カイト・カフェ

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「男たちが男くさく、スーパーモデルたちは可愛い」~素晴 らしきネット社会の人生③

 いま夢中になっている2番目は、
 マルーン5の音楽とビクトリア・シークレットのファッションショー
 半世紀以上前の不良少年と完ぺきな姿を誇示するモデル、
 なぜか既視感のある光景なのだ。
 という話。

【ビクトリア・シークレット・ファッションショー】

 私がいま夢中になっているものの2番目は2011年のビクトリア・シークレット(通称“VS”または“ビクシー”)のファッションショーです。
 この動画に至った経緯に記憶はないのですが、何やら人に積極的に言えないやましい流れがあって、そこからたどり着いたのかもしれません。

 VSは婦人服・下着・香水、あるいは美容用品などを扱っている米国発のファッションブランドで、VSのファッションショーと言えば知る人ぞ知る超一流のショーだそうです。ミランダ・カーだのカーリー・クロスだの、私のようなジジイですら知っているスーパーモデルを専属で擁しているのですから、ただ者ではないのは確かでしょう。
 スキャンダルもあって、残念なことに2019年以降は中止になったままだそうです。ですからこの動画は、いまは見られないVSのショーという意味でも貴重なものかもしれません。

【Maroon5の“Moves Like Jagger”に70年代の匂い】

 演奏は1994年にロサンゼルスで結成されたマルーン5というバンド(当初別のバンド名)。曲は「Moves Like Jagger」(=ジャガーのように動かせ)です。この場合のジャガーは野生動物のそれではなく、ローリング・ストーンズリードボーカルミック・ジャガーのことだといいます。
 どんな内容かと歌詞を見ると、
「Take me by the tongue and I’ll know you (Uh)
舌でボクを捕まえて、そしたら君がわかるからさ。
Kiss me till you’re drunk and I’ll show you
酔っぱらうまでキスしていてよ、そしたら君に見せてあげる。
You want the moves like Jagger
キミはジャガーのように動いてもらいたいんだろう?
I’ve got them moves like Jagger
ぼくはジャガーみたいに動かすんだ
I’ve got them moves like Jagger (Uh)
ぼくはジャガーみたいに動かすんだ
といった、華やかなショーには不似合いな下品さ。

 ボーカルのアダム・レヴィーンは黒のパンツにランニングシャツ、腕や肩にはびっしりのタトゥー、あごや口まわりにはこれもびっしりの無精ひげ。まるでたった今、大型客船のボイラー室で石炭をくべて来たばかりだ、みたいな労務者風出で立ちで、大昔のマーロン・ブランドジェームズ・ディーンがそのまま歌っているような感じです。

 ギターのジェームス・ヴァレンタイン(名前は調べながら書いています)は衣装こそ少しまともですが、腰を落として小さな歩幅で歩きながら演奏するスタイルは1960年前後のチャック・ベリーみたいなもの。その姿で、日本流に言えば「矢沢の永ちゃんみたいに~」「矢沢の永ちゃんみたいに~」とやるわけですから、自ずと私たち世代とのつながりが浮かんできます。
 
 私は音楽好きですが、音楽自体のことはさっぱり分からないので何とも言えないのですが、もしかしたら「Moves Like Jagger」には曲調とか構成とか、底流に流れるものに60年代・70年代と似たものがあるのかもしれません。私が魅かれるというのはそういうことだと思っています。
 
 ついでに言えば映画「ドリーム」(原題: Hidden Figures)の挿入歌だったファレル・ウィリアムスの“Crave(クレイヴ)”にも1960年代~70年代との共通点はないのでしょうか? 何か気になっていてとても好きなのです。
Pharrell Williams - Crave (Live at TIFF) - YouTube

【スーパーモデルが可愛い】 

 はじめのところで「何やらやましい流れでこの動画にたどり着いたかもしれない」と言い訳がましい書き方をしましたが、よく考えたらそんな必要もありません。
「水着だか下着だか分からない(たぶん下着)布切れを身に着けた女性を見ながら、鼻の下を目いっぱい伸ばしているジジイ」
――そんなふうに観られたらどうしようという気持ちも、最近はさっぱり湧いてこないのです。そのくらい枯れました。

 10代~20代、いやもしかしたら30代~40代のころでも、身長1m70cmを越す極めて見目麗しい女性たちを見ると、性的興奮よりも恐怖を感じる性格でした。しかしそれすらもなくなり、私にとってスーパーモデルも一流芸能人も、子や孫や元教え子と変わらぬものです。ひとことで言えば「かわいい」。
 ランウェイの先端まで来てポーズをとり、ウインクをしたり生意気そうに口を尖らせたり、それも子どもっぽい仕草にしか見えません。「よくやったね」「がんばったね」と声をかけたくなります。

 美貌と高身長は親から与えられたものでも、磨いたのは自分です。厳しい競争を勝ち抜いて今や頂点に立ち――頂点に立ったということは、女優だとか実業家だとかいった別の高みを目指さない限り、下って行くしかありません。
「人生には二つの悲劇がある。一つは願いが達せられないこと。もう一つは願いが達せられること」と言ったのはバーナード・ショーでした。
 12年前のVSファッションショーの動画を見ながら、現在の彼女たちについても調べてみたいと思いました。
(この稿、続く)

(写真:フォトAC) 

《付記》
 それにしても外国語に弱く、人の名前を覚えるのはさらに苦手な私が、よくもミランダ・カーだのカーリー・クロスだのを知っていたものだと不思議に思っていたら、ミランダ・カーは映画『ロード・オブ・ザ・リング』のオーランド・ブルームの元妻、カーリー・クロスはドナルド・トランプ元大統領の愛娘イヴァンカの夫、ジャレッド・クシュナーの弟と結婚していました。そう言えばイヴァンカ・トランプも元モデルです。
 いずれも大した人たちと婚姻関係を結んでいます。でもだからといって幸せだとは限りません。