが店ごと受けたいと言えば、PCR検査を簡単に受けさせてもらえること。
 二つ目はその陽性率の高さ(50.1%)。
 三つ目はこの件がクラスターとしてニュースにならなかったこと。
 しかしそれが実状です。

 昨日のネットニュースにはさらにこんな記事もありました。
 新宿区が区医師会と協力して行うPCRセンターの検査結果を示す「実績報告」。5月の連休前、検査数は54~62件程度で、陽性率は2.0~8.2%で推移していたが、その後の陽性率は跳ね上がる。6月30日~7月3日の期間は検査数92~140件で、陽性率は29.2~37.3%と文字通りの桁違いだ。(2020.07.14アエラ・ドット『新宿区PCRセンターで「陽性率4割」の衝撃結果…桁違いの跳ね上がりに「感染拡大は明らか」と医師』

 記事と同じ6月30日~7月3日の期間、東京都全体の陽性率は3.5~4.5%でした。つまり新宿区には10倍近い感染者がいたことになります。
 新宿はいままさに新型コロナのホットスポットなのです。
 
 

【そうだ、歌舞伎町に行こう!】

  下のグラフは昨日紹介した東京都の「確定日別による陽性者数の推移」です。PCR検査の結果を報告日ではなく、確定した日で修正したものになります。

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 このグラフについて、昨日は「検査機関が休みだったり職員の数が減ったりする土日は検査数も少なく、したがって陽性者も減る」と申し上げました。しかし7月5日の週に限って言えば、4日(土)~5日(日)の陽性者は多少減っているものの6日(月)~7日(火)も週日なのに同じ程度に少なく、8日(水)にいきなり前日の3倍近い250名が記録されて三日間高止まりしたかと思ったら、12日(日)には再び大きく下がるという不思議な動きをしています。この間土日(11日・12日)以外のPCR検査数は3500件前後であまり変化はありません。

 このことから今回は市中感染がじわじわと広がって感染者数が増えたのではなく、6日~7日は比較的危険とみなされない地域の検体が多く寄せられ、8日以降歌舞伎町のようなハイリスク地帯の検体が寄せられたことがうかがわれます。そう考えないとこんな極端な変化は説明できません。誰かが、
「そうだ歌舞伎町へ行こう!」
と叫んだのです。

 

【まだ制御できる】

 東京都が新型コロナ感染について、4段階ある警戒のレベルのうち最も深刻な段階に引き上げた昨日、官邸では菅官房長官が記者会見で「市中感染が大幅に広がっている状況にはない」と表明したうえで、感染経路不明の割合が一定程度あり、中高年の感染者は増えつつあるから警戒を強化するという考えを示しています。

 感染者数のグラフでは第一波を上回る第二波が来ているように見えるにもかかわらず、政府が頑として深刻さを認めない背景には、経済活動を止めたくないという強い願いがあるとともに、危険は夜の歓楽街を中心とする特定の場所に集中しており、そこを制御していけばまだ何とかなると信じているのではないかと思うのです。

 感染者が出れば真っ先に濃厚接触者として家族が検査対象となりますが、考えてみれば家族は必ずしも濃厚接触者ではありません。老夫婦二人の私の家などはほとんど会話がありませんし、食事も向かい合わせではなく、横並びでテレビを見ながらですから唾液飛沫はかかりようがない。ドアノブや共用のタオルなどは心配ですが、それとて帰宅後すぐに手洗いすれば防げることです。

 それに比べたら(行ったことはないのですが)キャバクラやホストクラブの客と従業員の顔の近さ、声の張り上げ方はハンパではないでしょう。
 小劇場の、舞台の上の役者の口から吐き出される唾のしぶきは、スポットライトでチンダル現象を起こすくらい凄まじいことがあり、私などは若いころ、あれが嫌なばかりに最前列を避けたくらいです(あと、床に転がった刀を役者が蹴って、私のところに飛んできたことがあった)。新宿の劇場で全公演の観客に感染者が出た背景には、そうした部分への配慮のなさがあったのでしょう。
 パーティー、コンパ、会社の飲み会、それらにもいまいちど注意が必要です。
 しかしそれらは今からでもなんとかなる――政府はそう考えているのかもしれません。

 

【説明が雑すぎる】

 まだ2回目の緊急事態宣言を出す時期ではない。劇場やスポーツ施設の観客制限も緩和する、GoToキャンペーンも予定通り実施する――。
 私はそれでいいと思います。

 アテがはずれて急速な感染拡大が始まったら慌てて、
「申し訳ない、やっぱ緊急事態宣言を出します」
と言えば国民はブーブー言いながらも従ってくれます。前回上手くいったように次回もうまくできるはずです。
 しかしそれにしても、もう少し丁寧な説明はできないものなのでしょうか?

 感染者の報告数が8日の75人から8日の224人に一気に増えたとき、「それは検査数が増えたからです」と言った小池知事。それではあまりにも雑すぎませんか?
「224人の大部分は昨日の検査結果ですが、東京都は昨日から歓楽街を中心に積極的、集中的に検査を行っています。これらの地域では陽性率が40%以上にもなる場合があり、したがって感染者数も一気に増えますが、感染が広がっているというより感染を捕えているという状況です。だからあまり大きく心配されないようにお願いします」
 そんな言い方をしてくれれば(それが本当かどうかわかりませんが)、私たちももっと信頼を寄せ、いっそう協力できたはずです。

 菅官房長官も「市中感染が大幅に広がっている状況にはない」と一蹴するのではなく、その根拠を示して私たちを安心させるくらいのことはしてもいいじゃないですか。
 それとも、政府はやっているのにメディアがその部分をカットしているのでしょうか?

 いずれにしろ今回のコロナ禍で一貫して感じるのは、政治家たちのあまりの言葉の少なさです。日ごろはあんなにしゃべるのに――。


* 以上、忖度に忖度を重ねて第2波を認めたくない、緊急事態宣言を回避したい政府、東京都の思いに沿った推論をしてきたというのに、昨夜見たニュースで東京都の委員は、「既に歌舞伎町・池袋といった段階ではなく、中の・世田谷に広がって、陽性者は都内全域にいる」「感染経路も当初、接客を伴う飲食店が多かったが、現在は家庭・職場・劇場・会食場など多岐に広がっている」「既に第2波到来と言ってもいいのかもしれない」みたいな発言をしていて、私はがっかりです。
 それでは普通に考えた答えと同じじゃないですか。
 腹が立って、いったん予約で投稿した記事を全文削除しようかとも思ったのですが、まあ、2時間以上もかけて書いた文です。このままにしておきましょう。

(参考)
2020.07.15 東京都の新規感染者数

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