ちょっと訳ありで先週の土曜日、甥の二人の子どもを連れてNHKの放送センターに行ってきました。
一通り回った後、見学コースの出口に近いブースの片隅に「キミのかおはなんのカオ?」と書いてある四角い箱に気づき、何かと思ってみたら顔認証システムを使って自分と一番似ている動物を探してくれる装置なのです。
目立たないところにあって誰も使っていなかったのでさっそく座ってスイッチを押したら出てきたのが「カモノハシ」。「非常にユニークな生き物で・・・」と『ダーウィンが来た!』の“ひげじい”の声で持ち上げてくれるのですが、どうにも納得ができません。別にブタでもタヌキでも、どんなかっこう悪い動物でもよかったのですが、「カモノハシ」はどうにもぴんと来ないのです。
そこでメガネを取ったらもっと似た動物が出てくるのではないかと思って改めて撮影し直したらまたもや「カモノハシ」。これで引き下がることにしました。
(そのあと子どもが次々と挑戦したのですが、上の男の子が「リス」、妹の方が「ヤマネ」と全く妥当な答えだったので、私の「カモノハシ」も客観的には“全く妥当”なのかもしれません)
で、それきり忘れていたのが翌日の日曜日、たまたまつけていたNHK「ダーウィンが来た!」が「カモノハシ」だったのです。こうなるともう偶然ではなく必然です。
カモノハシはオーストラリアの東部に広く分布する哺乳動物です。ネコよりやや小さめの体に8cm〜15cmくらいのシッポがついています。丸い顔にはカモのようなクチバシがついていて、しっぽとサイズがほぼ同じであるため、写真で見ると一瞬どちらが頭かわからない感じになります。
「ダーウィンが来た!」でびっくりしたのはあの灰色のクチバシ、実はフニャフニャなのです。やや硬めのゴムのように柔らかい。しかもその先端には敏感な神経が通っていて獲物の生体電流を感知するようにできているのです。ですから水中の生き物を食べようとするとき、カモノハシは目を閉じて泳ぎまわり、その様子はまるで耳を澄ましている感じです。
しかし何といってもこの生き物の名声を高めているのは、卵で産んで母乳で育てるというその特異な性質によるもので、現在、確認されている生き物の中で同じ性質を持つものは他にありません。メスの体に乳首があるわけではなく、お腹の乳腺を通して乳を飲むのだそうです。
カモノハシにはもう一つ重要で特異な性質があります。それは哺乳類で唯一毒を持つ動物だということです。オスの後ろ足の蹴爪にあるらしいのですが、イヌ程度の大きさの動物だと簡単に殺せるほどの強さだそうです。人間が死んだ例はないそうですが、刺されると痛みが全身に広がり、場合によっては数か月も続くといいます。
いずれにしろ非常に不思議な生き物です。
ところでこんなカモノハシのトリビア、知っていたところで何の役に立つのか――と、そんなことを言ったら左手の法則のフレミング先生が怒ります。彼はこんなふうに言ったのです。
「何の役に立つのかと問い始めたら、科学は進歩しない!」