「新規陽性者286人は怖くない」~東京都の新型コロナ新規感染者数の出入りが大きすぎる件について④

 新型コロナについては昨日で一応切り上げるつもりだったが、
 昨日の発表が286名という飛び抜けて大きな数字だったので、
 かえってうれしくなってもう一日扱うことにした。
 この値の大きさは、むしろ私の推論を補強するものだ。

というお話。

f:id:kite-cafe:20200717075312j:plain(「東京都庁の展望台から見える東京の街並み」 フォトAC より)

【昨日の286人の大部分は、3日前の検査結果らしい】

 昨日の新規陽性者は286名。これは東京都の新記録ということになります。これまでの記録が7月10日の243名ですから2割近くも増えてしまったことになります。

 ただし昨日の新規陽性者数が280を越えるという情報はお昼前に小池知事の口から漏らされており、これで昨日の陽性者の大部分は一昨日以前に検査を受けた人であることが分かります。

 東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトを見に行くと、13日(月)の検査実施数が4585件とこれまでの最高、14日(火)が3289件で4番目の値でした。それなのにニュースで扱われた13日14日の新規陽性者数はそれぞれ119人、143人で少なすぎるのです。翌15日(水)の新規陽性者数も165人と先週末の4日連続の200人台に比べたらずっと落ち着いた感じです。

 これは昨日もお話しした通り時間差が生み出す錯誤で、東京都が発表してニュース番組が扱う数値は報告された数(しかも前日までに)であり、実際の検査日とはずれているのです。小池知事も「検査数が4500人を越えてだいぶ増えていますのでこの結果になりました」といった言い方をしていましたが、昨日の286人の大部分は月曜日の大量検査の結果なのです。
 
 

【緊急事態宣言の4月とは状況がまったく違う】

 ところでPCR検査というと、ついつい私たちは3月~4月段階の記憶に縛られてしまいます。
 あのころは検査体制が十分ではなく(ホントかな?)、「熱や咳があっても4日間は自宅で我慢してそれでも治らなかったら相談センターに連絡の上、病院に行きましょう」と言われた時代です。無症状の人と軽症者はPCRなんか受けていません。

 また、感染者数の最も多かった4月中旬には1日1500件の検査が行われていましたが、そのうちのかなりの部分は感染者自身が複数回やった結果です。最低でも入院時に1回、二日続きで陰性にならないと退院できないのでその際に最低二回、都合ひとりで3回分も消費しているのです。それに家族などの濃厚接触者の検査をしてしまうと“熱があるから検査をしてください”と希望する人に回せる検査は極端に少なくなっていたのです。

 ちなみにそのころの陽性率は最高値でなんと31.7%(4月11日の結果。現在は6.0%)。検査しなくても陽性だと分かるような人ばかりが受けていたからでしょう。
 濃厚接触者ではなく周囲に感染の噂もない人で、少し咳が出る程度の人は検査を受けていません。
 おかげで第一波が落ち着き始めると、検査能力はあるのにその半分も使われていないという状況が生まれ、しばらく長く続きました。余力を残すのはもったいない気もしますが、当時の規定では対象者がいなかったのです。

 それが現在は1日の検査数4500件超。
 陽性者が連日200人越えという意味では4月中旬とほぼ同じ状況なのに、3倍もの検査が行われている――いつのまにか検査能力ではなく、検査実績自体が巨大になっていたのです。どこかの時点でルールが変更になったのでしょう。
 ではいったいだれが検査を受けているのでしょう?
 
 

【現在、全体像を掘り起し中】

 ひとつは3~4月だったら検査を待たされた人の中で、3日以内に症状が消えて結局病院に行かなかった人たちです。現在は4日を待たずして検査が受けられます。濃厚接触者の幅も、少しは甘くなっているかもしれません。

 しかし4500件の大部分を支えているのは、おそらく新型コロナのハイリスク地帯で生活する、無症状の若者たちです。新宿や池袋ではホストクラブやキャバクラの従業員に積極的に声がかけられていますし、特に新宿区では区民であれば陽性の場合に10万円の見舞金が出ますから、不安な人々はどんどん検査に訪れてきます。これによって無症状の感染者が次々と掘り起こされて陽性者となっているのです。

 第一波のころPCR検査の少なさに怯えた一部の人たちは、実際の感染者は報告の100倍はいるだろう、1000倍はいるだろうと言っていましたが、そこまでは多くありませんでした。
 6月中旬に発表された東京都の新型ウィルス抗体陽性率は0.10%。東京都の人口はおよそ930万人ですから計算上は9300人が抗体を持っていた――つまり新型コロナウイルスに罹患経験があったと考えられます。当時の実際の感染者は5500人ほどですからその差の3800人が見逃された数です。
 あのころ見過ごされたのと同じ状況の人たちが、いまは掘り起こされつつあるのです。

 新宿界隈は一説によれば陽性率40%(NHKニュースでは31%)。ですから検査をすればしただけ、入れ食い状態で感染者が出て来ます。それによって東京都全体の陽性率も上がりますが、だからと言って4月当初のような危険な状態があるわけではありません。
 理屈上は無症状の感染者を掘りつくせば、コロナ感染の全体像も見えて感染拡大は治まるはずです。実際にはそこまでうまくいかないにしても、しばらくうろたえることなく様子を見ていましょう。
(東京都の異常な上昇には怯えなくてもいいですが、全国的に増加傾向にあることについてはやはり注意が必要でしょう。それでも私たちはきっとうまくできると思いますが)

 しかしそれにしても小池知事、もう少し上手な説明はできないものでしょうか? メルクマールなんて分からないことを言っていないで。

(この稿、終了)