カイト・カフェ

毎朝、苦みのあるコーヒーを・・・

「作物にはそれぞれのスタートとゴールがある」~意外と気づかない農業の当たり前①

 わが家の畑、数えたら30種もの作物をつくっていた。
 「そんなに多くて大変じゃないか」人は言うが、
 それぞれの作物にはそれぞれのスタートとゴールがある、
 それを組み合わせて行けば、なんとかなるのだ、
 という話。
(写真:SuperT) 

【今年の畑:少量しか必要ないから多種になる】

 ときどきお話ししていますが、私の自宅には1アール(正方形に直すと10m×10m)という帯に短く襷に長い畑があります。農家として収入を得るには小さすぎ、家庭菜園というには大きすぎるサイズです。若いころは仕事に子育てに畑にとけっこうな負担でしたが、退職してからは私に存在理由を与えてくれる、ありがたい存在となっています。

 今年つくっている作物は、
 長ネギ・タマネギ・ワケギ、ニンジン・ダイコン、キュウリ・ナス・ピーマン、トマト・ミニトマト、キャベツ・ブロッコリ・アスパラ、ジャガイモ(二種類)、サヤエンドウ・モロッコインゲン・落花生、イチゴ(二種類)、オクラ・モロヘイヤ、オオバ、タカノツメ、小松菜・ホウレンソウ・二十日ダイコン、ヤーコン・ズッキーニ、数えたら27種類にもなっています。他には、育てているつもりもないのに収穫できるフキ(フキノトウ)・ミョウガ・ニラ、これで30種。きちんと収穫できたためしがないのですが果樹のサクランボ・キュウイ・カキもいちおうあります。その中でヤーコンとズッキーニは今年初めて挑戦する作物です。
 
 こんなにたくさんの種類を作らなければならないのはやはり畑が広いからで、仮に5種類くらいしか作らなくてそのうちのひとつがダイコンだったりすると、一気に200本くらい取れてしまうわけです。素人づくりで形も大きさも整わないので売りに出すわけにもいきませんが、さりとて200本のダイコンは夫婦で消費するのはもちろん、親戚あちこちに配っても消費できるものではありません。実際には春秋それぞれ20本くらいずつ育てて、それも半分以上は配っています。
 この「多くの作物は一気にできてしまうからたいへん」という当たり前のことが、農業をしない人には案外見落とされがちな知識なのです。

【数量を調整しやすい作物、しにくい作物、しなくていい作物】

 ところで、ダイコンは蒔く種の量を調整すればいいし、ピーマンやキュウリは一気にできる作物ではありませんから夏じゅう収穫し続ければいい。ネギやタマネギは日持ちがとてもいいのでこれも困らない。困るのはジャガイモです。
 
 種芋は1㎏単位で買わなくてはならず(サツマイモは苗1本から買える)、普通につくると収獲期には8倍にも膨らんでしまいます。1㎏の種芋(種類にもよるが10個前後)から80個ほど、見た目で大きなミカン箱1箱分ほども収穫できるのです。私の場合は2種類つくりますからミカン箱2個分。それも夏の始まりの最も傷みやすい時期にです。
 指南書を見ると「保存は風通しのよい冷暗所で」と書いてありますが、あいにく私の家には都合のよい場所がなく、しかたないのでこれも親戚や知り合いに分けてしまいます。都会に住む娘や息子の家族にも2㎏くらいずつ――。夏だから冷蔵で送るのですが宅配便で1200円~1500円ほど。受け取る方はタダでもらうわけですから苦にならないと思いますが、こちらからすると1㎏600円~750円という高級なジャガイモを送っているようなものですから、なんとも割り切れない気持ちです。
 
 そうは言っても毎年2万円近くもかけて運営している私の畑――収入にはならず、「キュウリを買わずに済んだ」「ダイコンも買わずに済んだ」程度のちっぽけな儲かり話ですから、すべて計算すればもともと赤字になるのは必定です。そう考えると宅配の1200円だの1500円だのも今さら「ああだ」「こうだ」言っても始まらないのですが――。

 

【それぞれのスタートとゴールがある】

 こんなにもいろいろな作物をつくって大変じゃないか、と言ってくれる人がいます。しかし実態は、“いろいろつくっているからこそ楽”なのです。
 どういうことかというと、例えば広い田を持つ稲作農家の場合、田植えも稲刈りも、基本的には一日でやり切ってしまう大仕事です。大型機械のレンタルは何日にも渡って押さえることはできませんし、人も繰り返し集める訳にも行きません。どんなに田が広くても、一日でやり切るのです。
 
 ところが私の家の畑は、3月末のジャガイモに始まって、4月にはネギを植え、キャベツやブロッコリを植え、5月にダイコンのタネを蒔いて、サヤエンドウの収穫を始め、オクラとモロッコインゲンのタネを蒔き、イチゴを収穫し、そして今は落花生のタネを蒔く時期です。
 それぞれの作物にはそれぞれのスタートとゴールがあって、微妙にずれてくれるので、毎日少しずつ仕事をしていれば何とかなる。それも実際に畑仕事を始めてから分かることです。

 この「作物にはそれぞれのスタートとゴールがある」をさらに細かく見ると、もっとたくさんの不思議なことが隠されているのです。
(この、続く)