「イジメは絶対に許さないという毅然とした態度が必要」という言い方があります。理念・態度としては分かります。しかし“絶対に許さない”と言ったにも関わらず、子どもがイジメをしてしまったらどうしたらいいのでしょう。
それが20年以上前なら簡単です。「絶対に許さない」はイコール「ぶん殴るぞ」「ボコボコにするぞ」「全員の前でさらし者にするぞ」といったところでしょう。ところが体罰も精神罰もなくなった今日、「絶対許さない」というのはどういうことなのか。
私はそれで、以前、会う先生ごとに「先生のクラスで先生が『絶対に許さない』と言ったことを子どもがやってしまったとき、その子は先生からどんな目に会うのですか」と聞いて回ったことがあります。
「ものすごく怒鳴られる・・・かな?」と、そんなふうに応えてくださる方もおられますが、たいていは困ったような顔をされて、「さあ・・・?」
たぶん「絶対に許さない」と言ったことがないか、指示を乗り越えられたことがないのでしょう(おそらく後者です)。しかし私はしょっちゅう乗り越えられてしまうような教師でしたので、そんなふうに聞いて回らないと気が済まなかったのです。
私は一部の先生たちが一種の超能力者であることを知っています。
ある先生はその超能力によって「恐怖のオーラ」と言っていいようなもの自由に発散します。なんと言っていいのか分からないのですがとにかく怖いのです。怒鳴るわけでも喚くわけでもなく、怒るとむしろ物静かで必要以上に丁寧な言葉遣いになるのですがそれがものすごく怖い。そばにいる私ですら怖いのですから子どもにとってはひとしおでしょう。
別の先生は私の言う「見捨てるわよサイン」を的確に出します。これは一種の眼力で、やや薄く開いて流し目に見る、その目つきから発する不可視の光線です。「恐怖のオーラ」と違うのはメッセージがはっきりしていて、目が「見捨てるわよ」と言っているのです(よく考えれば担任に見捨てられたって生きていく上では大した問題ではないのに、「見捨てられたらこの世の終わり」という決定的な気持ちにさせられるところがすごい)。
しかしいずれも私には真似のできない魔法です。
結局たどり着いた「私の『絶対に許さない』」は、
- それをやったら休み時間が際限なくなくなる(事情聴取のため)
- 事情聴取が終わったら、自分のやったことと指導を受けた内容を即日自分の口から親に伝える。
- 報告内容をその日のうちに保護者から私に電話してもらう。
- 以上のことはすべて機械的に行われる(ゼロ・トレランス)
これだと私の性分に合っていてなかなかうまく行きました。
「これをやったら絶対に許さない」と言ってそれをされた場合、これをやったらこういう罰を与えると約束してしょっちゅう守れず罰が天文学的に加算されそうになった時、あるいはこれができたらこういうご褒美を上げると約束していつまでも達成できなかった場合、それらの後処理をするかは、何かの取り決めをする前に考えておかなければならないことです。