カイト・カフェ

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「10月になりました。衣替えです」~昔の女の子はスラックスなんて大嫌いだった  

10月のウンチクを少々。そして冬の制服について考える。
間もなく寒い冬が来る。その寒さに対して、
昔の女子中高生はスラックスなんて大嫌いだったけど、
今の子どもたちはどこまで合理的に対処できるのだろう?
という話。(写真:フォトAC)

【10月になりました】

 10月になりました。
 月初めにはその月にまつわるウンチク話を書くことが多いのですが、10月はこれといった話題もなく、広げて語る行事もあまりありません、
 
 ただ英語の月名Octoberは「8番目の(月)」という意味で、なぜ10月が「8番目」なのかというと、古代ローマ暦はMarch(弥生)を起点としているために今月が8番目にあたるというわけです。
 Octは「8」を表す接頭辞。「8度音階」をオクーターブ、「八角形」はオクタゴン、「(足が8本ある)タコ」はオクトパス、「八人組」や「八重奏」はオクテット、「8倍、8重」はオクタプルというのだそうです。
 
 日本では旧暦10月を「神無月(かんなづき)」と言います。これは日本中の神様が島根県出雲大社に集まって人間の幸福について神議を行うためで、神の集まる出雲地方でのみ「神在月(かみありづき)」、他は「神無月」となっているのです。
 女の子で「カンナ」という名の子がいたら、まず間違いなく10月生まれの子で、大工さんの子というわけではありません。もっとも植物のカンナの開花は夏から秋にかけてだそうですから、この花を由来とする「カンナ」ちゃんには10月以外の生まれの子もいるかもしれません。

【衣替えへの関心】

 10月といえば衣替えです。
 寒冷地では今日から制服替えと決まっているところもありますが、そうでない地域では今月いっぱいかけて冬服に順次代えていくというところが多いようです。
 
 衣替えに関して私がとても関心を持っているのは、この春に各地の学校で導入されたジェンダーレス制服と呼ばれるものについてです。単に女子用のズボンが追加されただけの学校もありましたが、LGBTQへの配慮ということでずいぶん多くの学校で導入されたようです。それがこの秋どうなっていくのか――。
 
 きっかけは一昨年あたりから「男子はズボン、女子はスカート」といった服装のきまりがジェンダー平等に反するとの指摘があり、女子にスカートの着用しか許さない学校の態度を非難する声が日増しに高まってきたことです。そこで先進的な一部の学校が女子用のスラックスを用意して、どちらを選択してもかまわないという形にするようになってきたのです。もちろん男子がスカートを選択する可能性も示しました。
 ただ私は、男子のスカートや女子のスラックスが、それほど広がるとは思えないのです。

 

【伝説の埴輪ルック

 男子のスカートについてはカミングアウトを必要とする場合が多そうなので難しいのは当然ですが、女子のスラックスも、防寒用と考えてもどこまで普及するのか。
――というのはもう30年も前のことですが、当時私が勤めていた中学校で、女子にスラックスを履かせようとしてサッパリうまく行かなかった経験があるからです。
 
 そのころの冬は今よりもずっと寒かったのかもしれませんが、制服のスカートの下にジャージを履くという奇天烈な服装(通称「埴輪ルック」)が、主として自転車通学の女子高校生から流行り始めて中学校へと下りつつあったのです。これは今までの服装違反とはだいぶ様相が違いました。
 第一に全くの想定外ですから当然、校則にない。
 第二に防寒・健康管理という点ではむしろ子どもたちに理がある。
 三番目に、しかしそれにしても通例の美的感覚からずれすぎている。
 ひとことで言えば、
 「だったらスラックスを履けばいいじゃないか」
ということなのです。これに関してはむしろ保護者の方からの要望が強く、「あれだけは勘弁してくれ」とのことでした。

 服装マナーに関することなので禁止も校則も馴染みません。そこで指導ということになるのですが、始めてみると意外な反応が次々と出てきたのです。

【昔の女子中学生はスラックスなんて大嫌いだった】

 「一人だけスラックというのはイヤ」は想定内でしたが、「お尻の大きなのが目立つからイヤ」「足が太い(短い)のがバレるからイヤ」は男性教師には想像もつかないことです。さらに「パンツの線が見えるのがイヤ」などといった話が出てくると、スラックスにしろと言うこと自体がセクハラめいてきますからとてもではありませんが続けられない。
 そこで「校内ではスカートまたはジャージ」ということで両者手打ちとなったのです(実際にはほとんどの子がスカートで過ごした)。
 
 それから30年余り。
 学校の制服は男子の学生服、女子の標準服・セーラー服からブランド制服へ、そして各校独自の指定服へと変わってきました。昔の標準服なら女子のスラックスも簡単に手に入ったのですが独自の制服となると需要が少なく、採算のとれない女子用のスラックスは最初から用意されませんでした。
 そこを現在は衝かれる――。
 「学校は女子にスカートを強制し、ズボンという選択肢を示さない」
 「LGBTQへの理解が進んでいない」
 
 この春にジェンダーレス制服を採用した学校で、スカートとスラックスの両方を購入した女子生徒はいたみたいですが、スラックスだけの選択をした生徒は少なかったようです。
 さて日増しに寒くなっていくこの時期、ジェンダーレス制服はどこまで広がっていくのか、注意深く見て行きたいと思います。
*セクハラの誹りを怖れずに言えば、寒冷地の場合、10月以降は全員ズボンかスラックスというきまりにしてしまえばいいと私は思っています。しかしそんな強制の通る時代ではないことも、十分承知しています。