「事故の顛末」~交通事故を起こした話1  

 交通事故を起こした
 乗用車1台の全損事故
 エアバッグの火薬の匂いは芳しく
 口惜しさの味は苦い
というお話。

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【事故の顛末】

 事故を起こして自家用車一台を廃車にしてしまいました。
 昨日今日の話ではありません。もう半年以上も前のことで、気持ちの整理がつくのを待っていたのです。

 状況をざっとお話しすると、時期は真冬、時刻は午後8時40分ごろ、場所は田園地帯のど真ん中、事故の形態は「交差点での出会いがしらの衝突」です。私の普通車と進行方向右側から出てきた軽ワゴンがぶつかってしまったのです。かたちとしては交差点に後から入った私の車が相手の横腹に突っ込んだことになります。

 もう少し詳しく言うと、
 いつもの通り母の家で過ごすため8時半ごろ自宅を出発。、街灯ひとつない農道をしばらく走って、右折してさらに300mほどの直線を半分くらい走ったとき、いきなり右から黒い軽ワゴンが飛び出してきて私の正面に立ちはだかったのです。すぐにブレーキを踏みながらハンドルを右に切って軽ワゴンの背後に回り込もうと思ったのですが間に合わず、ぶつかってしまいました。
 直前のイメージではギリギリ交わせるはずでしたが、実際にぶつかったのは相手の真横ですから感覚なんてあてになりません。

 時速50km/hほど走っていたのですが直前にかなり減速できていたようで、エアバッグは開いたものの顔を打ち付けることもなく、眼鏡も外れたりしませんでした。車は車道上に残って横転することもなく、体はどこも痛みません。
 私はそれで済んだのですが、横からぶつけられた軽ワゴンの方はひとたまりもありません。どういう飛ばされ方をしたのかはわからないのですが、左横8mほどの田んぼの中に、上下反転して横たわっています。よく見ると運転席がこちらを向いていますから前後も反転したことになります。

 急いで降りて駆け寄ると、他に二人が走ってきてドライバーに声をかけます。後で知ったのですが軽ワゴンの後ろを友人の車が走っていて、そこから2人が降りてきたのです。
 運転席に声を掛けると意識はあるようで、三人で車を起こし、若い男性を引き出します。少しふらふらしているようにも見えました。
 
 

【私は怒っていた】

「救急車を呼んだ方がいいみたいですね」
 私はそう言って119番に電話し、何しろ広い田園のど真ん中でかえって場所を説明するのが難しいのをなんとか伝えて、続いて警察にも電話。2回目ですので今度は要領よく場所を説明し、救急車の来るまでに時間を互いに免許証を交換しあってスマホで写真を撮ったり、自賠責の保険屋さんに電話したりして過ごしました。
 
 私は落ち着いていました。
 よく、事故直後は足がガタガタ震えて・・といった話を聞きますが、私の場合はまったくそういうことはありませんでした。なぜか――。

 年齢が相手より二倍以上うえだったということもありますが、もっと大きかったのは私が怒っていたからです。もう当たった瞬間からカンカンで、心の中では、
「さあ、よしきた! 10対0だ。こんなところにいきなり出て来て、どういうつもりだ! 全額弁償させて新車に乗り換えだ!」
くらいのつもりで悪態をついていたのです。
 自分が絶対に正しいのですから別に怯える必要もありません。

 

 【悪いのはお前だ】

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 私が走っていたのは農道とはいえ幹線と幹線をつなぐ重要な短絡路で、朝晩は通勤の車でそこそこの交通量のある通りです。交差する道路にはいちいち停止線があり、そちらから見ると停止線の先にももう一本点線が引かれていて、二重に向こう(つまり私の通っていた道)が優先道路であることを示しています。

 交差点の真ん中にはスイスの国旗みたいな表示があって、交差点であることを見過ごすはずはありません。それを一旦停止もせずに入って、私の前に立ちはだかったわけですから、向こうが悪いに決まっています。
 私の落ち着いた気持ちの裏には、そうした優位性がありました。

 やがて救急車が来て相手の男性は乗せられてれていきます。万が一ということはありますが、重大なケガはないみたいでした。あとには友だちが残ってくれて、やがて来た警察官との対応も彼らがしてくれました。
 私は保険屋さんに言われた通りに動き、警察にきちんと話をし、レッカー車の来るのを待ちます。用が済むと“お友だち”は帰ってしまいましたが、時間にも気持ちにも余裕があったので、私は警察官と雑談めいた話をしながら実況見分の様子を見ます。

 すると作業をしながら警察官が、ぼそっと呟きます。
「まあ、これは五分五分といったところでしょうね」
 私はびっくりして聞き返します。
「え? だって向こうには停止線があるじゃないですか」
 すると警察官はこちらも見ずに、
「こんな停止線、誰が描いたのかもわからないしねぇ」
「え? マジ、・・・ですか?」

                  (この稿、続く)