カイト・カフェ

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「結婚式で生活資金を生み出す法」~冠婚葬祭の経済学1

 金がないから式が挙げられない、
 いやそもそも金がないから結婚自体ができない、
 という人に――、 
 結婚式は大げさにやればやるほど安くつくよ。
というお話。

f:id:kite-cafe:20181218070921j:plain(ルーク・フィルズ「結婚」)

 昨日のニュースに「結婚式挙げない人の半数以上は「資金不足」で仕方なく、結婚報告、4人に1人は“SNSに投稿”で済ます」ITmedia ビジネスオンライン)というのがあって、ちょっと考えさせられました。お金がないから結婚式ができないのでは気の毒だと思ったのです。
 しかし続けて、「あれ? 結婚式ってお金かかるんだっけ?」とも思います。

 そのあたりが「教師は世間を知らない」という所以なのかもしれませんが、30年前の私自身の結婚も5年前の娘の結婚も、お金がかかったという記憶があまりないのです。
 もちろんゼロではないのですが、資金が足りなくて諦めるというほどのことはない、という意味で、ほとんどかからなかった気がするのです。

【私の結婚式】

 ハワイで挙式した、と言えば当時としてはけっこう斬新でした。
 なぜハワイだったかというと(これも当時としては)いい歳になってからの結婚(34歳と30歳)でしたので、今さら恥ずかしかったのと、しかし全くしないのもそれはそれで大人として恥ずかしい(当時としては)ので、折衷案として「知り合いの来られないところの結婚式」となったわけです。

 この際、心配をかけた両親にも親孝行をしようということで、両家の親4人を連れて行ったのと、若者の観光ではないのでグレードの高いパックツアーにしたので、費用はかなりかさみました。
 ただしそれは私たちの特殊事情で、ハワイの挙式の必要条件ではありません。

 式はオアフ島の小さな教会で神父1名、歌手(兼オルガン演奏、兼介添え)1名、カメラマン1名。写真大判3枚を含む数点、結婚証明書、リムジンでの送り迎え付きで総額2万円ほどだったと思います。
 衣装はレンタルで私のスーツが5千円ほど、妻の方も一番安いのを選んだので、
「一生に一度のことじゃないか、もっと高いのを選ぼう」
と言ったら下から2番目のウェディングドレスに変更して6700円でした。
 私のズボンの裾上げなど、仕付け糸で点々と止めただけの仮縫い状態ですが、写真ではバレませんから一向にかまいません。

 妻はここで珍しく女心を出してメイクをプロに頼みました。しかしもっとも若くて美しい女性なら、そんなものも必要ないでしょう。
 あとで使うために、写真のネガだけはきちんといただいてきました。披露宴の引き出物に添付して、式を挙げた証拠とするためです。今ならデータでもらってくればいいだけです。

 帰国してから、披露宴を地元のホテルで行いました。
 父が「式も旅行費用も子どもに出させて親が何もしないのも恥ずかしいから、披露宴だけはやらせてくれ」というので甘えましたが、結婚式はもう済んでいますからウェディングドレスもお色直しもなく、私はスーツ、妻は母からプレゼントされた色留袖、ウェディングケーキもキャンドルサービスもない大型宴会(+カラオケ大会)みたいなものですから、どれだけかかったのか・・・。
 以後、父は一切その時のことを話しませんが、儲けが出たのではないかと今でも疑っています。

 ちなみに友人は呼びませんでした。
 呼ぶべき仲間が10人ほどいたのですが、結婚式は何年にも渡って毎年のようにやってきたので皆すっかり飽きてしまい、最後の方では不埒な行動に出るようになっていたので恐ろしくて呼べなかったのです。もちろん荒らしていた張本人のひとりは、先のことを考えていなかった私なのですが――。

 一ヶ月ほどして飲み会の席で報告すると、考えてもいなかったのですが数日後、友人たちは祝儀をもって自宅の方に駆けつけてくれました。慌てて引き出物を返しましたが、料理を出したわけではないので大きな差額が出て、それだけでけっこういい収入になってしまいました。もともと友人を呼ばない披露宴は、参加者が高額の祝儀を持ち寄る親戚とご近所だけですから、それだけでもかなりの収入になっていたはずです。

 何を言いたいのか――。
 要するにツアーの格を落とし、両親の同行を控え、あとは私と同じにすれば今でも結婚式は儲かるイベントだということです。

 調べたらハワイの小さな結婚式、ドレスも含めて全部込みで「6万7000円から」でした。五日間のパックツアーは7万円程度からです。ですから総額30万円もあれば全部できます。
 そして何もしない披露宴で30万円儲けるのは難しくはありません。
 

【シーナの場合】

 娘のシーナ結婚式は普通の式場で、普通に行いました。
 ただし本人の持ち出しはほとんどゼロです。私たち親が出しましたから。

 恥じることもありません。本来結婚式は家と家の結びつきですから親が出すのが常識なのです。出しくてくれる親がいるなら堂々と出してもらえばいいし、その日のために日頃から丁寧にゴマを擦っておけばいいだけです。

 ただしシーナの場合はやはりケチな夫婦に育てられたケチ娘だけあって、あらゆるところに倹約の網を掛けました。

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 例えばウェディングドレスは知り合いのお母さんが自分の娘のために自作したもので、「ジャマだからタダであげる」というのを1万円押し付けてもらってきたものです。サイズ合わせも当日のメンテナンスも、シーナとそのお母さんでしました。
 素人の作品ではないのでドレス自体が素晴らしいのはもちろんですが、幸せな娘さんが身に着けたものという由来が気に入って私も喜びました。

 業者のレンタルはどんな人が着たものか分かりません。そのたびにクリーニングしているとはいえ、汚れは取れても悪運や業は落ちていないかもしれないのです。

 お色直しの打掛はレンタル料50万円のものを、特別なイベントに応募して当てたとかで8万円ほどで借りてきました。

 キャンドルサービス等々はなく、ウェディングケーキはありましたが後で切り分けてみんなのテーブルに並べられましたからデザートの一部なのでしょう。
 新郎新婦の記念写真および参列者の集合写真は撮りましたが、1セット焼いただけで私たちの分もありません(「だって高いんだもの」)。もらったところで一度見ればたくさんで、いずれ親の遺品の一部としてシーナの手元に戻るだけです。なくてもいいでしょう。
――と、あれこれやってくれたおかげで、最終的に親が出した費用は100万円ほど。それを両家で折半しましたから安いものです。

 ちなみにシーナには3組の叔父夫婦と4組の従兄弟夫婦、未婚の従姉妹1名がいて、その全員を呼びたかったのですが婿のエージュに親戚が少なく、両家の人数を合わせるためにずいぶんと遠慮してもらったのです。しかしそれは大変もったいないことでした。
 従兄弟夫婦だと5~7万円は持ってきてくれます。食事は二人分ですが引き出物は1セットで済みますからその差額が衣装代などに回せます。

 もちろんこれはシミレーションで、実際にそこまで卑しいことを考えていたわけではありませんが、
「参会者に支払うもの(食事代と引き出物代)は本人が持ってきてくれる。さらに普通はそれ以上の金額を祝儀袋に入れてくる」
と考えると、披露宴は人数を集めれば集めるほど安上がりになることが分かります。政治家の資金集めパーティーみたいに500人~600人も集めれば、ほんとうにいい商売になります。(不謹慎)

 結婚式なんてやり方次第でどうとでもなります。葬式はもっと楽で、私の父が亡くなったときは香典と葬儀の差額で仏壇1セットをそろえることができました。父は色打掛を着たりしませんから安上がりだったのです。(さらに不謹慎)
 

【改めて、それでも結婚式や葬式はしなくちゃいけないのか】

 さて、そんなふうに説明すると必ず出てくるのが次のような問いかけです。
「安く上がることも、やり方次第で収入が生まれることも分かった。しかしそこには準備や連絡やといった労働コストが入ってこない。結婚式も葬式もやらなきゃタダだし面倒もない。そう考えるとやらない方がいいような気もするけど、それでもしなくちゃいけないものなのか――」

 結婚式や葬式は、それでもした方がいいのです。
 それについては明日お話しします。

(この稿、続く)