久しぶりに中毒気質・中毒体質があふれ出て、
身体に異変が出るほどパズルにハマっていた。
しかしパズルだとあんなにできることが、
なぜ学校の勉強ではできないのだろう?
という話。(写真:フォトAC)
【突然、手足がむくむ】
靴下を脱いで見た足の、足首から先だけが妙にむくんでいました。97歳になった母がさかんに「足がむくんだ」「足がむくんだ」と言って嘆くので、「むくみ」というものがどういうものか良く知っていたのですが、自分がなるとは思いませんでした。指で押してすぐに戻るのは「むくみ」ではないと聞いたことがあったので指で押そうと思ったら、その手の指もむくんでいてビックリします。キーボードを打つ際に何度も指は見ているはずなのに、見ているよう見ていないものですね。両手とも手首から先がパンパンです。
さっそくネットで調べると心不全、腎不全、肝硬変といった恐ろしげな話が出て来るとともに、「長時間同じ姿勢を続ける」「運動不足」「塩分の摂り過ぎ」「冷え」といった深刻さの少ない原因もあります。そして後者に心当たりがありました。とにかくここしばらく、1日10時間以上はコンピュータの前に座ってほとんど動かないのです。日ごろも4~5時間は座りっぱなしなのが、ここにきて一気に5~6時間も伸びてしまいました。ネットで行うナンバープレース(数独)というパズルのせいです。
【ナンバープレース(数独)】
「ナンバープレース(数独あるいはナンプレ)」というのはタイトルの写真にあるような3×3のマス目をひとかたまりとして(これをブロックという)縦に三つ、横に三つ並べ、全体で9×9のマス目をつくって、予め数字の配置されたマス以外に1~9の数字を入れて完成させる数学パズルです。
約束事としては「各ブロック内には1~9の数字が入って重複しない。縦三つのブロックを貫く縦の列9マスにも、横三つのブロックを貫く行9マスにも、1~9の数字が入って重複しない。そうなるとよう空欄を埋める」というものです。10年以上前から、雑誌や新聞でみるようになりましたが、実際にやってみたのは先月からです。
(私がやっているナンプレサイト→)
解き方(方略)は(数えかたにもよりますが)おそらく4~5種類あって、例えば「空欄に入る可能性のある数字を、マスの中にすべて小さな数字で書き込んでみて、あとで考える」といったしらみつぶしのやり方もあれば、ドミノ倒しのように次々と数字を言い当てる道筋を発見する方法もあります。 [『同じブロック内、あるいは同じ列、あるいは行の中に、例えば「2」と「6」しか入る可能性のないマスが二つある場合、他のマスに「2」「6」が入る可能性は排除される』といった細かな法則をさまざまに与わせて先へ進む方法とか、いくつかの方略を組み合わせて行うことになります。
偶然性にも依拠することがあって、ブロックを左回りに見て行けば簡単に数字が入ったのに、右回りで始めたばかりに遠回りになった、といったことも起きます。ただし、
- 完成形はひとつしかなく、答えは必ずあります。
- 日常生活に支障のない程度の知力・体力があれば、だれでも挑戦できます。
- 辛抱強く取り組めば、必ず答えにたどり着きます。
- 多少の運に左右される面もありますが、それも許容範囲の中にあります。
ナンバープレース(数独)の特徴のひとつは、初心者から「神」と言っていい領域の人まで、自分に合った問題を探すことができる点です。新聞や雑誌でも問題の肩のところに「初級」「中級」といった表記があり、ナンプレ専門の問題集もレベル別で売っています。
さて、こうしてみると、なるほど手足がむくむほど夢中になるのはよくわかります。そして同じように集中や継続、辛抱強さを必要とする知的な問題としては学校の勉強もあるのに、あちらの方はさっぱり熱中できない、その理由も見えてくるのです。
【数学が楽しくて仕方のない時期があった】
もし私が高校生だったころにナンプレがあったとして、今ほど夢中になって取り組んだろうか? 当時の私は今よりずっと落ち着きがなく、遊ぶことにも、女の子にも、そして学校以外の勉強にも気持ちの揺れやすい人間でした。そんな私が、こんな面倒くさいパズルに取り組めたのかどうか――。
まず間違いなく今と同じようにハマっていたに違いないと、私は自信を持って言えます。それは当時、数学の問題を今のナンプレと同じような気分で解いていたからです。
- 社会科や国語と違って答えはひとつしかなく、そして必ずある。
- 高校に合格できる程度の知力体力あれば、誰でも挑戦できる。
- 辛抱強く取り組めば、必ず答えにたどり着く(はずだ)。
- 多少の運に左右され、解法に閃くかどうかの差はあるが、それも許容範囲だ。
そして当然、高校の学習ですから、楽な問題から超難問まで、いくらでもレベルをかえられます。その点でナンプレと全く同じで、私は将来、数学者になろうと思うほど熱中した時期があったのです。
しかし結局、私は数学科どころか理系の学科にも進みませんでした。大好きな数学で躓いたからです。あとから考えれば何時間もかけて超難問を一問解く数学学習など受験勉強としては最低で、成績自体が落ちて行ったのです。超難問は面白いのに普通の定期テストで点数が取れない。そうなると「数学」という教科自体が楽しくなくなる。
ここにも、パズルは楽しいのに勉強は楽しくないひとつの理由があります。
(この稿、続く)