カイト・カフェ

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「今日7月5日の『明日(6日)は何の日?』」~明日はサラダ記念日、ビートルズの始まりとオウム最期の日

 明日はサラダ記念日、
 そしてビートルズのジョンとポールが出会った日でもある。
 さらに言えば麻原彰晃たち7名の死刑が執行された日だが、
 今もなおカルトとの戦い方は分かっていない
という話。(写真:フォトAC)

【7月5日の「明日(6日)は何の日?」】

 昨日はアメリカ独立記念日だというお話をしましたが、明日7月6日はサラダ記念日です。
――とは言ってもみんなでサラダを食べようとか、サラダに感謝しようとかいった日ではなく、歌人俵万智さんが1987年に出版した歌集『サラダ記念日』(河出書房新社)の中の一首で、本の題名にも引用した、
 この味がいいねと君が言ったから 七月六日はサラダ記念日
からきた言葉です。
 俵さんの、5・7・5・7・7の枠にきちんと収めた口語で歌われる現代的な短歌は、その柔和な表現もあって一大短歌ブームを引き起こし、「サラダ記念日」は歌集としては極めて異例の280万部を売りつくしました。
 この時、俵万智さんは弱冠25歳。
 万智ちゃんを先生と呼ぶ子らがいて神奈川県立橋本高校
の一首があるように、当時は橋本高校の教諭で、まだ現職の教員だった私も大いに励まされたものです。

 この7月6日がビートルズジョン・レノンポール・マッカートニーが初めて出会った日(1957年)だという豆知識は、昨年仕入れたものです。その一カ月ほど前の6月12日のNHK「映像の世紀 バタフライエフェクト~ビートルズの革命 赤の時代 『のっぽのサリー』が起こした奇跡」にその話が出ていたのです。私が見たのと同じ番組を俵さんも見ていたらしく、その日の「X」に「勝手にときめいた」と投稿していたという話、それも昨年、このブログに書きました。

 今日はこの記事を書くに当たって、昨年と全く同じでは仕方がない、7月6日関わる新ネタは何かないのかと調べ始めたら、ある意味でとんでもなく重要な日だということがわかったのです。俵さんがジョンとポールの出会いに「ときめいた」のも、もしかしたらこの日の暗いイメージを引きはがすような明るい話題だったからなのかもしれません。2018年7月6日はオウム真理教麻原彰晃以下7名の死刑が執行された日だったのです。

【オウムは歴史にどう足跡を刻むか】

 70年も生きていると人生のあちこちで社会的重大事件と遭遇します。
 60年安保闘争ケネディ大統領暗殺事件も、第一回東京オリンピックも高度経済成長も、みんなリアルタイムで知っています。1966年春のわずか一カ月間に日本国内で3機の旅客機が相次いで墜落して320名以上が亡くなったとか、1982年の羽田沖では日本航空の機長が旅客機をわざと落としてしまったとか、第一次オイルショックでトイレットペーパーがなくなったとか、今となれば「マジ?」と聞きたくなるような事件・事故も、実際に見たり経験したりしてきたことです。
 
 しかしそれらはみな歴史的に同じ重みをもつのかというとまったくそういうことはなく、自ずと軽重が計られます。そのとき何を指標にしたらいいのかというと、私はひとつに「高校の日本史の教科書に載るかどうか」ということがあると思うのです。さすがに小中学校の教科書だとフィルターの目が粗すぎて、私の生きた時代全部を使っても、高度経済成長とオイルショック東日本大震災くらいしか残りませんが、「高校の日本史の教科書」だったら程よく事項が分類できると考えられます。しかしそれでもオウム真理教に関する諸々は、松本サリン事件も地下鉄サリンも載って来ないはずです*1
 なぜなら高度経済成長やオイルショック東日本大震災あるいは新型コロナパンデミックのように《その前後で私たち日本人の生活がガラッと変わってしまった》というようなことがなかったからです。
 オウムの信者に取り込まれて人生がまったく異なったものになった人もいれば、サリン事件に巻き込まれて人生を狂わされた無辜の人もいますが、社会全体に与えた影響という点ではオウム事件は大したものではありません。それは首謀者たちの死刑で、一応の区切りをつけていい程度の問題です。

【カルトとの新たな戦い】

 ではオウム事件は社会全体に何も残さなかったのかというとそれも違います。私たちは何と言ってもカルト教団に対する強い警戒心を植え付けられましたし、世界には今でも終末論を強く信じる人たちがいて、ハルマゲドンの日、教組が宙に浮きながら人々を救済して回ると本気で信じて微塵も疑わない人たちがいるのだと、オウム以前は想像もしなかったのに事実として受け入れるようになります。おかげで私たちは狂信的カルトの疑いのあるものには近づかない知恵を授かり、今はそうした危険からは比較的に自由でいられる――気がつけばそう思っていられたのは、事件から十数年ほどの間だけでした。

 情報化社会の進展によって終末論や救世主といった有象無象は解消されるかと思っていたら、逆に一万人にひとりくらいしか信じない異説珍説の信者が、ネットを通して何万、数十万、あるいは何百万、何千万とつながってしまい、例えば今や一部では、ドナルド・トランプこそが現代のナザレのイエスだということになってしまっています。
 それ以外にも、病院は病気を治すところではなく病気を広めるところだと信じている人もいますし、新型コロナウィルスで死んだ人よりもワクチンで殺された人の方が多いと思い込んでいる人もいます。人間の体には、入った異物がトゲであろうと目の中ゴミであろうすべて外に押し出す自然の働きが備わっている、その意味で《食物という異物》も、体に取り込まない方がむしろ健康にいいといった珍説も出回っています。
 子どもの健やかな成長を考えると、これも私たちが今すぐにでも取り組まなくてはならない課題のひとつでしょう。ネット社会で起こる「エコーチェンバー」や「フィルターバブル」といった現象については、以前ここで書いたことがあります*2

【日本初の女性総理大臣に最も近い人】

 麻原彰晃を始めとするオウム事件の主犯たち7名の死刑執行はサラダ記念日と同じ7月6日だった――覚える必要のない知識ですが、これで頭に入ってしまったことでしょう。それが2018年だったということは覚えにくいところですが、平成30年だったと言えば覚えやすくなるはずです。平成に起こったことは平成のうちにカタをつけておこうという配慮が働いたことと思います。おかげで時の法務大臣は《戦後もっとも多くの死刑執行命令書に署名した大臣》になってしまいましたが、その人とは現外務大臣上川陽子さんです。さすが「日本初の女性総理大臣に最も近い」と噂される人です。肝の座った女性です。

*1:「1995年は阪神淡路大震災地下鉄サリン事件などの社会不安が続き・・・」みたいな扱いはあるかもしれません

*2:kite-cafe.hatenablog.com