カイト・カフェ

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「心配するな、大統領は還ってくる」~大統領と日本のファクターX①

 トランプ大統領とその夫人が新型コロナに感染したという。
 超大国の大統領の入院に世界は戦々恐々としているが、
 大丈夫。大統領は還ってくる。
 ただし還ってからは、どうか日本基準に近づいて、
 安心・安全の選挙戦を戦ってほしいものだ。

という話。

f:id:kite-cafe:20201005064457j:plain(写真:フォトAC)

【大統領は甦る】~ドナルド・トランプも還ってくるに違いない

 先週金曜日にドナルド・トランプ米大統領と夫人が新型コロナに感染したという情報が入り、ざまあ見ろとも思いませんが、ちょっと喉のつかえがとれる感じがしました。

 私のように感染者ゼロみたいな田舎県に住みながら、ちょっとした買い物にもマスクを忘れていないか気を遣い、消毒用アルコールのある店では入店の際に消毒し(お店のため)、店を出るときはまた消毒し(自分のため)といった生活を送っていると、いかに遠い異国の話とは言え、大規模選挙集会でマスクもつけずに大声を出し、ハグやらキスやらをしている姿を見せられるとイライラするのです。
 コロナウイルスを舐めてかかっていた大統領が感染したことで、アメリカ国民、特に共和党員が少し反省して、日本基準に近づいてくれるといいのですか――と思ったりしています。

 もっとも今日までコロナを舐めてコロナに感染した国家指導者もそこそこいました。しかし英国のジョンソン首相は重症になりながらも復活し、ブラジルのボルソナロ大統領は軽症のまま復活してしまいました。(「してしまいました」という言い方もないけど・・・)
 両方とも破格に感染者と死亡者を出している国です。国民は大量に死んで指導者は復活する――割り切れないような気もしますが、これらの国の指導者はそのくらいの魔力がなければ勤まらないのかもしれません。
 そうなるとロナルド・トランプ氏などは絶対に復活してくるわけで、是非とも早い復帰を祈りたいと思います。
(戻ってから白い目で見られるのは怖いですから、おもねっておきます)

 もっともジョンソン首相にしてもボルソナロ大統領にしても、そしておそらくトランプ大統領も、もともと確率としては復活する可能性の方がはるかに高かったと言えます。

 先日、「コロナウイルスは不公平だ、若者が走り回って感染を広げ、年寄りばかりが死んでいる」といったことを書きました。

kite-cafe.hatenablog.com そこで紹介した死亡率は70代で7・5%、80代以上では17・4%です。裏を返せば70代の92・5%、80代は82.6%が新型コロナで死なないのです。80代など普通の風邪でも亡くなる時は亡くなってしまうのに。

 ジョンソン首相は56歳、ボルソナロ大統領は65歳ですからそう簡単には死なない。トランプ大統領は77歳でそれよりは危険ですが、9割がた元気で戻ってくるものと考えて差し支えないでしょう。それでも、
「コロナを克服した強い男だ」
などといってほしくはありません。回復するのが普通なのです。

 

【ファクターX:日本人の10万人あたりの死亡者はなぜ少ないのか】

「日本人の10万人あたりの死亡者はなぜ少ないのか」という設問があります。 その要因を中山伸弥先生が「ファクターX」と呼んでいます。

 ほんとうに日本ではコロナ死は少ないのかというと、グラフにすれば一目瞭然、10万人あたりの死亡者は1・26人ですから国際的にはかなり少ないことが分かります。
 それにもかかわらず数値だけを見て、「日本は新型コロナ防疫失敗国だ。韓国(0・81)や中国(0・33)、台湾(0.03)などアジア諸国は軒並み低い」という人もいたりしますが、世界的に見れば日本と韓国の差はほとんど誤差の範囲くらいで無視できるものです。
 日本・韓国・台湾・ベトナムシンガポール、アフリカに行ってアルジェリアエチオピアオセアニアではニュージーランド・オーストラリアなどは、極めてコロナ死の少ない国と言ってかまわないでしょう。

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(グラフの左端が日本)


 ところで「日本人の10万人あたりの死亡者はなぜ少ないのか」は、2~3月ごろは「なぜ日本人は新型コロナに感染しないのか」というものでした。中国やヨーロッパ、アメリカ、そしてお隣の韓国で感染爆発が起こっているというのに、日本ではほとんど感染者が出なかったからです。
 ところが3月末からの第一波があり、「日本人ではPCR検査が極端に抑えられているから感染者数が少ないのだ」という話もあって、以来、「(感染しにくいのではなく)感染しても死なないのだ」という方向に変わってきました。感染者数はかなり隠されていると皆が思っていたのです。

 しかし状況はずいぶん変わってきています。今でも日本の感染者数は不当に低く抑えられたままなのでしょうか?

 

【ファクターXのしっぽを捕まえた】

 そうではありません。日本の検査体制は以前に比べるとはるかに充実してきました。
 東京の感染者数が毎日100だの200だのというと焦りますが、検査体制の拡充のために3月時点では掘り出せなかったものまでが数えられるようになったのは間違いありません。以前とは異なり、おそらく無症状も含めて、ほとんどの感染者が補足されるようになってきたのでしょう。というのは感染者に対する死亡者の割合が、このところ1・9で落ち着いているからです。

 死亡率が一番高かったのは6月6日ごろの5・4で、なぜ高かったのかというと検査数が不十分で分母(感染者数)が不当に低かったからです。別に大勢が亡くなっていたからではありません。
 そののち検査数が大幅に増え、特に無症状の感染者がどんどん拾われるにしたがって感染者数は増加し、数字上の死亡率は減ってきたのです。

 この1・9という数字はかなり信頼できるものだと私は思っています。
 新型コロナに関しておそらく一番正確な数値を持っているのは韓国で、個人情報の徹底的な収集とPCR検査の実施で、ほぼ完全に割り出した感染者数に対する死亡者の割合が1・7です。
 また、完全な閉鎖空間で細大漏らさず調査することのできたダイヤモンド・プリンセスでの死亡率が1・8でしたから、乗客に高齢者が多かったことを考慮すると韓国の1・7が正確だという私の想像はかなり的を得たものでしょう。
 その韓国の1・7にかなり近い1・9を出している現在の日本は、いまや感染者の大多数を補足できるようになた国だと考えられます。

 私は何を言いたいのか?
 簡単なことです。
「『日本ではなぜ新型コロナによる10万人あたりの死亡者が少ないのか』の答えは、『そもそも10万人あたりの感染者が少ない』からだ」
ということです。
 感染者数がほぼ正確に補足できるようになったところで、改めて10万人あたりの感染者数を比べてみると、やはり日本はかなり少ない。
 こんなふうです。

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(この稿、続く)