日本では不安を抱えた奇妙な平和が続いているが、
欧米では再び爆発的な感染拡大が起こっている。
防疫の優等生だったはずの韓国・ベトナム・シンガポールも大変で、
オーストラリア・ニュージーランドもかなり怪しい。
一体何が起こっているのだろう?
という話。
(写真:フォトAC)
【奇妙で不安な平和】
新型コロナ感染についていえば妙に平和な日々が続いています。
東京では昨日の感染者が27名で、先週の木曜日に比べて7名も増えたとニュースになっていましたが、総人口1400万人からすると微々たる増加です。200万人について1人の増加は、少数で表すと0をいくつつければいいのか――それだけでも気の失せる神経質な作業になりそうです。
日本全国では昨日の新規感染者が119人。先週の木曜日発表から34人も減っています。もう減らないだろうと思うところからさらに減るのです。
専門家は、第六波は必ず来る、来るとしたら年末年始から1月中にかけてだと警告しますが、私は眉に唾をつけています。
考えてみると昨年4月の第一波感染拡大では、一日の感染者が720名あまりにも上り、国民全体が震え上がったものです。しかし同じ時期、ヨーロッパ諸国は連日4000人~6000人といった新規感染者が出ていて、合衆国に至っては3万人もの感染者と2000人を超える死者がいたのです。日本の第一波で感染あるいは亡くなられた方には申し訳ないのですが失、諸外国に比べたら日本の状況は誤差の範囲のようなものでした。
国内で比較しても、第五波真っ最中の今年8月には新規感染者が1日あたり2万6000人近くという日もありましたから、恐怖の第一波の720人がいかに小さな数字だったかは自ずとわかろうというものです。
もっともあのころはワクチンがなく、治療も暗中模索でしたから、「とにかくワクチン間に合え!」と祈りながら我慢した第五波よりも恐ろしかったのも無理なかったのかもしれません。
【欧米の状況】
さて現状です。
ヨーロッパではここのところ英・仏・独の状況が特にひどい。イギリスはずっと高止まり、フランスとドイツは急激に感染者数を増やしています。
ワクチンのおかげで死者数はかなり抑えられているとはいえ、それでもフランスはここのところ連日80人越え、ドイツは200人~300人(23日は336人)、イギリスは200人弱がずっと続いています。人口は日本と比べて英・仏が半分程度、ドイツが三分の二ほどですからそれぞれ大変な数字です。
合衆国は――これはもうずうっと状況がよくない。毎日1500人前後の死者が出ても(政府以外は)さほど気にしていないように見えるのは、国民性がそういうものなのでしょうか?
東アジアと比較して驚くことは、それほどの感染拡大にも関わらず、欧米ではワクチンの接種率が高まらず、人々は颯爽とマスクを外して街に出て、要もないのに大騒ぎしています。反ワクチン・反ロックダウンのデモも毎日のように起きています。
あの人たちの親兄弟に感染者やコロナ死がまったくいないのでしょうか? イギリスやイタリアでは10万人あたりで200人以上の死者が出ているのです(日本は14・5人)。
新型コロナ感染では、諸外国の人々の生の暮らしといった情報があまり出て来ないので分かりませんが、状況が落ち着いたら改めて調べてみましょう。
【韓国はどうした】
いま特に気になるのは韓国です。お隣の国で基本的な状況はよく似ています。
同じ東アジアで気候風土が似ている、何回か危機はあったものの世界規模で考えるとかなり感染を抑えている、ワクチン接種率(完了者)は両国とも80%間近、国民はさほどマスクを厭わない。
それなのに現状は、韓国の新規感染者が連日4000人前後なのに対して日本は100人前後、死者は韓国の30人前後に対して日本は2人なのです。人口は日本の方が2・4倍ほどですから単位人口(例えば10万人)当たりに直すと韓国は感染者で74倍、死亡者41倍にもなってしまいます。今日の韓国は明日の日本ということもありますから、かなり落ち着きません。
この件に関して韓国国内では、①ゼロコロナからウィズコロナへの転換による規制緩和、②ブレークスルー感染、③寒さが厳しくなって室内で過ごすことが多くなった等の原因が挙げられています。また日本では第五波でかなりの感染者を出し、統計上あげられていない“検査を潜り抜けてしまった感染者”がいて、その分がワクチン接種に上乗せされて実質的な集団免疫の状況が生れている(だから韓国もある程度放置すべきだ)という見立てもあるみたいです。
ただし日本の第五波感染者はおよそ90万人。検査をすり抜けた感染者も含めて200万人が抗体を持ったとしても総人口の1・6%ほど。それに現在のワクチン接種率を加えても韓国の接種率に及ばないわけですから、集団免疫説は成り立ちません。寒くなってきたことも規制緩和もブレークスルーも状況はさほど違わないでしょう。
そこで考えられるのがワクチンの種類です。
韓国国内では「政府がK防疫(大量のPCR検査と徹底的な追跡システム)への自信からワクチン確保が送れた」という批判があり、この一年間、相当な無理をして接種が進められました。その結果、初期においてアストラゼネカ製が多用され、途中からは交差接種(二回目に一回目と違うワクチンをつかう)や二回目までの接種間隔を広げるなどの変則的なことが行われました。そのことが関係するのかもしれません。
とくにアストラゼネカは有効率が70%とファイザーやモデルナ(90%以上)よりも低く、接種したにもかかわらず最初から抗体のつかない人が3割程度予定されているのです。アストラゼネカの接種者は25%ほどと言われていますが、接種は高齢者から始まりましたから25%の大部分はお年寄りなのかもしれません。
現在の感染者の大部分が高齢者と子ども、死亡者のほとんどが高齢者という状況に符合します。
日本の場合、アストラゼネカの接種者はごくわずかです。おまけに来年、年明け早々に高齢者の3回目接種が始まるとなると、心配なのは子どもだけということになります。そして子どもは基礎疾患のない限り重症化しない――つまり第六波は来ても深刻な状況にはならない、ということになります。
今後ワクチンの効かない猛烈な変異種が生れる、という可能性がないわけでもありませんが、私はかなり楽観しています。日本人はマスクが好きですから感染拡大が収まってもなかなか手放そうとしないでしょうし、繁華街に浮かれて出て行く人も多くはなさそうです。
と、そんなことを考えた今週でした。