カイト・カフェ

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「野球を選ばなかった大谷翔平は無名に終わっていたのか」~才能と努力について② 

 どんなに非難されても土俵上の白鵬は勝とうとすることをやめられなかった。
 ボクサーの具志堅用高は状況を考える間もなく腕が動く。
 大谷翔平はほぼ思った通りに体を制御でき、
 梅沢冨美男は自由に言葉をコントロールする。

という話。

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(写真:フォトAC)
 
 

【野球を選ばなかった大谷翔平は無名に終わっていたのか】

 横綱白鵬が引退しました。
インタビューでは批判された“横綱らしくない取り口”について、
「土俵に上がると勝たないといけない自分が抑えられない。どうしたらいいのかわからない」
と語ったそうです。さもありなんと思います。

 昔、具志堅用高が現役時代、スポーツ記者が戯れに、
「軽くスパーリングをさせてください」
と願い出たらジムの関係者に、
「オマエ、死ぬ気か?」
と言われたそうです。現役時代の具志堅用高は、目の前にグローブが突き出されると反射的に全力で打ち返してしまう、そういうものだそうです。これもよくわかります。

 昨日はエンジェルスの大谷選手が最後のホームランを打ち、投手として9勝、バッターとして打率.257、ホームラン46本、100打点で今シーズンを終えました。期待されたホームラン王も「二けた勝利、二けたホームラン」も達成できませんでしたが偉大な記録です。今年期待された記録も、特に後者などは来年にも達成できてしまうでしょう。

 ところで大谷選手が幼少期、何らかの理由で野球を選ばず、他の競技を選んだとしまったらスポーツ選手として無名のまま終わってしまっていたでしょうか? Ifの話ですが、よほど間違った選択をしない限り、何かの種目で名を上げていたに違いありません。
 大関だった初代貴乃花は貧乏のために相撲取りになりましたが、そうでなければ水泳でオリンピック選手になっていたと言われています。
 
 

【梅沢冨美男はいかにして俳人となりしか】

 「プレバト!!」の俳句の部門ではタレントの梅沢富美男が大御所として君臨しています。タレントと書いたのは、今の若い人にとって“テレビの中で偉そうにしている嫌なジジイ”くらいの印象しかないかもしれないからで、超一流の芸能人であることは百も承知です。
 10代で梅沢劇団の花形の女形、「下町の玉三郎」として人気を博した俳優兼舞踊家で、32歳の時には小椋佳の『夢芝居』を大ヒットさせ、翌年の紅白歌合戦にも出場しました。その、一花も二花も咲かせた人が、60歳を過ぎてから俳句を始め、今や高校の副教材に載るまでなったのです。まさに「一芸に秀でたる者は、多芸にも通じる」です。
 ちなみに私はNHKの「日曜俳句」も見ているのですが「プレバト!!」の方がはるかにレベルが高く、しばしばよくわかりません。その頂点に梅沢は立っているのです。
(ただし梅沢冨美男、ニュース・コメンテータとしては大したことは言いませんので、その才能は芸能や文芸の分野に限られているのかもしれません)

 何故そんなことができたのか。
 ひとつ言えることは梅沢が幼少のころから、日本舞踊という古典芸能の修行を積んできたことです。日本的美意識という点は相通じるものがあるかもしれません。
 第二に、有無を言わさぬ師弟関係の中で技能を磨く「修行」という学習形式に、慣れていたというのも強みかもしれません。
 さらに、若いころから一流芸能人としての扱いを受けてきましたから、その交友においても一流の人々との関係が深く、感化されやすい環境にあったということもあるでしょう。
 しかし何といっても「才能があった」と一言で済ませる方が、よほど説得力があります。
 では、そういった人たちの「才能」の中身とは何なのでしょうか?

(この稿、続く)