「コリジョンコースにまんまと嵌る」~交通事故を起こした話2  

 五分五分よりはよかったものの 
 車一台を失ったことには変わりない。
 事故はだれも幸せにしない
 しかしあんな畑のど真ん中 暗闇の中を
 ヘッドライトをつけた二台が
 どうしてぶつかることができたのか――

というお話。

f:id:kite-cafe:20190712065043j:plain(「早朝のサロベツ原野を駆ける」phtoAC

 停止線のない農道を時速50km/hほどで走っていたら、横から軽ワゴンが飛び出してきてぶつかってしまった。
 責任割合10対0くらいのつもりでいたら警察官に「五分五分」だと言われてショックを受けた、というところまでお話しました。
 相手方の道路には停止線があったのですが、警察官に言わせると、
「こんな停止線、誰が描いたのかもわからないしねぇ」

 

【事故の結末】

 結論から言いますと、保険会社同士の話し合いの結果、事故の責任割合は4対6で私の方が軽いということになりました。
 担当者の説明だと、相手方に「止まれ」の標識があった場合でさえ、割合は2対8だそうです。とにかくこちらが動いている限りはゼロではないと言われました。まあそんなものでしょう。しかし4対6は厳しい。

 私の有利だった点は、
1 相手方に停止線があってこちらになかったこと。
2 こちらの道路が相手方より1・5倍ほど幅が広かったこと(これが2倍以上だとさらに有利だった)。
3 日常的に優先道路として機能している道だったこと。
などです。
 逆に不利だったのは、
1 なんといっても動いていたこと。
2 相手の車に気づかなかったこと(気づいてさえいれば防ぎ得た)。
3 回避行動が間に合わなかったこと。
 そのあたりではないでしょうか。

 責任割合はこちらに有利でしたが、被害の大きさは逆でした。
 私の方は250万円ほどで購入した3年間目の普通車でしたが査定額は130万円。フロント部分がメチャクチャに壊れて全損ですので廃車となりました。
 相手の軽ワゴンは横腹をへこまされた上に転倒ですのであちこち細かく傷んでいました。しかし自動車としての機能は損傷していないので安上がりの30万円。修理可能です。

 しばらく後に相手の保険会社から80万円ほどが振り込まれましたが、とても新車の買える金額ではありません。気分的には泣き寝入りです。
 また、廃車となったのは妻の車でしたのでずいぶん恨まれてました。その慰謝料も欲しいくらいです。
 事故は誰も幸せにしません。

 

 【あとで怒りに震えたこと】

 すべて保険会社とカーディーラー任せて自分ですることはほとんどなかったのですが、さまざまな意思確認や問い合わせ、経過報告などがあって気分的にはいつまでも嫌な思いを引きずりました。さらにその間、たった一度だけですが、ほんとうに体が震えるほど苛立って、電話口で声を荒げるということもありました。それは相手方の青年が、私の車は無灯火だったと主張して引かない、という話のあった時です。
 そういえば事故直後も、「オタク、無灯火でしたよね」とか言っていました。あまりにも突飛な話なのでそのまま無視したのですが、尾を引いていたわけです。

 保険会社の担当者の話だと、
「あちらはTさん(私のこと)のすぐ後ろの車のライトは確認していると言っています。それで十分余裕があったので交差点に進入したらぶつかったと。だから――」
「冗談じゃアない!」
と私は声を荒げます。

 自宅から事故現場まで、すでに最低でも5分以上走っているのです。真冬の8時半過ぎの、街灯一本ない暗い農道をです。無灯火で走れるはずがない。
 のちに実験してみましたが、時速30km/h以下だったら車幅灯だけでもなんとか走れます。しかしそれ以上の速度だったら、あるいは30㎞/以下でも完全な無灯火だったら、たとえ直線であることが分かっていても、車道を踏み外しそうでとてもではありませんが走れるものではありません。
 仮にふざけてそんな冒険をしていたとしたら、逆に細心の注意で自分の位置を測っていますから近づいてくる車を見落としたりはしないのです。

 私のすぐ後ろにいたという車も(記憶にないのですが)、5m~10mの近さにいたわけではないでしょう。そんなに近かったら私が無灯火でも車はライトに照らされて見えていたはずですし、本当にそんな近くにいたのならむしろ彼も交差点に入ることはなかったでしょう。

 もちろん嘘をついているというのではありません。私の後ろにはライトをつけた車が実際にいたのでしょう。
 しかしそれはおそらく交差点から100m以上も離れたところで、だから彼はブレーキも踏まず交差点に入ったのです。

 遠くの車には気づいたのにすぐ近くまで来ていた私の車は完全に見落としていた――それ真相です。自信をもって言えます。
 なぜなら私自身も、すぐ近くまで来ていた彼の車に気がつかなかったからです。売り言葉に買い言葉で言っていいなら、こうなります。
「オマエこそ汚ねぇじゃねえか!! 交差点のど真ん中にどっかからワープしてきただろう!」
――そのくらい見えないのです。

 

 コリジョンコース現象】

 私がこの事故に傷ついて半年も寝かせたのは、自家用車一台を失ったからでも自信を失たからでもありません。
 だだっ広い田園地帯の交差点で二台が何の躊躇もなく直角にぶつかる事故を、警察官は「北海道型衝突事故」と言いましたが、私は「コリジョンコース現象」という名で知っていました。
 2010年にこのブログで記事にし、2017年に立て続けに事故を目撃してまた記事にし、同じ2017年にこんどは自分がやらかしそうになってまた記事にしてと、3回も書いて十二分に理解し、注意していたことなのです。
 「皆様ご注意ください」とそのつど書いたはずなのに、今度は自分が本格的にやってしまった――そのことに傷ついていたのです。
(参考)
kite-cafe.hatenablog.com
kite-cafe.hatenablog.com

kite-cafe.hatenablog.com 

【夜の畑道は安全という神話】

 これほど熟知して経験もあったのになず防げなかったのか。
 ひとつにはもちろん「コリジョンコース現象」の生み出す錯覚が強かったからですが、もうひとつ、私には別な思い込みがありました。それは「夜の田舎道はむしろ安全」というものです。

 街場とは違って信号機なんてめったにない田舎道、どちらが優先とも分からない交差点がいくらでもあります(というよりそんなのばっかり)。にもかかわらずトウモロコシなどは人の身長よりはるかに高いわけですから、かなり大きな車でもすっぽり隠れてしまい、日中は場所によってすべての交差点でいちいち減速しなければ走れない場合があります。

 それが夜だと、ライトに照らされてむしろ余裕で走れる――それが私の思い込みでした。夏はそうなのですが、冬はまったくダメなのです。
 ライトは何かに当たって周辺全体を明るくするから目立つのです。作物の全くない冬の畑で、光はまっすく正面に抜けて驚くほど見えません。

 また、事故に遭ってからようやく気づいたのですが、自家用車というのは横から見ると驚くほど暗い。特にワゴン車はヘッドランプもテールランプも横から見るととても薄く、意識しないとかなり見にくいのです。
 それが互いを「無灯火」「ワープ」と思い込んだ私たちの置かれていた状況でした。

 以後、少なくとも私は、夜の暗い畑の中を、キョロキョロしながら走っています。何か変ですが。