カイト・カフェ

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「子どもの不思議」①〜孫が特別に可愛いわけではない

 孫が生まれた、孫がいると言うと多くの方々が、
「お孫さん、可愛いでしょ? 孫は特別って言いますからね」
とおっしゃいます。
 これについて以前、私より若いのに5人も孫のいる知人に、私自身が同じように言ったことがあります。するとその人は、
「いやあTさん、本当に可愛いのはやっぱり自分の子どもだよ」
 そう答えます。
 ――もう30歳を越えた、あるいはそれに近い娘さんについてそんなふうに言えるのは、大したものだ、素晴らしいなあと思いました。そして振り返って思ったのは、やはり私も孫のハーヴより娘のシーナや息子のアキュラの方が可愛い、ハーヴはもちろん可愛いのだけれど「可愛い」の意味が違うということです。

【孫が特別に可愛いわけではない】

 なぜ孫は特別と思われやすいのか――。

 私のように教職にあったり保育士といった特別な職業でもない限り、普通の人は子どもと触れ合う機会がそう多くはありません。孫は特別と思う人の大部分は、おそらく、小さな子どもと一緒に暮らしたり遊んだりするのは自分の子どもの時以来という人ばかりです。

 おまけに自分が子育てしているのはたいていが社会の最前線で目いっぱい働いているときで、ですから子どもの可愛さを十分に堪能している余裕もなかったはずです。
 それが、久しぶりに子どもとふれあい、余裕のある中でじっくり子どもを観察するので、可愛らしさが格別に思えるのです。きっとそうです。

 実際、私の知り合いの保育士で年中他人の赤ん坊を背負っている人などは、「遠くの孫より近くのネコ」などと平気で言ったりしています。私はそこまで行かずネコよりは孫の方が可愛いとは思いますが(ネコはあまり好きではないので)、その言い分はよくわかります。
 もしかしたら子どもの見守りボランティアや児童センターの仕事などで年中子どもと接しているような人たちにとっても、孫だけが特別に可愛いという感覚は薄いのかもしれません。

 孫だけが特別に可愛いのではなく、子どもは普通、全部可愛いのです。
 

【すべての赤ん坊は可愛く生まれて来る】

 それはおそらく本当です。
 先ほど言ったように、私はネコなんてちっともかわいいと思いませんが、それでも子ネコは可愛い、数匹でニャーニャー言って戯れている様子を見たりすると思わず手に取ってみたくなったりします。

 ライオンの赤ちゃんだって大きな子ネコみたいなものですから可愛い、犬だって子イヌのうちはみんな丸顔で体全体もモコモコ、丸々してますから可愛い。パンダなどは親も可愛いが子どもを見ると親の可愛さが吹っ飛んでしまいます。

 それは当たり前で、何億年という歴史の中で、危機のたびに「可愛い子」はそうでない子に比べて生き延びるチャンスが多かった、より保護されやすかった――それが繰り返されることで「可愛い赤ん坊」のDNAは残されてきました。
 それは人間もネコもライオンも同じだったはずです。(もちろん地球上にはカマキリやイワシの赤ちゃんのように、どう見ても可愛くなかったり「可愛い」というよりは「美味しそう」が先に立つような赤ちゃんもいますが、その子たちの遺伝子は「大量に生まれる」といった別の方略によって残されたと考えられます)

 さらに少なくとも人間については、見目形が可愛いという以外に行動や仕草に、大人の関心を引いたり優先的に保護されるための仕掛けがたくさんあります。
 それを私は、多くの子どもやハーヴとの付き合いの中で見せられてきました。

(この稿、続く)