3羽もいる飼いウサギの中で一番年上の「カフェ」が、突然トイレを定位置から移動して、空いた空間で小用をするようになりました。
【カフェの反逆】
カフェはもともと娘のシーナが買い求めたネザーランド・ドワーフのオスで、赤ん坊のころ、トイレのプラスチック部分をかじり取ってしまうのを心配したシーナが、以後トイレの使用をやめてしまったのです。その結果ゲージ内の好きなところで排泄するようになり、匂いのしない便の方は所かまわず、匂いの強い「小」は(やはり匂いの強いものをまき散らすのは、居所を辿られるという意味で野生に反したのでしょう)ゲージの左奥でするようになってしまったのです。
娘が転居のために飼うことができなくなって私が預かるようになってからは、ちゃんとトイレを入れ、カフェもそこで小用をするようになったのですが、寿命も近い7歳になってボケでも始まったのかあるいは赤ちゃん帰りしたのか、トイレを退け、昔やっていた同じ場所で直接スノコに排泄し始めたのです。掃除のほんとうにしにくい位置です。
そこで苛立った私は洗濯用のピンチを駆使して、ウサギの力では動かせないようトイレをケージに固定してしまったのです。そうしたらカフェは小便をするのをやめてしまった・・・。
明らかに食欲も落ちて、というかほとんど食べなくなって、元気もなくなってしまいました。
私は最初それがトイレのせいだとは気づかずただ心配していたのですが、掃除のときトイレを外に出したら空いた場所にすかさず移動して、人間でもこれほど出さないだろうと思うくらいジャージャーと流し続けたのです。ちょっと驚きました。
【ウサギは自ら死を選ぶ】
それとは別の話ですが、カフェとともに飼っている別の2羽のうちのメスの方、「ココア」が11月の末に大病をして、その件については何回かに分けてここに書きました。
結局原因不明のまま治ってしまい、今は元気に過ごしているのですが、一時期「子宮がん」かもしれないと言われ全摘の話も出ていたのです。そのとき獣医さんに、
「手術中の事故ということもあります。ウサギは麻酔を嗅がされると自分で息を止めて窒息死してしまうことがあるのです」
とか言われ、息を止めて窒息死というのが何とも想像しがたく、困った記憶があります。
そのこともあってネットで調べていたら、息を止めて窒息死どころか、ウサギは自ら心臓を止めて死ぬことができるといった記述があり、さらに驚かされます。
説明によると、
「弱い生き物のであるウサギはたびたび猛獣によって食い殺され、その結果、死の苦しみを1秒でも短くするために、自ら心臓を止めることができるようになった」
とありました。
しかし誰よりも早く死ねるというのは、生きる力の強いものが生き残る「適者生存」の原理に反します。ここはやはり「死ぬ力がある」というよりは、「神経質でおそろしく弱い」という方がしっくりきます。
ウサギは、寂しさでは死なないとも思いますが、ちょっとした刺激で簡単に死んでしまう動物なのです。
――とそんなふうに書いて、しかしやはりそれも「適者生存」の原理に反するなと、今、思いなおしました。
そんな弱い生き物が、なぜこの地球上に生き残れたのか。
【ダーウィン先生! これをどう説明します?】
そう言えばウサギに限らず、世の中にはなぜこんなものが生き残っていたのか不思議になるような動物がいくらでもいます。
たとえばパンダ。
あんなに大きい癖に酷い偏食で竹ばかり食べている、やたら目立つあんなガラ模様でよく猛獣に根絶やしにされなかったものだ、さらにその赤ん坊となると親とは似ても似つかない小さな未熟児で、実際最初の一か月をどう乗り切ったらよいのか途方に暮れるほどの弱々しさです。
あんな弱い生き物の生存を、ダーウィン先生はどう説明するのでしょう。
――とそんなふうに書いて(アレ? さっきも似たような文を書いたな?)、思えばサバナに裸で投げ出されたら絶対に1日ともたない人間こそ、「適者生存」を欺く最大の例ではないかと、そんなふうに思うのです。